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大井川鐵道の秘境駅めぐり

都会では味わえない変わった秘境の列車と駅

■秘境なのにまさかの民家が…

 電車は、その後、大井川を何回も渡り、金谷を出て1時間15分程で終点千頭に到着した。ここで井川線の列車に乗り換えるのだが、乗換時間は10分程しかない。井川線の車両にはトイレがないと聞いていたので、用を足して急いで井川線のホームへ向かう。平日のせいか、構内はそれほど混んでいなかったのでスムーズに乗換が出来た。もっとも、車内はかなりの人で、席がより取り見取りというわけではなかった。

千頭駅で井川線に乗り換え

 本線で乗ってきた電車よりもふた回りほど小ぶりのトロッコ風客車で編成されたミニ列車は、最後尾からディーゼル機関車が推進する形で発車となった。本線よりも格段にカーブが多く、のろのろと進む。このスローな走りっぷりが井川線の魅力である。

 車両基地のある川根両国を過ぎ、沢間の次は土本。秘境駅のひとつと聞いてはいたけれど、駅のすぐ脇に民家が何軒か建っている。これでは秘境感は乏しい。写真の撮り方によっては秘境に見えなくはないが、民家が至近距離にあるのでは興醒めだ。

 次の川根小山駅は、切り立った山にへばりつくに位置している。列車の行き違いのため何分か停車する。こちらの方が秘境感に満ちている。慌ただしく上り列車に乗り換えると千頭駅で新金谷行きSL列車に間に合うそうだ。時間がなく、ちょっとだけ井川線に乗りたい人には推奨の行程だとか。女性二人連れが下車し、千頭行きの列車に乗り換えていた。乗換損なうと何もないだけに悲惨な結果になりそうだ。

 次の奥泉駅は有名な寸又峡温泉への玄関駅ということで、乗り降りが結構あった。駅員もいて、秘境駅ばかりの井川線では例外的な駅である。ここからかなりの人が乗り込んできて小さな車内は満員となった。旅行会社のツアー客で、寸又峡温泉から次の目的地に向かうためにこの列車に乗ったようだ。

 

 次のアプトいちしろ駅は、その名のようにアプト式鉄道の始まりの駅だ。この先に90‰(パーミル)というとんでもない急勾配が控えていて、ふつうのやり方では列車が登れないので、最後尾にアプト式の電気機関車を2両連結する。機関車の下部にある歯車を線路の真ん中に設置されたラックレールの歯形に噛み合わせて上り下りするのがアプト式のシステムである。その機関車連結のためにあるような駅で、乗客は連結作業見学のためにホームに降りる。ここから次の駅までが電化区間で、ダム建設により一部区間が水没したので、ルート変更のため1990年に開業した比較的新しい駅なのだ。人の乗り降りはないので秘境駅とも言えるが、さみしい感じはしない。

アプト式電気機関車

 巨大な長島ダムを見ながら列車は急勾配をのぼり、長島ダム駅に到着。ここでアプト式区間は終わり、電気機関車は切り離される。身軽となった列車は、再びディーゼル機関車に押されて走りだす。乗客の乗り降りがない秘境駅のひらんだ駅を過ぎ、いよいよダムで堰きとめられてできた人造湖を渡る。レインボーブリッジというどこかで聞いたことのあるような橋の名前だが、その真ん中に小さな岬のように河岸から飛び出た土地があり、そこに奥大井湖上駅がある。絶景観賞やハイキング客が乗り降りするための駅で、周囲に何もないという意味では異色の秘境駅だ。奥泉から大挙乗ってきたツアー客はここで全員下車。ホームは大賑わいだが、車内はすっかり閑散としてしまった。歩道のあるレインボーブリッジを渡りきるとトンネルに入り、しばらくすると接岨峡温泉駅に着く。ここで温泉目当ての客が降りると、車内はいよいよ淋しくなった。

車窓から見える長島ダム

奥大井湖上駅のホーム
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