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教師は「神」ではない

新年度シーズン必見! 混迷する教育現場の原因を探る 3/5

教育は暴力である 

 日本でも子どもが学ぶべき知的内容は文部科学省の「学習指導要領」で成分化されている。子どもはその教育内容を受け取ったり、受け取らなかったりする自由はあるが、学ぶべき知的内容が厳然とあることを否定することはできない(法的にも能力的にもできない)。社会の主流の文化を受け容れなければならない。これは強制である。社会のルールを受けつけなければ罰則(暴力)がある。もちろん、勉強することはその個人の幸福や利益につながると理屈づけられており、それもあながち否定することはできないが、文化の枠組みを受け容れられなければならない強制性は否定できない。文化の枠組みにはまって個人になる。

 だから、世の中の人たちは気づいていないと思うが、多くの教師たちは勉強させることがその子の幸福につながると単純に信じて教師をやっているのではなく、どこか「知」を押しつけていることの後ろめたさを感受している。勉強することに対する子ども(生徒)たちの忌避感を感じるし、ときには「教えていること」に怯みさえ感じるものである。これがまっとうな教師の感覚である。子どもたちが望んでいないものも教えなければならない。

「子どもは教育されねばならない」「子どもには教育が必要である」「子どもは学びたがっている」などさまざまないいまわしで、子どもは「教育そのもの」を受け容れざるをえないし、「家庭」でも「地域」でもおとなをモデルとして学んでいるわけである。

 地球上のあらゆる地域で同じ文化が教えられているのではなく、文化、宗教、習俗の異なるものが普遍としてその地の子どもたちに押しつけられていることを考えれば、教育の本質には強制(暴力)が隠されていることに気づかざるをえないはずである。

 つまり、教師は人類史の持つ矛盾を担わされている。教師は「自由の尊重」と「強制的に教える」という矛盾した作業を毎日しているのである。これだけでも教師は立派に尊敬されてしかるべきだと私は思う。教師は知っている知識を教えていればいいわけではない。

                   <『尊敬されない教師』より引用>

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~プロフィール~

1941年千葉県生まれ。「プロ教師の会」名誉会長。作家。東京教育大学文学部卒業。埼玉県立川越女子高校教諭を2001年3月に定年退職。「プロ教師の会」は、80年代後半に反響を呼んだ『ザ・中学教師』シリーズ(宝島社)をはじめとして、長年にわたり教育分野で問題提起を続けている。著書に『なぜ勉強させるのか?』『間違いだらけの教育論』(以上、光文社新書)、『オレ様化する子どもたち』『「プロ教師」の流儀』(以上、中公新書ラクレ)など。


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