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お母さんはなんでいつも自分を後回しにするんだろう。

【隔週木曜日更新】連載「母への詫び状」第十七回

■自分のことは後回しにして、家族を優先していた母

 保温炊飯器や電子レンジの普及は、おかあさんが冷たい残りご飯を食べなくても良くなったというだけで、毎朝の食卓に多大な変化と小さな温もりをもたらした。調べてみたら、日本初の保温炊飯器の発売は1972年だという。

 自分のことは後回しにして、家族のことを優先する。

 母が病気になったときも、そうだった。母は自分の具合が悪いことを自覚していたはずなのに、認知症の父の世話を優先して、病院へ行くのが遅れた。

 始まりは、昼間にかかってきた一本の電話だった。ぼくがまだ東京にいた頃だ。

 

「忙しいときに悪いねえ。ちょっと相談したいことがあるんだけど、いいかね……」

 普段、母から電話があるのはいつも夜だったから、おそらく、いい話ではないのだろうと察知した。

「おとうちゃんの調子が良くなくてね。この前も飲み会の後、自分の家がわからなくなって、大騒ぎになってしまって……」

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夕暮 二郎

ゆうぐれ じろう

昭和37年生まれ。花火で有名な新潟県長岡市に育つ。フリーの編集者兼ライターとして活動し、両親の病気を受けて帰郷。6年間の介護生活を経験する。



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