漫画家、ラジオパーソナリティとして活躍中の「竹姫」が、ちょっと不思議で、ちょっと怖い民俗学、社会学的テーマを描く『奇談倶楽部』!
 

 1905年、パリのムーランルージュ劇場で一人のエキゾチックなダンサーがデビューを飾ります。その名はマタ・ハリ。マタ・ハリとはインドネシア語で「暁の瞳」を意味し、ジャワ島出身の東洋舞踏家という触れ込みでした。

 黒髪に大きな黒い瞳を持ち、インドネシア風の衣装を纏い半裸で身をくねらせるダンスはたちまち人気を集め、新聞はこぞって評判を書き立てます。「体の周りに何か妖気のようなものを漂わせ卵型の舞台を滑り、深紅の布が物狂おしく震える体をなめまわすと観客は満たされた気持ちでいっぱいになる」など大評判でした。

 この頃ほかに、ギリシア風をモチーフにダンスを創作したイサドラ・ダンカンやバレリーナのアンナ・パブロワなど、女性ダンサーが台頭し活躍したことも彼女の人気に拍車をかけたと言って良いでしょう。けれども彼女の名を本当に有名にしたのはダンスではありませんでした。史上最大の女スパイで、フランスとドイツを手玉に取った悪女として現代までその名を残すことになったのです。