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本願寺教如、石田三成から差し向けられる刺客から逃げた道

鈴木輝一郎 戦国武将の史跡を巡る 第48回

岐阜在中の歴史作家・鈴木輝一郎がゆるりとめぐる、戦国武将の史跡。
つい見落としてしまいがちな渋い史跡の数々を自らの足で訪ね、
一つ一つねぶるように味わい倒すルポルタージュ・ブログシリーズ開幕!

 裏街道関ヶ原合戦・東本願寺(真宗大谷派)開祖・本願寺教如の危機一髪物語の5回め。

 慶長5年9月、関ヶ原の合戦で石田三成は大垣城入りしました。本願寺教如は徳川家康支持を明らかにして京都に向かいます。
 本願寺教如が京都にはいってしまうと、本願寺・一向宗門徒は一斉に反・石田三成となってしまします。一向門徒の武力が強大なのは、織田信長との十年におよぶ一向一揆で証明済み。石田三成としては本願寺教如の京都帰還をなんとしても阻止したい。
 で、石田三成は美濃で本願寺教如を待ち伏せ。教如は石田三成から次々と差し向けられる刺客をかいくぐり、関ヶ原の裏街道を抜けてゆく──ってのが前回までの展開。

 鉈ヶ岩屋で石田三成軍をやりすごし、近江の一向門徒からの支援部隊が到着したところで教如は近江へとむかいます。
 これ、写真ではわかりにくいんですけど、1車線で、しかもかなり急な峠道です。
 湧水があちこちから吹き出しているのと、ゲンコツぐらいの落石がそこらじゅうに転がってる。ぼくはヴィッツで越えましたが、エンジンブレーキをつかいながらでもけっこう怖い。
 冬季は雪で通行止めになります。

 それだけじゃなく、熊も出ます。
「熊出没注意」の看板が立ってます。
 はっきり言ってここは熊の生息圏なんで、熊の立場からすると「俺たちの家に勝手にはいりやがって」ってことでしょうが。

 

 ここから教如上人一行は近江板並へと抜けます。現在は米原市。七尾山と伊吹山に挟まれた谷で、県道40号線が通ってます。

 

「今回は道路ばっかりじゃねえか?」って? はい、そうです。本願寺教如が石田三成の追手の目をのがれながらおしのびで脱出するんですから、地味な道になるのはしゃあないっすね。
 ちなみに、いうまでもなく近江は石田三成の本拠地。三成はこのころ美濃・大垣城に入って徳川家康とにらみ合っていますが、その一方、教如の近江入りを知り、ただちに刺客をさしむけます。

 緊迫している表関ヶ原の一方で、地味だけどけっこうたいへんな裏関ヶ原はまだまだ続きます。──写真が本当に地味でごめんなさい。

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鈴木 輝一郎

すずき きいちろう

作家

1960年岐阜県生まれ。小説家。歴史小説『浅井長政正伝』『戦国の凰 お市の方』など著書多数。2008年には著作が50冊に達した。

日本推理作家協会・日本文藝家協会・日本冒険作家クラブ会員。


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