バーチャルリアリティのある未来

 ここまではバーチャルリアリティに関する技術の現在までの話をした。

 そして、これからバーチャルリアリティ技術が発展していった先に何があるのかという問いに対して、私は仮想現実が現実の代替として機能するようになるのでは、ということを考えている。それでは最後にバーチャルリアリティが発展していった未来に何があるのか、私の想像、そうなってほしいなという願いを語りたい。

 ここで想定しているのは、『ソードアートオンライン(*5)』というライトノベルおよびアニメ作品に登場する「ナーヴギア(*6)」のようなデバイスにより仮想世界での自身のアバターの動きを脳の信号から完全に制御できるというものである。つまり、現実世界で動作するときと同様の感覚でありながら、現実の体を動かさないままに仮想世界での自由な動作を実現するものである。

 大枠としては、まずは仮想世界が現実の社会基盤の代替として機能するようになると考えている。

 まず、様々な障害を乗り越えて自由なコミュニケーションができるようになるだろう。

「自由な」とは、生まれ持った能力や容姿、障害などから開放されるということを自由と言っている。

 アバターを介することで、自分ではどうしようもできなかった問題を少しは解決できる。容姿や運動能力などがその1つ。容姿や運動能力などコンプレックスを持つ人はおそらく多いと思うが、そういった場合もアバターに代替することでそれを解消できる。

 それに身体障害などで自由に体が動かせない人でも脳の信号から自分のアバターを動かすことができれば、障害を気にすることなくコミュニケーション、生活ができるようになるだろう。

 コミュニケーションは意思伝達という和訳が当てはめられる通り、意思が伝達できればよいわけで、アバターを介したとしてもその本質は変わらない。逆にアバターを介することによって負の部分が取り払われるのではないかという可能性を感じている。

 またプログラムで、現実ではできなかったことが低コストで可能になるとも思う。

 例えば現実で東京から大阪までの遠距離移動をするということになった時、新幹線や飛行機など多くの交通手段がある。これが仮想世界ならば自分の位置情報を少し書き換えるだけでいいという手軽さがある。

 他にはあの服を着たいと思ったら自分の服の画像(テクスチャ)情報を少し書き換えるだけでいい。

 この一連の流れには、新幹線や飛行機の燃料や服の素材輸送コストなどが一切無いので、まぁかかっても電気代くらいの低コストで全てを実現している。

 昨今の環境破壊には工業的な問題が大きいため、地球を護るという点でも大きく活躍するのではないか。

 仮想現実が社会基盤として現実と取って代わるとすれば、もちろん現実世界が変化する。

 現実にはそういった仮想世界のインフラ系を維持するエンジニア、バーチャルリアリティ世界に生きる人間の肉体を維持する施設で働く医者や看護師、ほか政治家など一部の人間しか存在しなくなるのではと思っている。

 また経済基盤もそれにともなって変わっていくだろう。

 物については先ほど述べたように仮想世界で構築できるため、現在の現実のように実際に物がある必要がない。

 そのため経済事情も変化して仮想世界にそれが移行するのではないかと思っている。

 例えば仮想世界でかっこいい服のテクスチャを生みだすことのできるデザイナーがいたらその人はそれを生かして商売を始めることができるだろう。そして今度はそういった人達をまとめる人が現れ会社のようなものができて――。そんな流れが起こるかもしれない。

 私の技術発展の先に見えるものとしてはこのようなところである。

 最後に。現在、OculusRiftを皮切りに始まったバーチャルリアリティ技術革命に対して、それを追うようにSonyもMorpheusというバーチャルリアリティに特化したHMDを発表している。こうした流れの中で、バーチャルリアリティ技術というのは現状でも商業としても実用化され始めているし、そしてそれが凄い速さで発展していることを一開発者として肌で感じている。そしてこれからも発展は止まらないだろう。

 幼少期に思い描いていた"未来"というものは形をもって本当にすぐそこに来ているのである。

*5……川原礫氏による日本のライトノベル、およびオンライン小説。仮想世界が実現した2022年、ゲームの世界に閉じ込められた人々の戦いを描いた「アインクラッド」編にはじまる、近未来SFファンタジー作品。

*6……『ソードアート・オンライン』の中で登場するマシン。これを頭に装着することで、VRMMORPG(仮想大規模オンラインロールプレイングゲーム)の世界へと入り込むことができる。

 

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