新皇后のご負担を案じる。来年開催予定の大嘗祭は超ハードだ |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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新皇后のご負担を案じる。来年開催予定の大嘗祭は超ハードだ

即位の前に知っておきたい、新天皇の「お仕事」③

■厳粛な大嘗祭は晩秋に京都で斎行が望ましい

 では、今回どうなるのでしょうか。それは大嘗祭の斎行場所を東京とするか京都にするかで変わってきます。いずれにしても、神饌用のお米と粟を耕作し献納する二ヶ所の地方は、日本全体を代表して、おおよそ東日本と西日本から選ばれることに意味があります。

 この悠紀・主基両地方の斎田で作られたお米と粟は、9月下旬から10月上旬ころ、古式どおりに「技穂」の形で収穫され、 10月下旬に大嘗宮の斎庫に納められます。また、それとは別に、全国の都道府県から、さまざまの特産品(平成の場合およそ2百品目)が供進され、大嘗宮に「庭積机代物」として供えられます。

 大嘗祭とはそもそも、毎年11月23日夜、皇居の神嘉殿で斎行される新嘗祭と本賀的に同じような祭儀です。ただ、それを天皇の代替り初めに、新しく造立される大嘗宮において、平年よりも多くの神饌を神々に供えられ、そのおさがり(神々からの贈り物=たべもの)を自ら召しあがられる大祭です。

 それを神秘的に解釈して、この祭儀により「天皇霊」を受け継がれる、というようなことを強調している論者が少なくありません。しかし、皇統を世襲される天皇は、祖先や自然の神々を祀り、国家の安泰と国民の安寧を祀られる至高の尊者(至尊)です。 

 従って、御代始めの大嘗祭においても、人々が生きていくのに不可欠な穀物(その代表が水田からとれるお米と、陸田でとれる粟)を、特別に悠紀(東日本)と主基(西日本)の斎田で収穫し、丁寧に神饌として供進・共食されることによって、祖先と自然の神々に感謝され、国家の安寧と国民の安寧を祈願されるところに本質的な意味がある、と解してよいだろうと考えております。

 この大嘗祭は、⑰が午後6時すぎから9時半ころまで、東側の悠紀殿において行われ、しばらく休まれた後、⑱が翌午前0時半から3時半ころまで、西側の主基殿において同様の祭儀が行われます

 続いて、⑲が翌日から翌々日にかけて3回「大饗の儀」を催されます。平成の場合は宮殿で行われましたが、もし京都で行われる場合、たとえば御所脇の京都迎賓館あたりを使われることになるかもしれません。

 一連の行事はこの後も㉑〜㉖が約10日間続きます。それらは新しい皇后陛下もご一緒されることになっていますから、本当に大変だろうと思われますが、どうかつつがなく行われることを今から念じております。

写真:AP/アフロ

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所 功

ところ いさお

名古屋大学史学科・同大学院修士課程卒業。法学博士(慶大)。文部省教科書調査官を経て、京都産業大学名誉教授、モラロジー研究所研究主幹。著者に『皇位継承のあり方』(PHP新書)など、共著に『元号』『皇位継承』(ともに文春新書)など、編著に『日本年号史大辞典』(雄山閣)など。


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