「がんばったら幸せになれる」と信じて努力し続けてきましたが、どうやらがんばる方向がちがったようです。

 旅に出る前、わたしは社畜だった。

 朝から深夜まで働き、寝て起きてシャワー浴びたら、また仕事。

 裁量労働制という名の、残業代の出ない定額働かせ放題システム。定額で使い放題なのは、データ通信量だけにしていただきたい。

 とはいえ、がんばっていればチャンスはもらえるし、貧乏性なうえ使う暇がないので、勝手に多少の貯金はできた。

 過労気味でも、一生懸命に働き続けることが正しい道だと信じていた。仕事で成功すれば幸せになれる教の信者だったので、それはもう必死に働いて。だって、幸せになりたいじゃない? 幸せなんて、どんなもんか知らんけど。

 小さな広告制作会社から、憧れのクリエティブエージェンシーに入れてもらえ、著名なクリエイターと働かせてもらい、賞を獲らせてもらっては、少し出世して、大きな案件を担当させてもらって。
 次の目標、またその次の目標と走り続けてきたのに、何年走っても、どんなにがんばっても、日払いの達成感はあれど、幸福感はなかった。

 成功しない努力は、まだ努力とはいえない。

 先人たちのそんな言葉に脅迫されて、さらに働いた。
 そうして数年が経ち、増える一方の仕事に埋もれていた、ある日。

 オフィスに3日連続お泊まり中だった、自分の異変に気がつく。うれしくも悲しくもないのに、涙が止まらない。視界が滲んで、エクセルが読めない、使えない。エクセルのせいかと思ったが、フォトショップでも、ワードでも、結果は同じだった。

 それから、さらに数日後。
 変なものを食べたわけでもないのに、吐き気がした。
 トイレで吐いてびっくり。便器が真っ赤。

「なんじゃこりゃぁぁああ」と、松田優作氏の名セリフが思わず口から出てしまう。わずかにボケられる余力はあれど、これはもう、いよいよマズい。ここまでやってきてたどり着いたのが、幸せどころか、吐血。ドラマか漫画でしか見たことない風景が、現実に、しかも自分に起きている。

 このとき、ようやく気がついた。

 がんばって働いたら幸せになれるとか、嘘。少なくとも、わたしにとっては。

「このまま自分の価値観が変わらなければ、いつまでたっても幸せは感じられないのでは?」という考えに至り、「だったら、もっといろんな価値観の人々に出会って、見たことのないものを見て、感じたことのない感情に身を晒してみよう」と世界一周の旅に出ることにしました。

 見たことないものを見て、したことないことをしてみよう。知らない感情で自分をいっぱいにしてみよう。まったくちがう価値観で暮らしている人々に会えば、その空気に身を晒せば、この生きづらさの原因がわかるかもしれない。

 世界のどこかに、きっと答えがあるはずだ。

 旅の初日、中国の北京で、ブログ「世界を旅するラブレター」を立ち上げました。

 最初は友人だけしか読んでいないブログだったのですが、地道に更新していったところ、次第にたくさんの読者さんが来てくださるようになり……世界一周ブログランキングでも、上位にランクインするようになりました。

 

 自分が旅して出会った『気づき』をシェアすれば、それは誰かの『気づき』になれるかもしれない。

 誰かの背中を押したり、新しいことをはじめるきっかけになれるかもれない。

 そのことを教えてくれたのは、読者のみなさんでした。

 ありがたいことに、紙の本にしてお届けできる機会をもらいましたので、ぜひ多くの方に読んでいただきたい。そして、本のなかから、それを読むあなたのなかから、『気づき』や、新しいきっかけを見つけてもらえたらと願っています。

 旅に興味がない方にも振り向いてもらえるような、旅に出たい方の背中をそっと押せるような、そして旅に出られない方とは、この本で一緒に旅ができるような、そんな本です。

 旅の内容を少しご紹介します。

 

●ギリシャのヌーディスト・アイランドで、全裸のテント暮らし。
●禁断の王国と呼ばれるムスタン王国で、本物の王子さまに謁見。
●ケニアのスラム街で、地元アーティスト集団と連日、密造酒を飲みまくり。
●ナミビアの先住民と交流するために、半裸でコスプレしたら、このあとゴミ袋に入るはめに。
●南アフリカの奇祭「アフリカバーン」で、人生に開眼。
●ペルーのアマゾンで、強力な幻覚剤アヤワスカを飲んでシャーマンの儀式に挑んでみたり。
…etc

 こんなハチャメチャな旅の話、なかなか無いぞ!

 縁あってこの本をお手にとってくださったあなたに、よき読書の旅路を贈れることを願って。