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フランス人がお洒落になった本当の理由

パリの人たちが土地よりも大切にしたものとは…

■フランス人がおしゃれになった理由

 ちなみに、動産に財産としての価値を置くがゆえに、フランスでは、家具や調度品ばかりか、衣服や靴や帽子、装飾品も動産として換金性の高い商品となりました。衣服には既製服がなかったので古着市場のような再流通システムが完備されていました。そこから、衣服や靴や帽子や装飾品の品質・デザインが向上したとも考えられます。フランス人がおしゃれになったのも、動産を平等分割するという平等主義核家族の原理が存在していたためといえないこともないのです。

 ところで、このような平等相続が行なわれた後は、いや相続が行なわれる前から、フランスの農民の子供は、親と同じように小作農民になるのも、別の仕事に雇われるのも「自由」でした。そうして、生計を立て、家庭を持ち、核家族を再生産していきます。親とのつながりは弱く、成人した子が親と同居することはありません。こうした「自由」さは、イングランドの核家族と同様で、教育という再投資には不向きでしたが、遺産相続の「平等」がフランス特有の平等主義原理を生み出すことになります。「自由」と「平等」の精神は、一八世紀後半に至って、フランス革命として開花します。「平等主義核家族」の原理が歴史を動かした最も大きな出来事といえます。

 しかし、フランスは、平等主義核家族だけで構成されているわけではありません。パリ盆地を中心に、たしかに平等主義核家族の地域は大きいですが、直系家族地域(南西フランス、ドイツ国境近辺のアルザス・ロレーヌ地方など)、共同体家族地域(中央山塊地域)、絶対核家族地域(ブルターニュ地方。

 ただし『家族システムの起源』では「追加的な一時的同居を伴う直系家族」に変遷)と、フランスは四つの家族形態をすべてかかえるヨーロッパではまれな国です。それゆえに、フランスは、複雑な政治体制をとらざるを得ないという歴史を持っているのです。

(『エマニュエル•トッドで紐解く世界史の深層』より構成)

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鹿島 茂

かしま しげる

鹿島 茂(かしま•しげる)



1949年生。仏文学者。明治大学教授。専門は19世紀フランス文学。『職業別パリ風俗』で読売文学賞評論・伝記賞を受賞するなど数多くの受賞歴がある。膨大な古書コレクションを有し、東京都港区に書斎スタジオ「NOEMAimagesSTUDIO」を開設。新刊に『神田神保町書肆街考』(筑摩書房)、『太陽王ルイ14世ヴェルサイユの発明者』(KADOKAWA)がある。Twitter アカウント:@_kashimashigeru


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