2025年参院選、いかがわしい政治屋が跋扈する現代日本の混乱を夏目漱石は予言していた(後編)【近田春夫×適菜収】
【近田春夫×適菜収】新連載「言葉とハサミは使いよう」第7回
■〝遵法闘争〟か〝脱法政治〟か
近田:N党や斎藤元彦や、参政党や、そういった人達に学んだのだけれど、彼らは法律を犯さなければ何でもオッケーというスタンスですよね? それって〝遵法闘争〟とも言えるし、〝脱法政治〟ともいえる。だったらどの党も元アイドルじゃなくて全員候補者に現役アイドルを立ててもいいわけでしょ? ただ、その場合どの党が強いかっていったら、やっぱ学会になっちゃうんだけどさぁ(笑)。
適菜:選挙制度はすごく大事で、難しい問題ですね。簡単に変えられないのは理由がありますし。私は今、自分のメールマガジン(http://foomii.com/00171)で夏目漱石について書いているのですが、漱石の「現代日本の開化」という講演を思い出します。西欧の開化は内発的なものだったが、日本の開化は外発的なものだった。日本人は海外のイデオロギーを神棚にかざり、本質も理解しないまま飛びついた。だから、近代を批判的に検討する態度としての保守主義も日本には成立しなかった。日本に保守主義者っていないですよね。近代を理解しないから、近代の病としての全体主義も、近代の原理としてのナショナリズムも理解できない。それで政治もおかしくなった。漱石は、この先、日本は流されていくだけだと言いましたが、見事に予言は的中しましたね。
近田:日本人は白人に対するフィジカルな劣等感があるよね。
適菜:その劣等感があるので逆に「日本スゴイ」みたいなことを言いだす連中がいます。漱石が批判したのもあの手の連中です。漱石はイギリスの悪口を言ったり、エドマンド・バークについては「あんなものはよくわからん」と切り捨てていますが、言っていることは保守主義の根幹に迫っています。
近田:漱石が書くものってものすごく平易だよね。難解じゃないっていうか。あれも考えようによっては〝上から目線〟なのかも?
適菜:実際、「上」だったのでしょうがないと思います。「下から目線」で大衆に媚びるのも気持ち悪いですし。それでも平易な言葉で本質をつかんだと思います。
近田:漱石の作品だけ好きな人って、漱石がものすごいインテリだとか、あんまり知らない気するのよ。森鷗外ならちょっと読むだけでもこの人インテリ!って誰でも気づくじゃん。
適菜:漱石は世間から距離を置いた人間みたいなイメージが強いですが、意外と社交的なんですよ。それとおひとよし。まあ、漱石の作風からして、自分のことを戯画化して描いている部分はあるとは思いますが。
近田:うん。
適菜:漱石の読者が、自分が書いた小説を持ってきたり、変な要求をしてきたりしても、律儀に会ったりしているんですよね。私は見ず知らずの人と会うのは絶対嫌ですが。
近田:俺も苦手なんだけどさ、この仕事してると、まぁそこはだんだん慣れてきました。
適菜:私はなかなか慣れないと思います。
文:近田春夫×適菜収