前田裕二×藤田田、新旧起業家の共通点は「圧倒的メモ魔」
SHOWROOM社長と日本マクドナルド創業者。そのメモ術がすさまじい。
■メモは「雑学の吸収」
メモをとることは、人生を豊かにするためには欠かせない「雑学の吸収」ということでもある。自分は法律だけ知っていればいい、経済学だけ知っていればいい、というのではなくて、世の中のありとあらゆることを知っていなければ、人生は豊かにならないし、仕事を成功させることもできないのである。
その一例をあげてみよう。
マクドナルドの売上げが甲府でとてもいい成績なので、その理由をいろいろな人に訊ねてみたことがある。「甲府は盆地だから」とか「東京から100キロはなれていて、東京に買い物に来ないからだ」とか、いろんな答えがかえってきたが、わたしにはいまひとつ納得できない。調べてみた。甲府が幕府の天領だったからだという答えが出た。
ことに甲府は「飲み屋の数が日本一多い」ところでもある。武田信玄いらいの金山があったので幕府は天領にしたのだ。
いまはテレビが全国均一化し、県民性などは薄れてきたというが、徳川幕府以来の「習慣」は牢固(ろう こ)としてぬきがたいものがあるのだ。
天領というのは直轄領地だから、江戸から送ってきた金で代官が統治していた。親方日の丸である。だから天領の住民には勤倹貯蓄といったふうはなくて、ある金を全部使ってしまう。その最たるものが将軍のお膝元である江戸だ。だから江戸っ子は「宵越しの金を持たねえ」とタンカを切りえたのだ。
江戸や甲府だけではない。マクドナルドがいい成績をあげている新潟、福島、大阪、長崎はみな幕府の天領だった。新潟で「名物はなんですか?」と問うと「山に生えている杉の木です」という。新潟は佐渡の金山があるので天領だったから、それ以外の「なにか」をつくる必要がなかったのだ。だから山に自生している杉の木だというほど名物はなにもない。
7月(1996年)、トイザ“ら”ス水戸店を開店するとき、社内ディスカッションでは「水戸は東京と離れている田舎だから売れないでしょう」という意見が多かったが、わたしは「いや、売れる」と主張した。いざ、ふたをあけてみると、1日で1800万円の売上げをあげた。