「ライン」の高さでサッカーの良し悪しを判断してはいないか。 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

「ライン」の高さでサッカーの良し悪しを判断してはいないか。

ピッチ外から見るサッカーの落とし穴

ユベントスのラインは高いのか、低いのか

 ここで言いたいのは、常に、ラインの高さにもメリットとデメリットがあるということ。それも選手たちが責任をもって判断をしていくものだということ。そしてサッカーとは常に判断のスポーツだということです。
 ですから、これは僕の感覚ですが、「~のチームのラインは高い」と、チームのラインの高さを一概に言い切ることに違和感があるのです。

 選手にあるのは、「いつラインを下げるか」と「いつラインを上げるか」、そして「どのくらい上げるか」を状況によって判断していくことであり、「チームとしてラインを高くしてます」とか「低くしてます」というのはありえないことです。
 つまり、これも言葉が一人歩きしているのですが、選手に求められるのは常に、勝つため(守るため)に最善の判断をすることであり、決して「ラインを高くするため」にプレーすることではないのです。

 例えば、今年のチャンピオンズリーグを盛り上げたユベントスの守備です。
 ユベントスは相手がゴールキーパーやディフェンスラインでボールを回そうとすると猛然とプレスをかけ、ディフェンスラインはハーフウェーラインさえも超えていきます。しかし、そこをうまく外され、中盤で前を向かれるような状況ではラインを落とし、必要なら6人もの選手をディフェンスラインに並べて守備をしています。

 このユベントスのラインは高いのでしょうか、低いのでしょうか。
 僕は、彼らにあるのは、常に判断の連続だけのように見えます。ラインが高いとか低いとか、そういうことではなく、「いつ、何をすべきか」を個人個人が的確に判断し続けているだけなのではないかと。そしてそれを淀みなく、連続してやり続けているから、隙がなく、美しい連携が見られるのではないかと。
 僕はイタリアの守備を参考にすることがよくあり、これまでの所属チームで時にはラインを思い切り深く構えることをしていました。そして、相手が前にボールを出せない時には逆に、思い切りラインを高くしたりしました。

次のページサッカーは判断のスポーツである

KEYWORDS:

オススメ記事

岩政 大樹

いわまさ だいき

東京ユナイテッドFC

サッカー選手

1982年1月30日生まれ、35歳。187cm/85kg。ポジションはセンターバック。

山口県出身。周東FC、大島JSCを経て岩国高校サッカー部でプレー。東京学芸大学在学中に注目を集め、2004年鹿島アントラーズに加入。

2007年~2009年鹿島アントラーズのJリーグ3連覇に貢献。自身も3年連続Jリーグベストイレブンに選出される。

2013年鹿島アントラーズを退団。2014年にはタイプレミアリーグのテロサーサナでプレー、翌年ファジアーノ岡山に加入。

強さとクレバーさを兼ね備えたプレーでディフェンスラインのリーダーとして活躍する。2017年シーズンより関東サッカーリーグ1部の東京ユナイテッドFCに加入(コーチ兼任)。東京大学サッカー部コーチも兼任。

2016年シーズン終了現在で、J1通算290試合出場35得点、J2通算82試合で10得点。日本代表国際Aマッチ8試合出場。

2017年9月初の著書『PITCH LEVEL 例えば攻撃がうまくいかないとき改善する方法』を上梓。


この著者の記事一覧