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社内不倫生活から逃れるために婚活する「元女優」と出会う【石神賢介】

「57歳で婚活したらすごかった」世にも奇妙な婚活体験記②【石神賢介】

 

■既婚者になった彼といまだに会っている理由

 

 彼から毎日LINEで届くという写真を見せてもらった。スマホの画面で、夏でもないのに日焼けした上半身裸のマッチョな男が大胸筋を強調させ、ボディビルダーのようなポーズで写っている。

「今日のオレ」

 写真とともにコメントされていた。それ以外、ご機嫌うかがいや近況報告のような文はない。彼は自分のことが大好きなのだろう。

 彼女がスマホをスクロールすると、前日も前々日も同じアングルで同じポーズの写真が届いていた。やはり「今日のオレ」とある。

「今日の〝今日のオレ〟も、昨日の〝今日のオレ〟も一昨日も同じに見えるけど」

「彼によると胸の筋肉の張りが微妙に違うんだって」

「マイさん、わかるの?」

「わかりませーん」

〝今日のオレ〟はマイさんだけでなく、複数の女性に送信されていたのかもしれない。

 既婚者になった彼といまだに会っている理由は、ベッドでの相性がいいこと、一緒にいるときは優しいこと、そして、別れたら、会わなくなった時間を埋めるものがほかにはないからだという。

「マイちゃん、今の生活を変えるために、婚活パーティーに参加してるんだ。でも、まだ彼よりも魅力のある男の人には会えていないの」

夜ごと送られるセミヌード写真

 マイさんの結婚や恋愛がうまくいかない理由はすぐにわかった。翌日から毎夜、彼女からLINEでメッセージがきた。

「今、何してまちゅかあ?」

 なぜか赤ちゃん言葉だ。用件はない。こちらは原稿に集中しているので、気づかないことも、レスポンスできないこともある。すると、電話がかかってくる。

「なんでマイちゃんのLINEに返事をくれないわけ?」

 責める口調だ。

 既読スルーしたら、激怒の電話がくる。

「どういうことなの!」

 あとでレスポンスするつもりだった、などと言い訳をすると、怒りは増幅する。

「この麗しいマイちゃんが、ひと回り以上年上のオジサンにLINEしてあげてるのに! あり得ない!」

 しかし、マイさんとは交際しているわけではないし、手もつないでいない。バツニの理由について、彼女は夫の束縛がきつかったと言ったが、相手が彼女の「今、何してまちゅかあ?」攻撃に耐えられなかったのではないか。

 やがて彼女は自分の写真を送ってくるようになった。微妙なヌードだ。裸だということだけがわかる。ただし、肝心なところを隠していたり、バスルームの湯けむりでくもった鏡に映ったぼやけた全裸だったり。写真の後、すぐに彼女は電話をかけてくる。

「興奮した?」

「なんで裸の写真をくれるの?」

「べちゅにい~。もっと見えるのがほしい?」

「ぜひ」

「どうしようかなあ……。送ろうかなあ……」

「お願いします」

「やっぱりやめておきまちゅ」

 そんな不毛なやり取りを重ねた。

 

(第3回へ つづく)

 

※石神賢介著57歳で婚活したらすごかった』(新潮新書)から本文一部抜粋して構成

 

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石神賢介

いしがみ けんすけ

ライター

婚活ジャーナリスト

1962年生まれ、東京出身。婚活アプリ、婚活パーティー、結婚相談所、婚活バスツアー、座禅婚活など、約30年にわたり、あらゆる婚活にトライ。食事やお茶などをともにした女性は300人を超える。女性にブランド品を買わされても、「ジジイ!」と罵られてもめげず、会社員、女優、モデル、銀座のホステス、ドクターなどと交際。しかし、結婚にいたっていない。著書に『57歳で婚活したら すごかった』『婚活したら すごかった』(以上、新潮新書)、『すべての婚活やってみました』(小学館新書)、『アラフィフ婚活』(飛鳥新社)、『なぜ「スマ婚」はヒットしたのか 誰もが挙式できる世の中に』(幻冬舎)がある。

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石神賢介著  最新刊 2023719日発売

婚活中毒

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