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遊女は「指切り」で真実を伝える、のウソ

吉原の舞台裏を覗く 第39回

江戸時代に遊郭が設置され繁栄した吉原。その舞台裏を覗きつつ、遊女の実像や当時の大衆文化に迫る連載。

■「指切り」は本当に存在したのか

 遊女は多くの男に身を任す境遇だけに、客の男と恋愛関係になったとき、自分の真情を述べても、なかなか信じてもらえない。そんなとき、遊女は小指の先端を切断して男に渡し、信実を伝えたという。いわゆる、指切りである。

 吉原について書いた本はしばしば指切りに言及しているが、史料的な証拠はいっさいない。つまり、過去の吉原に関する本からの孫引きを繰り返していることになろう。

 常識で考えてみよう。

 もし、あなたがフーゾク嬢と恋愛関係になったとしよう。感情の行き違いから喧嘩になったとき、彼女が自分の信実を示すため、包丁で小指の先端を切断しようとしたら、あなたはそれを認めるだろうか。
 あなたは絶対に止めるはずである。本当に愛していれば、女が傷物になるなど耐えられないはずではなかろうか。

 

写真を拡大 図1『九替十年色地獄』(山東京伝著、寛政3年)

 図1は、遊女がまさに指切りをしようとしているところ。絵だけ見ると、たしかにリアルである。ところが、肝心の遊女は、
「ついでに、この血で出来合いの起請を2、3枚、書いておきんしょう」
 と、のんきなことを述べている。 
 つまり、場面そのものが、おふざけなのである。
 では、戯作などにはどう描かれているであろうか。

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永井 義男

ながい よしお

小説家、江戸文化評論家。1997年『算学奇人伝』で開高健賞受賞。時代小説のほか、江戸文化に関する評論も数多い。著書に『江戸の糞尿学』(作品社)、図説吉原事典(朝日新聞出版)、江戸の性語辞典(朝日新聞出版)など。


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