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2010年代末、世界はみな疲れている(後編)

「疲れの三すくみ」の根源たる戦後平和主義を脱却できるか

■どちらに転んでもおっくうな時代

 まずは記事前編のおさらいと行きましょう。

(1)「疲」の字は本来「しゃんと直立できず、ぐったりと曲がってしまう」さまを表している。物事がいくら頑張っても思い通りに

 

ならず、失敗に終わってしまうとき、人は疲れてしまうのだ。

(2)国や社会のあり方をめぐる路線についても、人々は行き詰まりを感じれば疲れる。現在の世界で、そのような疲れを引き起こしている路線の代表格こそ、グローバリズム、および新自由主義にほかならない。

(3)こうして2010年代後半の世界では、グローバリズムに反発する動きが目立つようになった。普通に考えれば、これは人々がナショナリズムを志向するようになることを意味しよう。

(4)だが問題は、グローバリズムそのものが、20世紀前半に生じた「ナショナリズム疲れ」の産物としての性格を持つこと。新自由主義にしても、1970年代、経済の低迷に悩んだ自由主義諸国で、「福祉国家志向疲れ」が生じたことにより台頭した。

 すなわち、グローバリズムや新自由主義への疲れがたまっていたとしても、「これからはナショナリズムだ!」とか、「やはり福祉国家志向でなければ!」という意気込みは生じにくい。
 頑張ろうという意欲がわかず、物事に取り組む気が起こらないことを「おっくう」と申しますが、現在の世界は「どちらに転んでもおっくうな時代」を迎えている恐れが強いのです。
 ここ数年、反グローバリズムの動きが目立ったイギリス、アメリカ、ドイツについて、この点を検証してみましょう。

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佐藤 健志

さとう けんじ

佐藤健志(さとう・けんじ)
 1966年、東京生まれ。評論家・作家。東京大学教養学部卒業。
 1989年、戯曲『ブロークン・ジャパニーズ』で、文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を当時の最年少で受賞。1990年、最初の単行本となる小説『チングー・韓国の友人』(新潮社)を刊行した。
 1992年の『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』(文藝春秋)より、作劇術の観点から時代や社会を分析する独自の評論活動を展開。これは21世紀に入り、政治、経済、歴史、思想、文化などの多角的な切り口を融合した、戦後日本、さらには近代日本の本質をめぐる体系的探求へと成熟する。
 主著に『平和主義は貧困への道』(KKベストセラーズ)、『右の売国、左の亡国 2020s ファイナルカット』(経営科学出版)、『僕たちは戦後史を知らない』(祥伝社)、『バラバラ殺人の文明論』(PHP研究所)、『夢見られた近代』(NTT出版)、『本格保守宣言』(新潮新書)など。共著に『対論「炎上」日本のメカニズム』(文春新書)、『国家のツジツマ』( VNC)、訳書に『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』( PHP研究所)、『コモン・センス 完全版』(同)がある。『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』は2020年12月、文庫版としてリニューアルされた(PHP文庫。解説=中野剛志氏)。
 2019年いらい、経営科学出版よりオンライン講座を配信。『痛快! 戦後ニッポンの正体』全3巻に続き、現在は『佐藤健志のニッポン崩壊の研究』全3巻が制作されている。

 

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