BEST TIMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ https://www.kk-bestsellers.com/ https://www.kk-bestsellers.com/wp-content/uploads/cropped-homebt.png BEST TIMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ https://www.kk-bestsellers.com/ https://www.kk-bestsellers.com/wp-content/uploads/cropped-homebt.png ja Copyright(c) 2003 - 2020 BEST TIMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ All rights reserved. Fri, 29 May 2020 17:34:00 +0900 小中高のオンライン化はコロナ危機対策ではなく「国策」 column GIGAスクール構想 Society 5.0 コロナ危機 スーパーシティ構想 ムーンショット計画 国策 完全オンライン大学 教育オンライン化 教育革命 藤森かよこ 小中学校から高校、大学まで教育界は授業のオンライン化に邁進している。コロナ禍であったから三密を避けてというのが建前ではあったが、実は政策の意図はすでにコロナ禍以前からあったらしい。しかしながら、教育界ではいまだにオンライン教育における問題が噴出している。そして教師たちの授業の準備もこれまで以上に多忙を極めているとも。 著書『馬鹿ブス貧乏で生きるしかないあなたに愛をこめて書いたので読んでください。』で世渡りの真実を説いたのが著述家・藤森かよこ氏(福山市立大学名誉教授)だが、今回も前回につづき「日本の教育界とくに【小中学校、高校編】の未来」を語る。さてこの教育に関する国の政策は(国策)はいったいどうなっていくのか? 親も子も想定しておくべきことにちがいない。

■コロナ危機以前から「国策」である小中高校のオンライン化

  5月27日朝刊の「日本経済新聞」の社説のひとつは、「学校再開後もオンライン教育を拡充せよ」である。いい社説であり、最後に「デジタル化を前提に対面授業の質をいかに高めるか。国はその支援に徹してほしい」とある。 大丈夫です。心配無用だ。オンライン教育は、さらに進行する。元に戻ることはない。なぜならば、小学校、中学校、高校のオンライン化は、コロナ危機対策ではなく、コロナ危機以前からの「国策」なのだから。 「GIGAスクール構想」というものが、2019年12月13日に閣議決定された。19日には、文部科学省内に「GIGA スクール実現推進本部」ができた。この構想は安倍首相の鶴の一声で実施された「緊急措置」だ。https://www.mext.go.jp/a_menu/other/1413144_00001.htm この構想の前に、「教育のICT(Information and Communication Technology)化に向けた環境整備5か年計画(2018~2022年度)」があった。「2020年1人1台」をめざして進めてきた地方交付税での予算措置がなされてきた。https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1402835.htm だが、この地方財政措置が目に見える効果を上げなかった。地方自治体によっては教育のICT化に向けた努力を怠っていた。それで、ICT教育後進国脱却のために打ち上げられたプロジェクトが「GIGAスクール構想」だった。 「GIGAスクール構想」のGIGAとは通信速度で使うギガビットではない。Global and Innovation Gateway for Allの略語である。「すべての人々のためにグローバルで創造性に富んだ道を用意すること」という意味になろうか。「校内LANの整備」「学習者それぞれに1台PC」「学習と校務のクラウド化」「ICTの活用」を初等教育と中等教育の現場で実践するというのが、「GIGAスクール構想」だ。 簡単に言えば、初等教育の児童と中等教育の生徒全員に一台ずつパソコンを提供し、高速大容量のネットワークを日本国内すべての学校に用意し、情報通信技術に慣れさせるという構想である。さらに教務や保健などのデータを一括管理する「統合系校務支援システム」を導入し、教員の負担を減らす構想でもある。

■補正予算2,318億円規模の「GIGAスクール構想」 

GIGAスクール構想の2019年度補正予算額は2,318億円(公立2,173億円、私立119億円、国立26億円)であった。2020年度中には、希望する全ての小・中・高等学校、特別支援学校の校内LAN整備を支援するため、整備費用の2分の1を補助する。1人1台の学習者用PCの導入は2023年度までに実現する計画だ。1人あたり最大4万5000円の補助金を支給する。 文部科学省のウエッブサイトを見ると、GIGAスクール用標準仕様の4万5000円のパソコン各種が販売会社とともに紹介されているサイトのリンクが張られている。この4万5000円の中にパソコン設定や導入後の保守や技術サポートなどの費用も入っているのだろうか? 売りっぱなしでは困るけれども、などと私は心配したりする。https://www.learning-innovation.go.jp/giga/ 「GIGAスクール構想」実現に向けて、2019年12月から教育現場の教員向けに、文部科学省や「独立行政法人教職員支援機構」などがICTを活用した授業法の要点を教える動画を発信している。 https://www.youtube.com/watch?v=K0wxp_vyRKM https://www.youtube.com/watch?v=hWjKXopxVWc   また、熊本市などの自治体やベネッセなどの教育産業なども、ICTを活用した授業実践のサンプル動画を発信している。 https://www.bing.com/videos/search?q=%e7%86%8a%e6%9c%ac%e5%b8%82ICT%e6%b4%bb%e7%94%a8%e6%8e%88%e6%a5%ad&&view=detail&mid=903694109195BA56B6B3903694109195BA56B6B3&&FORM=VRDGAR&ru=%2Fvideos%2Fsearch%3Fq%3D%25e7%2586%258a%25e6%259c%25ac%25e5%25b8%2582ICT%25e6%25b4%25bb%25e7%2594%25a8%25e6%258e%2588%25e6%25a5%25ad%26FORM%3DHDRSC3   つまり、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐために学校が休校になり、対面型授業ができなくなって、学校はオンライン化に急いで対処しなければならなくなったわけではない。教育現場でICTを活用するばかりでなく、ICTは不登校児や病気や障害で登校できない児童生徒のための遠隔授業にも利用できることはわかっていた。 ただ、地方自治体や個別の学校が、なんとしてでもICT活用を促進しなければならないという国策に関する理解が不十分であったようなのだ。

■Society 5.0時代に適合できる国民を育成すること

「GIGAスクール実現推進本部」立ち上げに際してのメッセージに、文部科学大臣の萩生田紘一(はぎうだ・こういち)は、以下のように書いている。 「Society 5.0時代に生きる子供たちにとって、PC端末は鉛筆やノートと並ぶマストアイテムです。今や、仕事でも家庭でも、社会のあらゆる場所でICTの活用が日常のものとなっています。社会を生き抜く力を育み、子供たちの可能性を広げる場所である学校が、時代に取り残され、世界からも遅れたままではいられません」と。 ここで、文部科学大臣は、初等・中等教育でのICT活用は、日本の未来Society 5.0に適応できる国民を育成するための手段だと示唆している。 Society 5.0とは何か。私が調べた限り、これは世界共通語ではなく、日本の官僚の造語であり、一種の和製英語らしい。 Society 1.0 は狩猟採集社会。Society 2.0 は農耕社会。Society 3.0 は工業社会。Society 4.0 は情報社会。Society 5.0 は、サイバー空間とフィジカル空間が融合した社会。 内閣府の説明によると、Society 5.0とは「第5期科学技術基本計画」(2016年度から2020年度)において提唱された未来社会の姿だ。 https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/index.html 内閣府のサイトは、こう説明している。 「これまでの情報社会(Society 4.0)では知識や情報が共有されず、分野横断的な連携が不十分であるという問題がありました。人が行う能力に限界があるため、あふれる情報から必要な情報を見つけて分析する作業が負担であったり、年齢や障害などによる労働や行動範囲に制約がありました。また、少子高齢化や地方の過疎化などの課題に対して様々な制約があり、十分に対応することが困難でした「Society 5.0で実現する社会は、IoT(Internet of Things)で全ての人とモノがつながり、様々な知識や情報が共有され、今までにない新たな価値を生み出すことで、これらの課題や困難を克服します。また、人工知能(AI)により、必要な情報が必要な時に提供されるようになり、ロボットや自動走行車などの技術で、少子高齢化、地方の過疎化、貧富の格差などの課題が克服されます。社会の変革(イノベーション)を通じて、これまでの閉塞感を打破し、希望の持てる社会、世代を超えて互いに尊重し合あえる社会、一人一人が快適で活躍できる社会となりますhttps://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/index.html この説明だけではピンとこない。経団連とかいろいろな団体がSociety 5.0になると、どのような生活になるのか動画をいろいろ発信している。それらを参考にして、いろいろ想像してみよう。 https://www.bing.com/videos/search?q=society5+0&&view=detail&mid=848D33FFCFF76B98D70F848D33FFCFF76B98D70F&&FORM=VRDGAR&ru=%2Fvideos%2Fsearch%3Fq%3Dsociety5%2B0%26FORM%3DHDRSC3

■Society 5.0時代の暮らしを想像する

たとえば、身体(手のひらの親指の下あたり)に埋め込んだマイクロチップにより血圧や栄養状態が測定され、そのデータがAIドクターに送信され、診断してくれる。「チーズと甘いものは控えましょう」とか「ナントカ病院へデータ送信しておきますので、検査日のネット予約をしてください」とAIドクターが言う。いちいち通院する必要はない。 病院で死んだら、病院から死亡証明データが役所に送られるので、埋葬許可書がデジタルで送られ、それは自動的に火葬場に送信され、火葬予約ができる。 孤独死の場合は、死亡証明データが体内のマイクロチップから役所に送信される。死亡証明データを受信すると、役所のAIが火葬手続きをし、ロボットが死亡者の住居に直行し、遺体を火葬場に運搬する。遺体焼却後に残された遺骨は、生前に登録しておいた墓地にロボットにより運搬され置かれるか、遺灰散布場に運搬され散布される。 ついでに、登録しておいた親類友人知人に死亡届が送信される。その送信された通知をスマホや端末でチェックした親類友人知人はSNSに投稿し、デジタルフラワーが献じられる。 残された住宅なり資産は、前もって登録しておいたように処分される。登録はすべてインターネットでできる。実印捺印など無用だ。指紋に声紋に虹彩認識や顔認識などの複数の生態認証によって、何度でも上書き更新できる。 Society 5.0 の中で生きる人間の暮らしは、このようなものらしい。実に便利である。ICTを活用できさえすれば、このような便利で快適な暮らしを満喫できるわけだ。人々はネットワークの中で生まれ育ち守られ死んでいく。 そう、確かに、このような便利なSociety 5.0で生きていくことになる現在の小学生から高校生には、その便利なシステムを使いこなす知識と技術が必要だ。それこそICTを使いこなす能力=ICT literacyだ。 ひょっとしたら、国語も算数も理科も技術家庭科もできなくても、ICT literacyさえあれば、快適に生きていけるのがSociety 5.0かもしれない。初等教育や中等教育機関において、何よりも習得すべきなのがICT literacyだからこその、「GIGAスクール構想」なのだろう。

■Society 5.0は国民のデータを集める管理監視社会でもある

5月27日朝刊の「日本経済新聞」に、「コロナ禍はプーチン政権によるIT警察国家の樹立を促した」というロシア政治研究者の筑波大教授中村逸郎の言葉が紹介されている。 新型コロナウイルス感染者数が35万人を超えたロシアでは、外出許可証のQRコードを受け取らないと、モスクワ市民は通勤のための外出もできなくなった。17万台の監視カメラが市民の行動を監視している。集めた個人データを基に警察が隔離対象者を取り締まっている。 3月には、プーチン大統領の側近がロシア最大のIT複合企業ヤンデックスのファンドに名を連ねた。ヤンデックスは、ロシアではGoogleとAmazonとUberをいっしょにしたような大企業だ。ネット検索からインターネット通販に配車サービスまでカバーしている。つまり、国民のあらゆる生活データを政府が利用できる(かもしれない)体制になったということだ。 これは、イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリが警告した、監視技術のすさまじい発展の一例だ。 https://www.kk-bestsellers.com/articles/-/11604/ また、これは、日本政府が国策としてその実現を推進しているSociety 5.0の別の顔であるかもしれない。Society 5.0は、ユートピアのごとく便利だが、ディストピアのごとくプライバシーのない世界であるかもしれない。 ユートピアであれ、ディストピアであれ、内閣府が、文部科学省や総務省などの各省庁や経団連(一般社団法人日本経済団体連合会・日本の大手企業を中心に構成される団体)や大学などの研究機関と連携して、Society 5.0の実現を目指しているということは、確実に日本社会はこの方向に行くのだろう。

■あまりにタイムリーなコロナ危機

それにしても、Society 5.0実現が日本の進むべき方向と政府が決めたのが2016年であり、来るべきSociety 5.0時代の国民に必要な能力育成として「GIGAスクール構想」が打ち上げられたのが2019年12月。そして、2020年1月末から聞こえてきた新型コロナウイルス感染拡大の噂。 3月には小中高の一斉休校。4月7日には7都道府県対象に緊急事態宣言発令。11日には、7都道府県の事業者に最低7割の出勤削減要請。22日には首相による大型連休中の外出自粛要請。 やっと5月14日には39県で緊急事態宣言解除。21日には関西圏3府県を解除。25日には首都圏など5都道府県を解除。 約2か月に渡る外出自粛や小学校から大学までの休校は、いやがおうもなくオンライン化を促した。 結果として、国策である「GIGAスクール構想」やSociety 5.0の実現に一歩近づいたようだ。まさに、実にコロナ危機はタイムリーな事件であった。秋が来れば、第二波のウイルス感染拡大も懸念になってくるのだから、オンライン化は後退することはない。粛々と、小中高校は、Society 5.0に適応できる人間養成に勤しむしかない。 内閣府や省庁のウエッブサイトを見る限り、国策には、Society 5.0実現に関連して、「スーパーシティ構想」もあり、「ムーンショット計画」もある。それは何かを知りたければ、内閣府や省庁のウエッブサイトをチェックしよう。内閣府の「国家戦略特区」のサイトも読んでみよう。 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/ 政府は、日本をどんな社会にするかというヴィジョンや国策を隠していない。ちゃんと公にしている。私たち国民がぼんやりしていて知らないだけだ。 すでに、「スーパーシティ構想」の実現に向けた「国家戦略特別区域法の一部を改正する法律」は、5月27日に政府提出案どおり成立している。地域限定型規制のサンドボックス制度(コンピューターのセキュリティ技術で、外部から受け取ったプログラムを保護された領域で動作させ、システムが不正に操作されるのを防ぐ仕組み)の創設や、特区民泊における欠格事由(暴力団排除規定等)などの整備も盛り込んだ法律だ。 日本の国策は、もちろん日本政府だけで独自で考えたものではない。属国の日本が独自にそんなことを立案できるはずがない。日本の国策は、世界が進む方向と足並みが揃っているはずだ。 「Society 5.0」だか、「GIGAスクール構想」だか、「スーパーシティ構想」だか、「ムーンショット計画」だか知らないが、世界を動かす人々がめざす社会に適応できる人間養成としての初等教育機関と中等教育機関でのオンライン化は、もっともっと進行する。]]>
1 https://www.kk-bestsellers.com/articles/-/519126/ 519126 Fri, 29 May 2020 20:00:00 +0900 Fri, 29 May 2020 17:34:00 +0900 ]]>
20代の本音を調査!「若者のコンビニ離れはナゼ? どうすれば…」 column コンビニ コンビニが消えたなら マーケティング 原田曜平 大学生研究員 渡辺広明 ■20代の好みを取り入れたなら?若者のチョイ買い消費から学び、コンビニをもっと楽しく 本当に高齢者向けだけでいいの? 若者にも楽しいコンビニの方が、皆さんにとって魅力的じゃない? もちろん、現状のコンビニのメイン客層は40~50代となっていて、高齢化社会に、寄り添った施策が人口動態とともに多くなっているのは、昨年末に発刊した、渡辺広明氏の最新作『コンビニが消えたなら』で述べてきた。でも…。 自身らも50代コンビである、著者:渡辺広明氏&編集担当者は、本書では書ききれなかった新たな命題、「以前は、何があるんだろうって、もっとドキドキワクワクしてコンビニ行ってなかった?」「今の若者感性の品揃えにも注力すれば、さらに魅力的になっていくのでは?」という仮説に気づいてしまったのです。 そこで、若者研究マーケティングアナリストの第一人者、原田曜平先生に対談をオファー。原田先生が率いる20代のインターン研究員5人も参加して、様々なアイデアを練ってみました。 昨年末に発刊した『コンビニが日本から消えたなら』を自ら否定するわけではありません。ただただ素直に、その先がどうしても見たくなってしまったのです。デジタル版でのスピンオフ企画で、この欲求を補完してみました。 では、続編スタート!! [caption id="attachment_512304" align="aligncenter" width="640"] 右/著者:渡辺広明氏、左/原田曜平先生[/caption]   今回の対談に参加してくださった大学生インターン研究生のみなさん 佐藤利奈さん(青山学院大学4年生)、宮本恵理子さん(早稲田大学4年生)、相馬海里さん(明治大学4年生)、内山澪さん(東洋大学4年生)、伊藤光輝さん(法政大学4年生)

■まずは考察の導入として、今若者の消費はどこへ流れているのか? みんなんで考えてみた

内山:私たちジェネレーションZ(1990年代後半~2000年代生まれ)って、とにかく人と比べられたくない。唯一無二の存在でありたいって思う傾向が強いんです。でも一方で他人の意見は知識として吸収します。 伊藤:僕の場合、人との繋がりが最優先で、イベントに参加するとか誰とどこへ行ったとか、コ ト消費を重視していますね。 佐藤:今回のテーマである消費行動に絞って述べると、私たちは「映え」を重視しがちです。もちろんリピートしたくなるかどうかってことも重視します。 原田:ジェネレーションZは小さい頃からSNSとともに育ち、いろいろな自己発信をしてきた世代だから、「me」意識が強く、「映え」重視ですね。あとは経済的に豊かに育っている世代だから、モノ消費以上にコト消費を重視するというのもよく言われていますね。 宮本健康オーガニック志向、安さ少量志向、見た目を気にしないものは安さ重視。お店の空間デザインにも雰囲気を求めます。 原田:まだ若く、実際健康な人が多いから、本当の意味では健康志向が高まっているとは僕は思っていませんが、「健康感」というのが訴求点になっているのは事実でしょうね。糖質オフとか、カカオ○%とか、コンビニに並ぶものもこの数年で大分健康訴求している商品が増えており、その中で君らは育っているものね。むしろ健康訴求がされていない商品だと、ジャンルによっては違和感を感じてしまうのかもしれないね。     相馬:交際費にお金をかけたいので、日用品は安く済ませます。文具や化粧品など、付加価値を求めるものを買う時は専門店で購入します。「時間や労力をかけて、どれだけの価値が得られるのか」を考えながら行動しています。 佐藤:体験型施設とかも流行っていて。 チームラボとか 。謎解き脱出ゲームもすごく流行っていて、そういうところにお金を費やしている若者が多いです。 原田モノよりコト、そして「映え」にはお金を払うけれど、特に「映え」させたいジャンルではないなとなると、途端に「コスト意識」が強くなる、ということなんだろうね。最近は100均のコスメがブランド化されていたりもするし、高いモノは良いモノであるという昭和世代の価値観は薄れ、安くて良いモノがいいという感覚が強くなってきているよね。 佐藤:飲食面の消費でさらに具体的に挙げるなら、若者消費は最近では、タピオカ、チーズハットグ、ワッフル。ここ最近目立ってきてるのがレトロな喫茶店。インスタグラムでも上げている人が目立っています。 [caption id="attachment_512313" align="aligncenter" width="320"] 確かに最近、皆さんの街でも、こんな感じのアンティークなアイテムが飾られている喫茶店を見かけませんか? 客層も若者世代が多数という傾向も。[/caption]   原田:ワッフルってコンビニにないんだっけ? 渡辺コンビニにラインナップしている3000品は世の中の売れ筋商品の集約ですからね。みなさん食べたことないかもですが、コンビニのワッフル、結構美味しいですよ。   [caption id="attachment_512314" align="aligncenter" width="640"] セブンカフェ ベルギーワッフル 127円(税込) サクサク感と深みのある味わいが特徴。ベルギー産の発酵バター、パールシュガー、ブラウンシュガー、素材にこだわり。[/caption]   [caption id="attachment_512315" align="aligncenter" width="640"] ファミマ カフェ&スイーツ 発酵バターを使ったこだわりのワッフル 138円(税込)
モチっとした食感が特徴のワッフル。その秘密は、ニュージランド産の新鮮なミルクから作られたこだわりバターを使用しているから。[/caption]   [caption id="attachment_512316" align="aligncenter" width="640"] ローソン マチカフェ さくふわ食感のベルギーワッフル 130円(税込)
焦がしバターのコクを閉じ込めたふわっとしたやわらかな生地とベルギー産パールシュガーのサクッとした食感、このハーモニーが特徴。[/caption]   三社三様、異なる食感、味わいなので、ぜひ食べ比べて好みのワッフルを見つけてみるのがオススメ。   原田:ワッフルなら、もっと美味しいお店が他にあるってことが言いたいの? 佐藤:そうです。ミスターワッフルとか(チェーン店です)。 原田:要は、コンビニでは体験できないものに流れていると。 渡辺コンビニへも専門店の味や体験を求めるぐらいハードル上がってるんですね。タピオカとチーズハットグは、コンビニにもあるよね。 佐藤:それらもコンビニにはあるんですけど、ちょっとイマイチに感じます。 渡辺:どんな部分が? 佐藤:味がイマイチに感じるんです。チーズハットグってチーズがびよーんと伸びる揚げ物なんですけど、コンビニの店員さんは忙しいから事前に揚げていて、想像してたよりもチーズが伸びないんです。

■「作りたて」が購買衝動のキーワード

渡辺:要は揚げたてじゃないぞと。なるほどね。コンビニは専門店ではないので、お客さまの購買ニーズに合わせて、食べる直前に揚げることができないもんね。この課題を解決するのは難しいかな。コンビニでの仕事は簡単だろうって、みなさんには映るんだろうけど、スタッフがこなさなければならない作業は実は1200タスクもあるんです。経営の問題というより、現場スタッフの作業が多く揚げたてに対応できないということなんですよ。できるだけ揚げたてに近いものを提供するのであれば、お客さんの来店時間ピークを読んで、用意しておくしかないよね、 佐藤:タピオカも同じで。作られたものが売られてるって感じ。 渡辺:配送されたものが売られていて、その場で作っていないから。専門的でないという点が物足りないと。ローソンとゴディバが組んだ期間限定で発売されるデザートシリーズは、ローソンの専用ラインで作られてはいるものの、専門店と大きく変わらない商品で美味しいけどね。 宮本:スタバなどの、ちょっと高級目なテイクアウトドリンクに流れているんじゃないかなとも思っていて。 内山:さらに、最先端のスイーツや食べ物も増やしてほしい。 原田:コンビニのスイーツって最先端じゃないの? 内山:いや、最先端だと思っています。さっきチーズハットグが美味しくないという意見があったと思うのですが、私は逆で。チーズハットグを食べたいのに人気すぎて毎回売り切れているんです。あと、セブン-イレブンのチーズタッカルビの冷凍食品もすごく美味しいと話題になっていて。新大久保までは行けないけれど、流行りのものは食べたいなと。リピートもしたいので旬な食べ物が増えてくれたら嬉しいです。 原田:タピオカよりもちょっと新しいというくらいのものがあると嬉しい。タピオカくらい店舗が増えちゃったものはもう…。 内山:わざわざコンビニにはいらないという感じですね…。     原田若者は、本当に最先端のモノを求めていると。ブームが去ったようなモノはどこでも買えるからわざわざいらない、ということかな。でも、最先端なモノばかりを取り入れてしまうと、コンビニの主要顧客である中高年がついていけないかもしれず、ここはコンビニにとって大きなジレンマですね。アルマーニエクスチェンジやGUみたいに、比較的若者を狙った新たな形態の店舗がコンビニ業界にも求められていくかもしれないね。 渡辺バスチーとか、悪魔のおにぎりは流行りかけでしたよね。流行に敏感なアーリーアダプター層で話題になり、比較的慎重だけど新しいものを取り入れたいアーリーマジョリティが食いつくこのタイミングなんですね。コンビニは流行りを広げられるというポテンシャルは高いので。チーズハットグはタピオカと同じで後出し感のパターンになっちゃたけどね。何れにせよ、気をつけなくちゃいけないのは、流行りモノって、時代の流れとともに不安定なものでもあるんですよ。いきなり在庫過多となってしまう可能性があるんです。その時、定番商品となっていくのか、ならないのかのバロメーターとなるのがリピート率で、バイヤーはそこに常に目を光らせています。コンビニこそ、どんなな業界よりシビアなのです。というのも店舗数が58000。全体で見ると仕入れも大量なので、在庫を抱えるリスクが高い。ハイリスクハイリターンの基で成り立っている業界だということを、しっかりと押さえていただきたいですね。あと、本物感という点については、専門店と比べるのは酷かもしれないけど、コーヒーはセブン-イレブンをはじめコンビニのが美味しいっていうのもあってね。 原田:でもね、若者はコーヒー離れしていると言われているよね。ビールも同じだけど、とにかく苦いものがダメになってきている。 宮本:コーヒーは、本格派はおじさんというか。うちら若い世代はそもそも本格派コーヒーの味がわからないからいいやっていうのがあって。味に無頓着な若者はどこのコーヒーってこと自体に興味がないんじゃないかなって。 渡辺:作りたてという点が重要なのでしょう。先ほどのチーズハットグの話も同じで。ちょっと僕の体験談を話させてもらうと、実はアンパンで人生で一番美味しかったのが、山崎パンの工場で作りたてを食べた時で。ありえなかったくらい美味しかったんですよ。 一同:え~っ? 渡辺:なんでって聞いたんですよ。パンを開発していた時、原材料メーカーに。すると、「そんなの当たり前じゃないですか」「山崎パンが原材料を一番買ってくれているんだから、価格に見合った一番いい原材料を入れているんですから」と。それなのに町のパン屋が美味しいのはナゼか?  コンビニのパンは、当たり前ですが、作ってから時間が経っているので、工場の作りたてより、店舗に届いた時点では味が少し落ちているんですよ、残念ながら。コンビニの商品って、原材料ではナンバーワンのものを使っているはずなんだけど、作りたてという点では、専門店に大きく負けているんじゃないかな。 原田:うん。唯一本格派と言われているコーヒーが、若者がコーヒーを飲まなくなってしまったと。そこにあんまり価値は感じないと。コンビニの得意分野と若者のニーズにギャップがあるというのは非常に深刻ですね。

■映えが購買のきっかけに強く作用

内山:あとは、「食べられるお花」とか、ストーリー映えするメニューが揃っているカフェが流行っています。やっぱり消費がそちらに流れていると思います [caption id="attachment_512324" align="aligncenter" width="640"] 写真提供/ROSE LABO  www.roselabo.jp[/caption]   伊藤:僕の場合、コンビニへは、飲み物目当てで行くというイメージがほとんどです。 渡辺:コンビニはもともとペットボトルや缶などの清涼飲料と紙パックのチルド飲料の販売でしたが、カウンターコーヒーの展開で飲料売上が上乗せになり、カウンターコーヒーが飲料の売上の25%前後を占めるまでになりました。さらに新しく、スムージーなどチルド系のカップ飲料、エナジードリンクなどが増えているんで、伸びている商品が以前より多様化してますね。   大学生研究員の皆さんが選んだコンビニ飲料BEST3はコレ! [caption id="attachment_512325" align="aligncenter" width="320"] ファミリーマート とろ~り 杏仁豆腐は飲み物です。248円(税込) ほど良い甘さ。杏仁豆腐スイーツは液体状か固体状と、はっきりしたものが多い。でも、この商品は、舌触りが滑らかで、とろける感があり。杏仁豆腐感を残しつつもストローで吸いやすい仕様。[/caption]   [caption id="attachment_512326" align="aligncenter" width="320"] ローソン ウチカフェ カフェオレグランデ 360ml 208円(税込) チルドカップドリンクは、知らぬ間に飲み続けて、すぐに空になってしまう。だから量は多ければ多いほど良い。この商品は内容量が多い。セブンやファミマのオリジナルカフェオレよりも、ミルクとコーヒーの割合がいい塩梅な気がする。苦くもなく薄すぎることもなく、飲みやすい。[/caption]   [caption id="attachment_512327" align="aligncenter" width="320"] ローソン NL グリーンスムージー 200g 178円(税込)
背面の野菜が敷き詰められているデザインやフォントがオシャレ。青臭い匂いが強い飲み物が苦手な人でも、この商品は果実の味が強いため飲みやすいと感じる。[/caption]   伊藤:タピオカやインスタ映えの飲み物が登場して、飲むことSNSに上げるという目的があるので、そちらへ消費が流れてしまっていると思います。 原田:専門店のタピオカはインスタ映えするけど、コンビニのタピオカはインスタ映えしないってこと? 伊藤:コンビニのタピオカはパッケージが包装されていて、中身が見えない。 渡辺:たま~に中が見えるのあるけど、見えづらいってことだよねタピオカ感が。 伊藤:そういう点で、インスタ映えしないのかなって。それよりはインスタ映えするお店のにって流れてしまう。 渡辺:現状のコンビニでは、日常買い目的の人がほとんどだろうという分析から、インスタ映え重視の品揃えではないけど。新商品ではパッケージで工夫の余地はあるかもですね。みなさん、コンビニで飲み物を買っていないという訳ではないんですね。回数が減っていると。 相馬:私は、実家暮らしなんですけど、コンビニで「何を買うか、何を買わないか」と考えたところ、コンビニで買うのは、紙パックの飲料、デザート、お菓子、おにぎり、サラダ、チルド商品。コンビニで買わずに専門店で買うものは、本、文房具、パンですね。 原田:文房具はさておき、やっぱり、本物感を求めるのものは専門店へ向かっている。本物を真似るんだろうけど、所詮真似にとどまっていてと感じてしまう…。 渡辺:実は文房具が、この20年間くらいコンビニで売り上げを落としているものの象徴で。専門店嗜好とは逆バージョンで100円ショップへ取られちゃったんですよ。お金使うところは使って、使わないところは100円ショップへという。 原田:研究員の皆さん=ジェネレーションZ世代は、どっちかじゃないんですか? 例えば、おしゃれなという観点で文房具を選ぶならPLAZAとかLOFTへと。 一同:LOFTです。 原田:LOFTか100円ショップ。両極のみで、真ん中が存在しないということか。ということは、コンビニ業界もコストで勝負するコンビニと、付加価値で勝負するコンビニに、二極化していくということも考えられると…。   第2回へ続く]]>
1 https://www.kk-bestsellers.com/articles/-/512277/ 512277 Fri, 29 May 2020 19:00:00 +0900 Fri, 29 May 2020 11:49:19 +0900 ]]>
岩田健太郎医師「感染対策も分析も西浦先生だけに『依存』してはいけない」【緊急連載③】 column 感染経路 新型コロナウィルス 京都大学教授で元内閣参与だった藤井聡氏が、感染症対策専門家会議尾身茂先生と、感染症数理モデルの専門家として情報の発信と政府への助言をしている西浦博先生に対して、批判文と公開質問状をネットで公開しました。内容は以下になります(以下【当該資料】参照)。 【当該資料】2020年5月21日『「新」経世済民新聞』【藤井聡】【正式の回答を要請します】わたしは、西浦・尾身氏らによる「GW空けの緊急事態延長」支持は「大罪」であると考えます。 https://38news.jp/economy/15951   藤井氏の意見と質問状のポイントを整理すると、さらに以下になります。 (1)「4月7日時点」の「8割自粛戦略という判断」そのものは「結果論」では責められない  (2)実証的事後検証は「8割自粛戦略は、無意味で不要だった」事を明らかにした  (3)8割自粛戦略は、無意味で不要だっただけでなく、単に「有害」だった(経済的に「有害」だった)(倒産や失業をたくさん出す結果になった)  (4)4月7日の「緊急事態宣言/8割自粛」の政府判断は「間違い」だった(次に感染の第二波が来たとしたら、より経済的被害の少ない対策を取るべきである。例:「100人以上のイベントのみ中止」など)  (5)西浦氏・専門家委員会が「GW空けの緊急事態解除」を科学者として主張しなかったのは国家経済破壊の「大罪」である(GW明けには実効再生産数<1がわかっていたはずである) また新潟県前知事の米山隆一氏三浦瑠麗氏堀江貴文氏などメディアでの発言力が大きい人たちまでが参戦し、藤井氏と同じような議論を展開しはじめています。 藤井聡氏による、尾身氏、西浦氏に対する批判とはいったい何を根拠に語っているのか? またその批判する考え方そのものはどういう意味があるのか? 「感染の問題」と「経済の問題」を混乱させたまま進む議論に対して、感染症専門医の第一人者・岩田健太郎氏に、一度議論の内容を整理していただき、感染症専門家の立場から藤井氏の意見に対する見解をうかがった————

◼️西浦先生のグラフの後ろにあるもの

[caption id="attachment_520360" align="alignnone" width="640"] 2月4日、日本外国特派員協会で記者会見する北海道大学の西浦博教授(写真:ZUMA Press/アフロ)[/caption] 藤井先生は、西浦先生の理論とグラフを根拠にして「間違っていた」ということを主張するわけですけれど、そこがそもそもおかしいとぼくは思います。 というのも、数理モデルだけでは感染対策の是非は決められないからです。西浦先生がいいとか悪いとか言う以前に、あるひとつのグラフだけで全部が説明できることはないんですよ。 『東洋経済オンライン』が日本国内の新型コロナの感染データ(「新型コロナウイルス 感染の状況」)をまとめていて、その中で都道府県ごとの実効再生産数を公表しています。 https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/ それをみると兵庫県では、実効再生産数が最も高かったピークは4月15日頃、その後急激に下がって4月18日に1以下になっています。(下記引用【図表】参照) [caption id="attachment_520579" align="alignnone" width="640"] 【図表】兵庫県の実効再生産数を表すグラフ(引用出典:『東洋経済オンライン』より)[/caption] つまり、藤井先生は全国平均のグラフを見て「3月29日にすでに下降線にあった」というわけですが、そこには例えば感染者が一例も出ていない岩手県や、ほとんど患者がいなかった山陰とかをひっくるめた数字です。 でも実際には、感染者がたくさん出ている地域と出ていない地域のデコボコがあったわけで、それを無視して緊急事態宣言を解除するどうこうの議論はできません。 さらに、リアルタイムでは感染が確認された日から報告日までに遅れが生じていました。西浦先生たちのグラフでは、報告の遅れを加味して感染が起きた日を修正しています。 『東洋経済オンライン』における東京都のデータを見ると、普通に「報告日」をベースに再生産数を計算しているので、4月以降までRtは1以上を続けています。西浦先生のグラフでは、どうもボランティアとかを活用して、診断から報告までの遅れを数式のなかに組み込む作業を事後的にやって、後から「感染時期」のグラフを作成されているんです。 じつは当時、ぼくもこのことをよく理解していませんでした。というのも兵庫県では、病院がPCR陽性を保健所に届けると遅くても翌日、週末にかかると翌々日には報告に反映されていて、東京みたいに一週間も報告が遅れるなんてことは起きていなかったからです。そういうことが東京でわりとたくさん起きていたことを、西浦先生のプレゼンを聞いてぼくも初めて知りました。 ですから事前にそういうことをすべて理解して、「3月中にRtが1以下になっていた」ということを理解するのは困難だったわけですし、地域によっては4月以降も実効再生産数1以上だったところも結構あるわけです。 したがって、藤井先生がおっしゃるように「3月の時点ですでに大丈夫になっていた」というのは、西浦先生の全体の一枚の図から解釈しているだけなんです。本当はもっとデコボコした地域差をちゃんと見なきゃいけないわけですよ。西浦先生を批判しているわりには、西浦先生のデータだけが根拠になっている。 本来だったら他のいろいろなデータをみた上で批判しなければいけないわけで、つまり「西浦先生だけに依存しちゃダメ」なんです。

◼️データの背後にいる感染者

[caption id="attachment_520361" align="alignnone" width="640"] 岩田健太郎医師。5月24日ZOOMにて取材[/caption] 現在いろいろなところで抗体検査が始まっています。抗体検査にはいろんな問題もあり、どれぐらいの感染者がいたかを正確に把握するのは難しいんですけど、数々の抗体検査が共通して示唆しているのは、「少なくともPCRで我々が認識している患者よりははるかに多くの患者がいたであろう」こと。ここはほぼ間違いないでしょう。そもそも、国の施策だと、感染者全員を診断しようとははなから思っていなかったわけで、だからこそPCR検査を行う基準が世界一といっていいくらい厳しかったのですから。東京などでは、熱が出てあちこちに行って保健所に頼んでも、検査を受けさせてもらえない人もいらっしゃいました。 つまり、PCR検査では見つかっていない患者さんだって大勢いるわけです。 西浦モデルはPCRによる患者数をもとに解析して、それで「増えた、減った」といってるわけですけれども、患者さんがぐっと増えた時には、じつは検査で見つかっていない患者さんの割合も増えている可能性が高い。しかし、そこは計算に入れてないんですね。 そうすると「実効再生産数」をはじめ、あの西浦モデルの計算だけですべてを説明するのはちょっと危険です。データの背後にいる隠れた患者さんの増加も考慮に入れないといけない。 「3月29日にRtが下がっているから、もうなにもしなくていいんだ」というのは数字とグラフしか見ていない人の言い分で、その裏にいるであろう、もっとたくさんの感染者を勘定に入れると、それは怖くてできない実験です。 スウェーデンなんかはそういう実験的に対応をとって、「いいじゃないか、外に感染者がたくさんいても」というスタイルをとっているけれど、やっぱりたくさんの方がお亡くなりになっています。本稿準備時点で4000人以上の方がお亡くなりになっています。 日本だって「死亡者が少ない」って言いますけど、すでに800人以上の方がお亡くなりになっていますし、その数は第一波だけでも、もう少し増える可能性が高い。 ですので、4月の時点で「緊急事態宣言解除」「なにもしない」という、そこまでの「壮大な実験」的な態度をとるのは、非常に危険だったと思います。 このように、数理モデルは当然見ないといけないんですが、数理モデルだけで全部決めるってのは無理筋で、併せて他のいろんなデータを見なければいけないわけです。

◼️新型コロナはなぜ医療崩壊を引き起こすのか

今回の流行で大変だったもののひとつは、医療現場の状態です。実際、医療現場は非常に大変な状態にありました。重症患者が増えて、地域によっては医療崩壊寸前だったんです。 データだけを見る人がよく「病床数は結構余ってるじゃないか」って言うんですけど、病床数が余るようになったのは緊急事態宣言が出てから数週間経った、流行の後のほうになってからで、それ以前の本当にヤバい時は、バケツがひっくり返る瀬戸際みたいな状況にあったんです。 そんな状況になってしまった理由のひとつに、今回の新型コロナウイルス感染の「長引く」特徴にあります。 軽症でも重症でも、長引くんです。軽症だったらPCRが2回陰性になったら退院になりますが、なかなか2回陰性にならないから、何週間もずっと入院することになる。 重症患者は呼吸不全が起きて挿管されるわけですが、お亡くなりになる方でも、回復される方でも、ものすごく時間がかかる。だから集中治療室のベッドがすぐに埋まってしまうんです。 よくある勘違いとして、例えば東京都のデータを見て「新規の重症患者がだんだん減り続けているじゃないか」とかいう意見がありました。しかしこの「減り続けている」というのは、あくまで「発見される人」が減っているだけで、実際にはなかなか退院できないから、入院している患者さんの数は累積してだんだん増えていたんです。 緊急事態宣言が出てしばらく経ってから、兵庫県などいくつかの自治体では、ホテルなどを活用して軽症患者さんを退院させるスキームができました。しかし流行の当初にはその仕組みがなかったので、入院する患者さんの数がどんどん増え続けました。 そうなると本当に医療崩壊寸前になって、医療スタッフはものすごく疲弊します。ただでさえものすごく重苦しいPPE(個人防護具)を着て、自分が感染するかもしれないストレスの中でケアをやらないといけない。そして実際に、東京都を含めていろいろなところで院内感染が起きてしまっています。 院内感染が起こると当然、感染した医療スタッフが患者に転じて、患者数がドンと増えます。 それから感染した本人はもちろん、一緒に働いていた同僚なんかもみんな濃厚接触者になり、14日間程度の健康監視をしないといけない。その間は、当然職場に戻れない。ということは、医療のキャパシティがガクンと落ちる。 そうするとその病院は大きくキャパシティを失ってしまいます。よって、外来を閉じたり、病棟を閉鎖したり、手術をやめたりするわけです。 当然、手術が必要な患者さんが消えてなくなるわけじゃないですから、周りの病院が手術を肩代わりしたり、入院患者や外来患者を肩代わりしたりするわけです。そうすると周辺の、コロナを診ていない病院も患者さんで溢れかえることになる。 そうすると今度は診てもらえない患者さんが増えてきて、病院の外の地域コミュニティにも影響が出てきます。「医療崩壊というのは医療セクターだけの問題で、他の人たちが知ったことか」というのは大きな間違いで、医療が崩壊すれば当然一般市民も困るわけです。 この影響は、ドミノ倒しのようにじわじわ出てくるのであって、これは長期に渡るケアが必要な新型コロナの特徴がもたらす、累積的に出てくる影響なんです。 これには「軽症患者をできるだけ早く退院させるスキームが遅れた」などの政策的な問題の影響もありますから、全部が全部、感染の増加によるものではありません。 だからといって「新規で見つかる感染者が減ってるから全然問題ないんだ」というのは大間違いです。 新たな患者さんが発生し続けている限りは、医療機関は逼迫する。少なくとも、緊急事態宣言が出てからしばらく経った時に、そういった大変な状況にあったことは間違いありません。 そして、こういった医療機関の困窮は、西浦先生のグラフには全然出てきません。 それは西浦先生が悪いわけでもなんでもない。西浦先生のモデルやグラフだけで全部説明しようとするのが、そもそもの間違いなんです。 藤井先生や米山先生の議論が間違っているのはそこで、「西浦先生は間違っている」と主張している割には西浦先生に依存しているのは大きな矛盾でしょう。 同じことは厚労省にも言えて、本来だったら西浦先生のグラフだけではなく、もっといろんなところを見るべきだったんです。ぼくは2月くらいからずっと、「とにかくPCR2回で退院させるスキームをやめて、どんどん患者さんを病院から家に帰れる、あるいはホテルに宿泊できるようにしないと大変なことになる」と警告していたのに、4月になるまで動きませんでした。そういう人災的なところもあって、医療機関はずっとしんどかった部分があるわけです。 このように感染症の対策には、単純な感染者数に表れないいろんな要素が絡んでいます。ですから「西浦先生のグラフが正しい、間違っている」という以前に、そもそも西浦先生のグラフだけで感染症のすべてを説明しよう、あるいは対策を決めようとすることが土台無理なんだということを、ぜひ理解してください。 次回、最終回は「真実を見つけていく態度こそ進歩の条件」を語ります。(本文構成:甲斐荘秀生) ]]>
1 https://www.kk-bestsellers.com/articles/-/520357/ 520357 Fri, 29 May 2020 12:00:00 +0900 Fri, 29 May 2020 12:56:46 +0900 ]]>
岩田健太郎医師「日本で感染爆発が押さえられた要因とはなんだったのか」【緊急連載②】 column 感染経路 新型コロナウィルス 京都大学教授で元内閣参与だった藤井聡氏が、感染症対策専門家会議尾身茂先生と、感染症数理モデルの専門家として情報の発信と政府への助言をしている西浦博先生に対して、批判文と公開質問状をネットで公開しました。内容は以下になります(以下【当該資料】参照)。 【当該資料】2020年5月21日『「新」経世済民新聞』【藤井聡】【正式の回答を要請します】わたしは、西浦・尾身氏らによる「GW空けの緊急事態延長」支持は「大罪」であると考えます。 https://38news.jp/economy/15951   藤井氏の意見と質問状のポイントを整理すると、さらに以下になります。 (1)「4月7日時点」の「8割自粛戦略という判断」そのものは「結果論」では責められない  (2)実証的事後検証は「8割自粛戦略は、無意味で不要だった」事を明らかにした  (3)8割自粛戦略は、無意味で不要だっただけでなく、単に「有害」だった(経済的に「有害」だった)(倒産や失業をたくさん出す結果になった)  (4)4月7日の「緊急事態宣言/8割自粛」の政府判断は「間違い」だった(次に感染の第二波が来たとしたら、より経済的被害の少ない対策を取るべきである。例:「100人以上のイベントのみ中止」など)  (5)西浦氏・専門家委員会が「GW空けの緊急事態解除」を科学者として主張しなかったのは国家経済破壊の「大罪」である(GW明けには実効再生産数<1がわかっていたはずである) また新潟県前知事の米山隆一氏三浦瑠麗氏堀江貴文氏などメディアでの発言力が大きい人たちまでが参戦し、藤井氏と同じような議論を展開しはじめています。 藤井聡氏による、尾身氏、西浦氏に対する批判とはいったい何を根拠に語っているのか? またその批判する考え方そのものはどういう意味があるのか? 「感染の問題」と「経済の問題」を混乱させたまま進む議論に対して、感染症専門医の第一人者・岩田健太郎氏に、一度議論の内容を整理していただき、感染症専門家の立場から藤井氏の意見に対する見解をうかがった————

◼️新型コロナの「基本再生産数」は正確には決められない

[caption id="attachment_518834" align="alignnone" width="640"] 岩田健太郎医師。5月24日ZOOMにて取材[/caption] 藤井先生の議論の他に、新潟県の前知事である米山隆一先生が展開されているような「数理モデルのパラメータとして、基本再生産数(R0)=2.5を使うのが、そもそもおかしいじゃないか」という議論があります。 ぼくは、その議論は違うと思います。 前回もお話しした通り、「正しい判断をする」という観点から言えばこのような議論は起こらないですし、特に今回のコロナの場合、「基本再生産数(R0)」は静的で変化しない数字ではないからです。 R0(basic reproduction number、R zeroと読まれる)とは、「感染者が存在していないコミュニティにひとりの感染者が入ってきて、感染を拡げたときに、平均してひとりが何人に感染させているか、の数字」という定義になります。 これは、公衆衛生の政策を議論する中で、例えば「麻疹はひとりからこれだけの人数に感染してしまうから、これだけの割合の人にワクチンを接種すれば押さえられます」みたいな話の中で使うことが多い概念です。 その意味で、実際にどれだけの人が感染したかの観測値から計算し、刹那刹那、時点単位での現状把握のために用いる「実効再生産数Rt(effective reproduction number)」とは異なります。 たしかに少し前までは、例えば「麻疹ウイルスのR0はこれくらいです」「季節性のインフルエンザのR0はこれくらいです」みたいな基準となる値があって、それを用いて「ワクチンでこれだけの人に免疫がつけば感染はどんどん収束します」「接触する人数が多いと感染はどんどん拡がります」という議論をするものだと、我々も学校で教わってきました。 ところが今回の新型コロナウイルスでは、中国やヨーロッパなどいろいろな事例で基本再生産数が計算されているのですが、それらにものすごく差があるんです。 つまり、我々はともすると「ウイルスがひとりから何人に新しく感染するか」というのを、「ウイルスが単独でつくった属性」のように理解しがちです。例えば「麻疹ウイルスは空気感染でどんどん拡がるから、基本再生産数がたくさんあるぞ」みたいに考えるわけですね。 けれども、この新型コロナウイルスに関して言うと、「人のファクター」のほうが大きいようなんです。 つまり、感染者や周りの人がどのようにふるまうかによって、ひとりから4人にも10人にも感染させることがあり得る一方で、ほとんど他人に感染させないままの場合もあるんです。例えばクルーズ船の中では「ひとりの人から、ものすごくたくさんの人が感染した」と推測されていますし、北海道では「ほとんどの方は誰にも感染させなかった」と推測されていて、非常にばらつきがあります。 ということは、「ある基本再生産数に基づいて、こういうモデルで計算をする」という時の「正しい基本再生産数」なんて、こと今回のコロナウイルスでは存在しないんですよ。 事後的にいうと「日本では1.7だった」という説もありますけれど、それも「ある時点での日本」の話です。日本人の行動だって変わりますから、日にちが経つに従ってある観察環境下でのR0は上がったり下がったりします。 それにこれは平均値であって、実際に起きている感染は、例えば施設や病院でクラスターが発生することもあれば、全然感染させない場所がある。日本全国には感染のまったくない地域もあれば、クラスター感染が頻発している地域もある。それを全部合わせた平均が「基本再生産数」なわけです。 つまり今回のコロナでは、「基本再生産数はいくつが正しい」という議論はあくまで事後的なものですし、その数字すらもその後の人の行動によって変化してしまうものです。ですから「1.7がより妥当だった」という議論はそもそもおかしいとぼくは思います。

◼️「実効再生産数」はそもそも静的ではない

[caption id="attachment_518835" align="alignnone" width="640"] 2020年5月26日緊急事態宣言が解除された品川駅構内の様子(写真:森田直樹/アフロ)[/caption] 実効再生産数について、藤井聡先生は以下のように仰っています。 (以下、藤井先生の記事より引用) なぜなら、感染症の数理分析には、「一人の感染者が平均で何人に移すのか?」という再生産数という概念があるのですが、この値は状況変化が無ければ基本的に一定値を取り、かつ、それが1を下回っていれば、感染者数がゼロに収束していくことは数理的に自明だからです。つまり、この西浦氏作成データは、日本の(実効)再生産数が3月下旬以降「1を下回る」状況になっており、したがって3月下旬以降は、特に何の取り組みをしなくても、必然的にゼロに収束する状況になっていた事を意味しているのです。 (引用終わり) この議論は間違いです。 先ほど説明した「基本再生産数」R0の場合はその議論も成り立ちます。古典的な議論では「R0が1以下であればどんどん感染者は減り、ついには感染者がゼロになる」と言うことができます。 ところが「実効再生産数」Rtというのは、刹那刹那で変わる「その日の時点での再生産数」を言っているわけで、次の日には違う再生産数になってしまいます。定義からして動的な数値ですから、なにもしなくても毎日同じRtがでてくるわけではありません。 しかもこの新型コロナウイルスでいうと、前回も説明した通りうつりやすさが一定ではありません。ひとりの方が5人にも6人にも感染させる事例があったり、だれにも感染させない事例があったりと、バラバラです。日本中でそういうデコボコした感染が起きているのを平たく直した結果、みなさんがご覧になっているグラフのカーブになっているわけです。 ひとりから多くの方に感染させるような事例を「スーパースプレッダー(Super Spreader)」と呼びますが、そのような事例が多発し、ある日ある時ぎゅっと感染者が増える、ということが当然起こり得るわけです。 それが起きないようにすることが大事ですから、そのためにはこの実効再生産数Rtを1以下に「押さえ続けること」が重要になってくるわけです。油断してRtが戻ってしまっては元の木阿弥です。

◼️いろいろな事件が感染を押さえた

藤井先生は「3月下旬以降は、特に何の取り組みをしなくても収束する状況だった」と言いますけれど、3月下旬までに日本ではいろんなことが起きています。「4月7日に緊急事態宣言を出しました」といっても、緊急事態宣言以前と以後で世の中がドーンと変わったわけではありません。 でも今回の新型コロナウイルス対策の場合は、緊急事態宣言というのでどんと何かが変わったわけではなくて、その前後でいろんなことが起きましたね。 東京オリンピックが延期になったのが3月24日でした。 小池東京都知事が「不要不急の外出を自粛しましょう」と言ったのが3月25日です。 志村けんさんがお亡くなりになったのは3月29日です。 西浦先生が「対策がゼロだったら40万人死亡するかもしれない」と発表されたのは4月15日です。 ぼくも4月3日に「少なくとも東京都ではロックダウンしたほうがいい」と主張しています。 つまり、緊急事態宣言の前後でいろんなことが五月雨式に起きていたわけです。 また、今回の緊急事態宣言には罰則規定がありませんので、その効果も即座に表れるわけではありませんでした。 皆さんも実感されているでしょうし、ぼくも兵庫県で観察してて思ったんですが、緊急事態宣言が出てから2週間くらいは、街の雰囲気はそんなに変わってなかったですよね。外に出る人も多かったし、みんなわりと通勤していたし、罰則規定がないですからお店も開いてた。 その前後で、たとえば西浦先生が「40万人死ぬかもしれない」と言ってみたり、いろいろな人が「STAY HOME」というメッセージを出してみたり、また志村けんさんや岡江久美子さんがお亡くなりになったりといろいろなことが起こって、緊急事態宣言から2週間くらい経った時には、気が付くと外を歩いている人がほとんどいない状態、電車に乗ってもガラガラな状態が徐々につくられていったわけです。 ですから、緊急事態宣言を出した4月7日以前と以後を直接比較して、例えば時系列解析をして、新規感染者のトレンドや切片に変化がないことを議論するのはふさわしくありません。 緊急事態宣言の前後でもいろいろなことがなされていて、それの総体として増加率が減少したんです。 基本的に感染症、特にコロナの場合は、感染経路を遮断すれば感染が減るし、感染経路を遮断しなければ感染は拡がります。一旦感染が拡がった状況では、感染経路を遮断する一番いい方法は「家にいる」ことなわけで、上に挙げたいろいろなことが「家にいること」を促すように働いたわけですよね。 そこでなにもしないで普通の生活をして、経済活動をガンガン回していたら、やっぱり感染が拡がっていた可能性のほうがはるかに高い。今度は収拾がつかなくなるくらい感染者が増えて、イタリアやアメリカのようになってしまうリスクは十分にあったわけです。事実、緊急事態宣言を解除、緩和したあとも、北九州のように感染者が再び発生することもあれば、フランスのようにロックダウンのレベルを再び上げねばならなかったところもあります。 いまでこそ「アジア人のほうが死亡率は低いんじゃないか」という議論がなされています。もちろんこれも、いまだに確認がとれていないひとつの仮説にすぎませんが、3月の下旬から4月の頭にかけては、「アジア人のほうが死ににくい」なんてことは広く言われていませんでした。それどころか「中国人のウイルスだから」とか「韓国ですごく拡がって」といういろいろな話があったので、むしろ「アジア人のほうが危ないんじゃないか」ということも言われていました。これはこれで間違った仮説の立て方ですが。現在でも、アジア人のほうが死亡リスクが低い、というのは仮説の一つに過ぎず、立証されたわけではありません。 ですから、「Rtが1を下回ったんだからほっとけばよかったんだ」というのは、端的に言うと間違いと言わざるを得ません。抑えたものは、抑え続けなければいけないんです。 第3回では「西浦先生だけに依存してはいけない」について語ります。(本文構成:甲斐荘秀生) ]]>
1 https://www.kk-bestsellers.com/articles/-/518809/ 518809 Thu, 28 May 2020 12:00:00 +0900 Fri, 29 May 2020 11:20:28 +0900 ]]>
使うときは使う、天下人・豊臣秀吉の現金給付 politics 六宮智仁王 太閤記 徳川家康 柴田勝家 織田信雄 豊臣秀吉 30万円を住民税非課税世帯・収入半減世帯に というわけで、今回は豊臣秀吉の場合を見よう。彼の場合は、面白い材料が多くてどれを取り上げようか迷うくらいである。 [caption id="attachment_489578" align="alignnone" width="300"] 豊臣秀吉像(部分) 高台寺蔵[/caption] まずは巷談の類の話ながら、秀吉の出世譚、『太閤記』の中から紹介させていただく。 信長がまだ尾張一国のみを支配していた頃、ある日家中の福富平左衛門の金龍の面指(表指。刀の笄の事。)が盗まれたことがあった。 この時、出自が卑しい秀吉が周囲から犯人と疑われたのである。 これに対して彼は無実の証明のため、津島の富家たちの所へおもむき、例の面指を質入れに持ち込む者が現れたら報せてくれよと頼み、黄金十両を懸賞金につけて首尾良く犯人を捕らえる事ができた。 これが話の概略で、真偽はともかく、彼が津島の豪商たちにも早くから何らかのつながりがあった、というのは、その来歴や抜群の経済感覚から見て不自然ではないのではないか。 話の続きだが、その経済の天才は、泥棒を捕らえたあと、織田家の薪奉行に任命される。それまで年間で1000石以上の費用がかかっていた薪炭を、実際の使用量を厳密に実検して三分の一に抑えたとしている。このあたり、秀吉の経済センスに舌を巻いた古人たちの思いを窺うことができよう。 彼の軍事作戦についても、一流の経済感覚は遺憾なく発揮されている。 彼にとっては信長麾下の部将としての最後の戦いとなった、天正十年(一五八二)の備中高松城攻めは、引率する軍勢の数約二千人(宇喜多氏の兵はカウントせず)。四月中旬に始まった戦いは六月はじめまで続き、その一ヶ月半で必要とした兵糧は、おおよそ米5400石になり、その金額は4億5000万円にのぼる。 また、この時の秀吉軍団の構成では、鉄炮が占める割合は全体の約二割くらいであろうとされているので、鉄炮の数は四千挺。これだと、鉄炮・弾薬で17億円がかかってくる計算になる。しかも、この戦いでは、他にもっと莫大な経費が発生することになった。 いわずと知れた「水攻め」の為の費用である。高松城の難攻不落ぶりを見た秀吉が、驚天動地のアイディアによって城の周囲に全長三キロメートルの堤を構築し、城を水攻めにすることにしたのだ。 近在の農民たちに触れだして、土俵一俵につき米一升と銭100文を支払うことにより突貫工事に協力させ、結果として、この堤防築造に米6万3500石と銭63万5000貫をかけたといわれている。 銭63万5000貫を高松城攻め当時の米価相場で換算すると55万石余りとなるから、米の現物支払い分と合わせて61万5000石が消費されたことがわかり、驚きの461億2500万円! が計上されてくるのだ。 しかも、この費用は奈良という離れた土地での米価を参考にしており、実際現地では米が極端に不足していただろうから、搬送代や現地買い入れ代を考えると、もっと価格がはね上がってしまうのは明らかになってくる。 土木作業におけるヒトとモノの集中をあっさりとやってのけてしまう秀吉、そのための金銭の一大集積をも可能にしてしまった秀吉の、面目躍如となる話ではないだろうか。 そして、彼の天下取りを決定づけたのは、なんといっても翌天正十一年(一五八三)の「賤ヶ岳の戦い」だろう。 織田家の宿老・柴田勝家と対決したこの合戦では、秀吉の留守を突いて、勝家の部将・佐久間盛政が琵琶湖北東岸の賤ヶ岳に陣取る秀吉方を蹴散らしてしまう。 この報せを受けた秀吉は、電光石火の早業で軍勢を戦場に返して柴田勢を撃破する訳だ。 この時、秀吉は面白い強行軍の方法をとっている。 夕方四時に出発してからわずか五時間で五十三キロ移動して戦線に到着するのだが、ちょうど夜にかかるこの時間帯の中で、彼の軍勢は行軍中に夕食を摂る必要があった。 この為、秀吉は途中の宿場ごとに兵粮の炊き出しをさせたのだ。 「米の算用は、百姓ばら、自分の米ならば十そう倍にして、後に取るべきものなり。」(『川角太閤記』) 約1万5000人の直属軍の腹に入る米を沿道の民衆から確保するために、十倍の対価を約束するという思い切った手段は、さすがは人間通・秀吉というべきか。 ともあれ、この費用を計算してみると、1万5000の軍勢が必要とする一食分の米の量を二合として全体で30石。これを現代に換算して、2250万円という金額がはじきだされる。 秀吉は、これに対してさらに10倍払いを約束したのだから、実際の経費はなんと2億2500万円! にのぼる計算となるのだ。晩飯一回分でこの金額なのだから、恐れ入ってしまうほかはない。 秀吉はこの以前から北伊勢で滝川一益を攻撃しており、そのまま賤ヶ岳の戦いになだれ込んでいる。更に賤ヶ岳の後は柴田勝家の掃討戦に入っており、実に作戦期間は前後二ヶ月以上に及ぶ。 この間の秀吉軍の食費となると、総数4000の軍勢をふた月食わせるには、米だけで1万4400石、10億8000万円が飛んでいくのである。 この戦いの時期くらいになると、秀吉の軍勢は天下統一の大義名分のもとに集められた連合軍的な色合いが強くなり、秀吉自身の軍隊は全体の30%くらいになっている。 この30%の軍勢が所持した鉄砲の数は、約3000挺ほどと推定され、それに関する費用は長篠の時と同じ13億円ほどと計算されるが、それは全体の費用から考えると、もはや大きな意味を持つ数字ではなくなっている。合戦の性格自体が変わってきているのだ。 そして賤ヶ岳の次にやって来るのが、徳川家康との対戦となった「小牧・長久手の戦い」である。 天正十二年(一五八四)、織田信長の息子・信雄とタッグを組んだ家康を仕留めようと尾張に出動した秀吉は、10万の軍勢をもって家康と対峙した。 途中、池田恒興の売り込みによって三河への遊撃軍侵攻を策したものの、家康に見抜かれてものの見事に撃破されるという痛恨の悪手もあったが、いくさの大略はお互いに相手の出方をうかがうにらめっこに終始している。 このにらめっこは、八ヶ月にも及んだ。10万の軍勢を八ヶ月養うためには、米代108億円が必要になり、この他塩・味噌・副食物を考え合わせると120~130億円を都合しなければならなくなる。 ここまで、まさに秀吉得意の大物量作戦の面目躍如、といったところだが、彼は天下統一の総仕上げにもう一つ、一大イベントを実施している。それが「小田原攻め」だ。 天正十八年(一五九○)、関東に割拠する後北条氏を征伐するためのこの戦いに秀吉が動員した軍勢は、実に25万以上とされる。 空前絶後の雲霞のような大軍が関東に出現したのである。四月から七月までの三ヶ月間にわたって行われた小田原城包囲戦で、秀吉は20万石の米を駿河に集積して糧食に充てている。 また、これとは別に黄金一万枚を拠出して東海筋から人夫・馬・糧秣を徴募して、物資の運送を遅滞なく進める態勢を整えたのだ。 米20万石に、黄金一万枚を換算上乗せすれば、約36万石となり、当時の上総国や下野国の一年間の生産高にほぼ該当する。 これに加えて、石垣山にわずか三ヶ月という短期間で山城をこしらえてしまう(世に言う「石垣山一夜城」である)といったその経済的パワーには圧倒される他はない。 秀吉はこれだけの資本投下をおこなう事によって、小田原後北条氏の抵抗を鎧袖一触し、まだ出来立てホヤホヤの政権を早く固めることに努めたわけである。 秀吉の凄味は、これらの時期をほぼ通じて大坂城建造をも平行して進めている点だろう。たしかに戦況が予断を許さない時には若干の工事の中断やスピードダウンもあったのだが、それにしてもあの大城塞を築くために必要な資本量というのは莫大なものであり、秀吉権力の経済的な底力には呆れるばかりだ。 その底力の理由には、まず第一に各国の金・銀山を直轄領として手中に収め、慶長三年(一五九八)には実に大判(小判十枚分)で金4399枚、銀9万3365枚を収納するに至った事が挙げられるだろう。 「太閤秀吉公御出世より此かた、日本国々に金銀、山野にわきいで」(『太閤さま軍記のうち』)とあるような、空前の黄金バブルのおかげである。 この豊富な金銀をバックに、秀吉は金座・銀座を設置して貨幣の鋳造(天正大判など)も始め、六百年ぶりに国産貨幣を造りだした。 また、これと平行して、全国の港津の支配により国内商業を把握し、米相場や生糸相場をコントロールして利益を生むことも政権自らが行ったし、堺や博多という大商港を舞台にした南蛮貿易もまた秀吉政権を潤している。 これらの、かつて類を見ない利益源の創設と確保とが、秀吉の特徴である大物量作戦を可能にした。 そして、大物量作戦の実施によって、弓・鑓・鉄炮といった武器による戦争から、鍬・鋤・もっこといった土木事業による戦争へと、日本の戦争の主役を替えてしまう事にも成功したのであった。 こうして、日本中の富を独り占めにして天下統一に役立てた観のある秀吉は、ややもすると湯水のように金を無駄遣いしたように見られがちだ。 たしかに、伏見城や聚楽第といった贅沢三昧の豪邸を建てたり、北野の大茶会や醍醐の花見などの遊びの大イベントを挙行したり、はては前代未聞の「金賦り」を実施して、金五千枚・銀三万枚をばらまいたりと、まさしく「浪費王」の称号を贈りたいほどの見事な使いっぷりではある。 しかし、彼には一方でこういう面もあった。 「黄金あらため見申し候へば、包み候てをき候。砂金十まいほど御座候。何としたる仔細にて候や。秤目のなきさいかけ渡し、たしかにをき申し候に、すなかね十まいばかり、不審に存候。仔細段、よめによく〜尋ね、申し越し候べく候」 聚楽第の金を検査して包んでおいたが、秤目の無い「才欠け砂金」を十枚ほど渡してあった筈なのに、それが無い。一体どうしたんだ。 管理役の老女・よめによく尋ねて、どうしたのかを報告して来い、という内容の秀吉の手紙である。この手紙からは、御金蔵の中身を一々自身で確認し、少しの違算も見逃さない、倹約家・秀吉の素顔が見えて来るのではないだろうか。 現在に至る「太閤人気」は、直接政権に対する「義務」を持たない庶民レベルでの人気であり、無責任なものでもありますが、当時すでに知識階級(武士階級以上)にも秀吉の危うさを指摘する声はあったのでしょう。 この後秀吉は有名な金賦(かねくばり)をおこなって必死に知識階級の人気を回復しようとしますが、それでも秀吉批判の落書は無くならず、最後には「天下は天下の天下なり(中略)行く末めでたかるべき政道にあらず」という有名な落書が記録されます。 『ベル・エポック』(逢坂みえこ)に「みんなを熱狂させる圧倒的な光」「その光がある日なくなってしまうのだ」「こわいほどみんな同時にそれを感じる」という独白文があります。 この後に「たぶん出ている本人も」と続くのですが、秀吉も圧倒的な光で周囲を幻惑して上り詰めただけに、まさに痛いほど「光が無くなっていく自分」を感じていたのではないでしょうか。 その焦りが、彼に残虐な処刑を実行させ、さらには朝鮮侵略に駆り立てていくのです。]]> 1 https://www.kk-bestsellers.com/articles/-/489537/ 489537 Thu, 28 May 2020 12:00:00 +0900 Fri, 29 May 2020 12:18:52 +0900 ]]> なぜ安倍首相は「憲法を改正する必要は全くない!」と僕に語ったのか<br />田原総一朗氏 × 望月衣塑子氏が斬る!<br /><br /> politics #モリカケ #加計学園疑惑 #安倍政権 #望月衣塑子 #桜を見る会 #森友問題 #田原総一朗 #籠池 #菅官房長官 「桜を見る会」疑惑が次々と浮上し、安倍内閣に厳しい目が向けられている。11月に憲政史上最長在任の首相となった安倍晋三氏という存在が、「安倍一強」と呼ばれた強引な政権の瓦解が、今、始まったのだろうか……。ジャーナリスト・田原総一朗氏と『「安倍晋三」大研究』の著者で東京新聞記者・望月衣塑子氏の二人が、安倍政権の行方を徹底討論する!(第3回)  

●「憲法改正をする必要は、全くない」と安倍さんは小声で言った

 
「憲法上は原子爆弾を所持しても問題ない」と語った安倍晋三氏。           (『「安倍晋三」大研究』p110より)   画・ぼうごなつこ
 
 

田原・・・ここにきて、安倍さんが憲法改正のボルテージを上げた。

 

望月・・・安倍首相は、憲法を改正する必要はないと言っていますよね。「安保法制ができたから、(憲法改正は)もういいんだ」と、きっぱり言い切っています。

 

田原・・・2016年7月に参議院選で自公が3分の2議席を取った。衆議院は先だって行われた衆院選で、憲法改正に必要な3分の2を取っていた。僕は安倍さんに「いよいよ憲法改正だね」と言ったんだ。そしたら安倍さんは小声になって、『憲法改正する必要は全くありません』と。「なぜ?」と聞き返したら、「集団的自衛権の行使ができるようになったからです」と明言した。アメリカが、とにかくうるさくて、このままでは日米関係を維持できない。それで集団的自衛権の行使を決めたら、アメリカは満足して何も言わなくなったそうだ。だから憲法改正する必要はない、という理屈になるわけだ。

2016年9月に聞いた話だけれど、その翌年「憲法を改正する」と言った。 もっと言うと、集団的自衛権の行使をやるべきだと言ったのは元駐タイ大使の岡崎久彦氏。ちなみに祖父・岡崎邦輔氏も政治家で、近代外交の礎を築いた陸奥宗光とは従兄弟の関係にあるという。  
原作・佐々木芳郎、画・ぼうごなつこ『「安倍晋三」大研究』(KKベストセラーズ)p111より)
 
 

望月・・・岡崎さんと言えば、(2001年)頃、タカ派の貴公子として注目を浴びていた安倍さんに、目を付けたとされていますよね。『「安倍晋三」大研究』(KKベストセラーズ)の漫画「安倍晋三物語」の中で紹介したのですが、岡崎さんと、安全保障研究者の佐世昌盛氏が、安倍さんに集団的自衛権について“教育”をしたと。

 

田原・・・その通り、事実です。岡崎さんは、安倍さんに集団的自衛権の問題を片付けさせようと考えていた。本当は、小泉純一郎にやらせたかったようだが、小泉元首相は反対したようだ。

 
 安倍さんを始めとする政治家を教育するための教科書が、佐世昌盛氏の1973年の書籍『集団的自衛権』。実は佐世氏は、安倍さんが成蹊大学を入学する時に面接官を務めた人物で、当時は大学の助教授だった。
 
原作・佐々木芳郎、画・ぼうごなつこ、『「安倍晋三」大研究』(KKベストセラーズ)p115より
 
 
 その後の2004年、安倍さんは岡崎久彦氏と共著で『この国を守る決意』(扶桑社)を発刊。岡崎さんが本の中で「集団的自衛権はチャンスだ。自衛隊は戦争に参加出来るようになる」と話せば、て安倍さんも負けじと、「軍事同盟は血の同盟であって、日本人も血を流さねばアメリカと対等な関係になれない」と語っている。 (『「安倍晋三」大研究』 漫画p115より)
 

田原・・・アメリカは、極東問題として日本を守る責任があった。安保条約で、日本が攻められたらアメリカが守ることになっているが、アメリカが攻められても日本は何もしない。

しかし冷戦が終わって、アメリカは極東を守る責任が無くなった。そうすると、日米同盟を持続しようと思えば片務的条約となる。それで日本は慌てて集団的自衛権を成立させなければならなかったわけだ。岡崎さんは、「これで憲法改正の必要はない」と言ったそうだ。  
原作・佐々木芳郎、画・ぼうごなつこ、『「安倍晋三」大研究』(KKベストセラーズ)p53より
 

●日本は憲法改正を行うべきなのか? アメリカ、日本会議の影響は?

望月・・・安倍さんは、今の世論では憲法改正はできないと分かっていますよね。それでも憲法改正を掲げるのは、その旗を降ろした瞬間に自分を支えている日本会議のような人たちから、支持を得られなくなると思っているからですよね。

田原・・・そう、捨てられてしまうだろう。

望月・・・田原さんは、安倍さん自身に憲法を改正したいという思想はあると思われますか? 祖父の岸信介元首相の意志をついで、とか……。

田原・・・岸さんは関係ないと僕は思う。自衛隊ができたのは何年?

望月・・・陸上自衛隊の全身である警察予備隊の創立は1950年。そして、自衛隊が1954年に設立。

田原・・・自民党ができたのは1955年でしょ、最初の首相が鳩山一郎。鳩山一郎は、日本は憲法9条2項で戦力不保持、交戦権は所持しないとなっているが、自衛隊は明らかな戦力であり交戦権に当たるとして、憲法を改正しようとした。続く岸も憲法改正、ところが池田勇人内閣、その後の(安倍首相の大叔父に当たる)佐藤栄作内閣とそれ以降、誰一人として憲法改正を言わない。

僕は宮沢喜一に「池田さん、佐藤さんは?をついていることになる。憲法と
写真は、1988年のリクルート事件後、みそぎ選挙となった1990年衆議院選挙のため地元・福山を始め各地を回る故・宮澤喜一氏。                                      c) Yoshiro Sasaki 2019
 

自衛隊は明らかに矛盾している」と直言したことがあった。

宮沢さんは「違う」と。「日本人は自分の身体に合った洋服を作るのが下手だ」と言うんだ。宮沢さんらしい言い方だった。 宮澤さんは、「日本人は押し付けられたものに体を合わせるのは得意。自分に合うものを作ろうとしたのが満州事変(1931年)、日中戦争(1937年~45年)となった」と分析している。 押し付けられた洋服とは日本国憲法。あの憲法を押し付けられたために日本にはまともな軍隊は作れない。だから日本の安全保障はアメリカ頼みとなるという。 そしてアメリカの戦争に巻き込まれる。佐藤栄作内閣の時にベトナム戦争が始まった。アメリカは日本に、一緒にベトナムで戦おうと言ってきたそうだ。宮澤は、佐藤栄作がアメリカに「NO!」とは言えないことは分かっていた。そこで、「本当は行きたいが、難しい憲法を押し付けたのはアメリカじゃなかったのか」と言ってなんとかかわすこととなった。 それ以降、あの憲法を逆手にとってアメリカの戦争に巻き込まれないできたのが日本という国だ。 竹下登が総理大臣の時に質問した。「日本には自衛隊があるから戦えるだろう」と。そしたら竹下さんは、「だからいいんだ。だから日本は平和なんだ」とはにかんだ。竹下、宮澤は、こういう意見だった。  

望月・・・同時にアメリカも、こうした状況を「良し」としていたわけですね。アメリカはもはや日本はどうでも良くなった。そうして憲法改正発議の本丸は、アメリカから日本会議となったわけですね。

田原・・・安倍さんは憲法を改正できないと思っている。なぜならば憲法改正は、全政党が議論をしないと出来ないから。議論に立憲が絶対入らないことは、枝野代表に何度も確認している。下手に入れば立憲は自殺行為、そして共産党が入るはずもない。自民党はこれまで野党を騙しに騙して強行採決してきているからね。立憲と共産党が入らなければ議論はできない、ということだ。

織田信長から始まった日本の政治構造、ポスト安倍は誰?

望月・・・自民党内から、安倍4選、5選の話が出ています。二階俊博幹事長は、さかんにアナウンスしています。

田原・・・あり得ない! 僕は安倍さんに直接言った。「安倍自民党総裁4選は反対だ」と。安倍さんが、「どうしてか」と言うから、「今ですら自民党の半分は、安倍さんに寄りかかっている。4選なんかしたら自民党自体が体力を失ってガタガタの政党になってしまう」と返した。 そしたら安倍さんは、「良く分かっています」と言っていた。僕は二階さんや菅さんが安倍さん4選を言うのは、二階さんは幹事長を、菅さんは官房長官を続けたいから。安倍さんにいいこと言わないと続けられないからね。僕は、何にもないから言いたいことが言える。 望月・・・ポスト安倍の筆頭候補の一人として、今や、“令和おじさん”として一躍人気者になった菅さんが出て来ています。定例会見でも、「令和おじさんで首相候補筆頭ですね」と記者が聞いたりしています。 田原・・・辞任した菅原経産相、河井法務相は、菅官房長官人事だった。この人事ミスは菅さんにとっては痛いところだよね。

望月・・・小泉進次郎環境相の話にせよ、菅原前経産大臣の香典にせよ、「週刊誌だけで取れる情報かな?」と思ってしまいます。河合前法務大臣も現職の事務所関係者からのリークだけでなく、それとは別のルートで情報が出ている可能性もあると感じました。

田原・・・菅原辞任は秘書の裏切りでしょうね。

望月・・・菅総裁となると、安倍 vs 菅との話もありますが、小泉進次郎さんもポエム発言以降、やや失速した感があります。菅原さん、河井さんと辞任が続くと、「菅総裁へのけん制球なのかなとも感じます。権力が絡むと、菅さんでも釘が打たれる。政治の世界は魑魅魍魎(ちみもうりょう)だなと改めて感じます。

「政府があらゆる記録を国民に残すのは当然!」と2012年の自著で綴っていた菅氏。        『THE 独裁者』(KKベストセラーズp106より)            画・ぼうごなつこ
 

田原・・・僕はね、日本の政治は織田信長の頃からちっとも変わっていないと思う。つまり政治の世界は、勝つか負けるかということ。負けたら何を言っても弁解に過ぎない。勝つためにあらゆる手を使うのが政治家だ。織田信長は、敵を全部殺す。今は選挙民をどううまく説得するか、駆け引きが色々あるというわけだ。

望月・・・何のために勝つのか、というところがブレているような気がします。

田原・・・政治家は、自発性を失ったら終わりだと思う。長期安倍政権で、自民党には自浄作用がすっかりなくなってしまった。

望月・・・安倍政権でうまみのある人たちがぞくそく増えています……。手離したくないのだろうとは思いますが、政治家の矜持はどうなったのでしょう。

 
c) harada-besttimes 2019
 
 
 
田原総一朗(たはら・そういちろう) 1934年、滋賀県生まれ。 1960年早稲田大学卒業後、岩波映画製作所、東京12チャンネル(現テレビ東京)を経て、1977年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』などの番組でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。 1998年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学で、「大隈塾」を開講。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数。 著書多数、近著は『殺されても聞く』(朝日新書)。
 
望月衣塑子(もちづき・いそこ) 1975年、東京都出身。慶應義塾大学法学部卒。東京新聞記者。千葉、埼玉など各県警担当、東京地検特捜部担当を歴任。2004年、日本歯科医師連盟のヤミ献金疑惑の一連の事実をスクープし自民党と医療業界の利権構造を暴く。社会部でセクハラ問題、武器輸出、軍学共同、森友・加計問題などを取材。著書に『新聞記者』(角川新書)『THE独裁者』『「安倍晋三」大研究』(KKベストセラーズ)『安倍政治100のファクトチェック』(集英社新書)他。
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1 https://www.kk-bestsellers.com/articles/-/10963/ 466709 Fri, 13 Dec 2019 12:00:00 +0900 Fri, 29 May 2020 12:55:20 +0900 ]]>