【夫婦のセックスレスが増加している「日本的背景」】 | BEST TiMESコラム

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夫婦のセックスレスが増加している「日本的背景」

社会という荒野を生きる②

■「リスク回避」と「めまい回避」という背景

 理由の第二は、「草食化」と呼ばれる傾向。「自分には性欲がない」と自己申告するタイプの男子たちを言います。よく覚えているんですけど、1990年に「性欲がない」という男子学生たちがキャンパスに陸続と出てきたんですね。

 最初は東大の医学部生との立ち話でした。「雑魚寝しても何もない」と言うんで、「んな訳ねえだろ。雑魚寝したら、とりあえず『する?』みたいに尋ねなきゃ、失礼じゃないか」と言ったら、「はあ? そんな訳ないじゃないですか」と周囲の学生たちが続々参戦(笑)。

 哺乳類の多くの種で精子が減少している昨今なので、社会学的な理由以前のものがあるかもしれません。ここでは「草食化」の理由をあえて社会学的に推定するとしますと、コミュニケーションの失敗を事前に取り除く「リスク回避」が考えられます。

 

「リスク回避」の背景に、コミュニケーションが「肝胆相照らすもの」から「場つなぎ的なもの」にシフトしてきた、という経緯があります。その結果、コミュニケーションの失敗が、かつてよりも過大に受け止められるようになったんですね。

 さて「草食化」の、もう一つの社会学的背景が、「めまいの回避」です。めまいは、僕のワークショップでは「変性意識状態」と呼んでいて、性愛のキーだと告げています。若い人たちは、これを結構嫌がるんですよ。忘我の状態を避けたがる、ということです。

 セックスの醍醐味って何だと思いますか? めまいです。我を忘れること。僕の言葉で言えば〈ここ〉から〈ここではないどこか〉に出かけること。ハイデガーの脱目(エクスタシス)。フロイトがエロスとタナトスの近さを語ったことにも、関連します。

 そう。人は、現実を忘れるために、セックスをするんです。ところが、昨今の若い人たちは「リア充」とか言うでしょう。馬鹿じゃねえの? リアルというクソから逃避するために、セックスするに決まってるだろ。何考えてんだ、ボケ!

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宮台 真司

みやだい しんじ

1959年宮城県生まれ。社会学者。映画批評家。首都大学東京教授。公共政策プラットフォーム研究評議員。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。社会学博士。1995年からTBSラジオ『荒川強啓 デイ・キャッチ!』の金曜コメンテーターを務める。社会学的知見をもとに、ニュースや事件を読み解き、解説する内容が好評を得ている。主な著書に『私たちはどこから来て、どこへ行くのか』『日本の難点』(幻冬舎)、『14歳からの社会学』(世界文化社、ちくま文庫)、『正義から享楽へ 映画は近代の幻を暴く』(bluePrint)、『子育て指南書 ウンコのおじさん』(共著、ジャパンマシニスト社)、『どうすれば愛しあえるの 幸せな性愛のヒント』(共著、KKベストセラーズ)など著書多数。


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