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「57歳で婚活したらすごかった」世にも奇妙な婚活体験記【石神賢介】

『57歳で婚活したらすごかった』著者・石神賢介のリアル婚活リポート 第1回


コロナ禍で少子化が10年進んだと言われる。一方で結婚相手を求める男女は増えているようだ。実際に婚活アプリなどの利用者は男女ともに増加傾向。いま婚活市場は一体どうなっているのか?  40代のころの婚活体験を綴った『婚活したらすごかった』(新潮新書)がベストセラーになり、婚活をライフワークにしつつ、今も本気で結婚したいと願う現在57歳・バツイチのライター石神賢介氏。最新刊57歳で婚活したらすごかった』(新潮新書)の内容が面白すぎると話題になっている。「事実は小説より奇なり」。まさにこの魑魅魍魎の婚活市場にいえることかもしれない。そんな石神氏の婚活リアルレポートをお届けする!


 

■少人数化が進む婚活パーティー

 

〈クラブ・マリッジ(仮称)主催のパーティー会場は3階です〉

 青山の小さなホテルの入り口に案内板が置かれていた。

 エントランスホール右手のエレベーターで3階へ上がる。廊下を進むと受付があり、男女それぞれの参加者が列を作っていた。

 土曜日の夜、久しぶりに参加する婚活パーティーである。40代後半から50代前半にかけては、こうしたパーティーに狂ったように参加していた。

 男性の列の最後尾に並ぶ。パーティー参加費は、男性が5000円、女性が2000円。男女の所得格差に応じた価格設定なのだろう。

 木製のカウンターの中には濃いえんじ色のパンツスーツの女性スタッフが立ち、手際よく男性参加者の受付作業を行っている。30代前半だろうか。ウェイヴのかかった髪に照明が当たり陰影を描き、髪量を豊富に見せている。この人がパーティーの参加者ならいいのに、と思った。その傍らの女性参加者用の受付は細身で長身の男性スタッフだ。

 順番が来て会費を支払うと、安全ピンで胸につける番号札、プロフィールを記入する用紙、個人を特定できないように女性参加者の名前がカタカナで印刷された名簿、ボールペンを手渡された。番号は9番だった。

「テーブルに9と表示された席にお座りになって、プロフィール用紙にお名前やご趣味などをご記入ください。パーティーで女性と交換して会話していただきます。お話のきっかけになる紙なので、できるだけ詳しくお願いいたします」

 名簿にある女性の数は10人。男性参加者も同数だとすると合わせて20人だ。

 10年ほど前は男女各20人で40人規模のパーティーが主流だった。20人対20人で対面に座り、男性が時計まわりにスライドして全員と会話をする。まるで回転寿司店だった。女性参加者は客で、その前を男性参加者が寿司ネタのように回ってくる。

 その後のフリータイムで気に入った相手と再度会話。おたがいが気に入れば電話番号やメールアドレスを交換するシステムだ。パーティー会場は密集し、隣の男のトークで、目の前の女性の声が聴き取れないほどだった。

 しかし、2010年代後半あたりからは10人対10人くらいの、以前と比べるとハーフサイズのパーティーが主流になりつつある。人数が少ない分、一人との会話時間が長い。そしてスペースに余裕があり、隣との間隔が空くので、周囲を気にせずに会話ができる。男女一組ずつに個室を用意したり、パーティションで仕切ったりと工夫するパーティーもある。このタイプのパーティーはフリータイムがない。婚活パーティーとはいうものの、いわゆるパーティー形式ではない。

 会場に入ると、すでに半数以上の男女が着席していた。低音量でバラードナンバー、「カリフォルニア・キング・ベッド」が流れている。キングサイズのベッドで愛し合う男女をアメリカ人女性シンガー、リアーナが歌っている。ヴォーカルに寄り添うようなギターが心地よく響く。

 テーブルが10台、ぐるりと壁に向かうように間隔を空けて置かれている。それぞれに男女が並んで座るセッティングだ。そこにいる誰もが無言でボールペンを動かし、プロフィール用紙に記入をしていた。

 ざっと見まわしたところ、女性参加者は皆服装に気をつかっている。結婚相談所のプロフィール写真のように、ワンピース派とスーツ派がいる。白が多い。

 男性参加者は女性と比べると服装には無頓着だ。綿のパンツか、ダボッとしたデニムが目立つ。ジャケットを着ている男は少数派で、シャツかセーターが多い。コートやダウンジャケットをはおって来たのだろう。

 9番のテーブルに座ると、横にはすでに女性が着席していた。大きな瞳、長いまつ毛、整った鼻筋。ショートヘアで、黄色のジャケットの下の白いTシャツから、はちきれそうに胸が主張している。大きいというよりも、巨大だ。軽く会釈をすると、相手もにっこりと会釈をかえしてくれた。すでにプロフィールを記入し終えている様子だ。

 僕もプロフィール用紙を記入する。名前、年齢、出身都道府県、居住都道府県、星座、身長、体重、職業、学歴、婚歴、家族構成、喫煙の有無、飲酒の量、年収、趣味、自分の長所、好みの女性のタイプ……。結婚相談所に提出した資料とほぼ同じ項目だった。ただし、独身証明書や年収を証明する書類の提出までは求められない。

 年収欄を記入しようとしてふと手が止まった。せこい考えがうかんだ。100万円上乗せして書いてしまおうか――。100万円足せば1000万円を超える。女性へのインパクトは強くなるだろう。僕の年収は僕しか知らない。しかし、思いとどまった。良心がとがめたのではない。ここにいる女性の誰かと縁があったら――。後で事実を打ち明ける自信がなかった。

 音楽がフェイドアウトした。

「こんにちは。本日は、ご多忙の中、当社、クラブ・マリッジのパーティーにご参加いただき、まことにありがとうございます。私、司会を務めさせていただくニカイドウミカゲと申します。最後までよろしくお願い申し上げます」

 受付にいたえんじの女性がマイクを手に挨拶をした。司会も担当するらしい。これまでに何百回も同じことをくり返しているのだろう。パーティーの流れや注意事項の説明がよどみない。

 彼女の説明によると、パーティーはトータルで約1時間15分だ。自筆のプロフィールを男女で交換して会話を行う。5分経過すると、男性が隣のテーブルへ移動し、そこで待つ女性と会話をする。パートナーを替えながら10回動くと、男性は全女性と、女性は全男性と会話できる。

 その後、気に入った相手の番号を指定の用紙に記入して提出。スタッフの集計によって相思相愛の関係になると、退出時にそれぞれに伝えられ、後は自由恋愛だ。連絡先を交換しても、帰りに食事に行ってもいい。

 

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石神賢介

いしがみ けんすけ

ライター

婚活ジャーナリスト

1962年生まれ、東京出身。婚活アプリ、婚活パーティー、結婚相談所、婚活バスツアー、座禅婚活など、約30年にわたり、あらゆる婚活にトライ。食事やお茶などをともにした女性は300人を超える。女性にブランド品を買わされても、「ジジイ!」と罵られてもめげず、会社員、女優、モデル、銀座のホステス、ドクターなどと交際。しかし、結婚にいたっていない。著書に『57歳で婚活したら すごかった』『婚活したら すごかった』(以上、新潮新書)、『すべての婚活やってみました』(小学館新書)、『アラフィフ婚活』(飛鳥新社)、『なぜ「スマ婚」はヒットしたのか 誰もが挙式できる世の中に』(幻冬舎)がある。

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婚活中毒

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