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ブラック企業は「見做し労働」でトコトン搾り取る

社会という荒野を生きる①

■非正規労働者の見做し労働という地獄

 繰り返すと労働組合を作ることが大事ですが、労働組合の結成は非正規労働者にとってハードルが高く、問題が深刻になりがちです。ちなみに、今回のABCマートの件は、昔から知られているタイプの「正規労働者の終身雇用を前提とした長時間サービス残業」です。

 むしろ深刻化しているのは、「非正規雇用を前提とした見做し労働(裁量労働)の押しつけ」です。非正規労働者と雇用者の間ではサブロク協定を締結できず、サービス残業は違法です。しかしそこに「見做し労働の押しつけ」がなされる。今日的なブラック企業です。

 見做し労働はこの後で説明しますが、これについて、非正規労働者が戦うための有効な手段がなかなかない。個人でも入れるユニオン(労働組合)が一部にあるので、一人で悩まずにユニオンに入り、ユニオンを通し交渉するようにして交渉力を上げる必要があります。

 今は工場で労働集約的集団作業をする人はごく一部です。取材してアイディアを練るマスコミ人や、僕みたいな研究者は、食事中に頭を使ったり仕事中に頭を休めたりして労働時間を厳密に計れないから、労働時間を自分の裁量で決めるしかない。これが見做し労働です。

 ところが昨今、見做し労働の範囲を不当に拡張して、とりわけサブロク協定を結べない非正規労働者に長時間勤務を強制する動きがあります。これをどうチェックできるか。これも最終的には労働組合を作って団体交渉し協定書を残さないと、チェックは難しい。

 
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宮台 真司

みやだい しんじ

1959年宮城県生まれ。社会学者。映画批評家。首都大学東京教授。公共政策プラットフォーム研究評議員。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。社会学博士。1995年からTBSラジオ『荒川強啓 デイ・キャッチ!』の金曜コメンテーターを務める。社会学的知見をもとに、ニュースや事件を読み解き、解説する内容が好評を得ている。主な著書に『私たちはどこから来て、どこへ行くのか』『日本の難点』(幻冬舎)、『14歳からの社会学』(世界文化社、ちくま文庫)、『正義から享楽へ 映画は近代の幻を暴く』(bluePrint)、『子育て指南書 ウンコのおじさん』(共著、ジャパンマシニスト社)、『どうすれば愛しあえるの 幸せな性愛のヒント』(共著、KKベストセラーズ)など著書多数。


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