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III号戦車の基本的な構造

精強ドイツ装甲部隊を支えた傑作戦車②

■原点たりえた乗員配置

 また、III号戦車の乗員配置は、その後の世界中の戦車の乗員配置の原点となるものだった。

 III号戦車の乗員は、車体前部の左側に操縦手、右側に通信手兼車体銃手、砲塔内の左側に砲手、右側に装填手、後部中央に車長の計5名が配されている。当時の多くの戦車は、乗員の一部または全員がひとり二役だったため、1両の乗員数は2~4名だったが、III号戦車ではひとり一役となった結果、運用効率の著しい向上が得られた。特に、戦況全般を見渡しながら自車を指揮する車長が独立したことの効果が大きかった。

 それに加えて、各人がそれぞれの役割の専属となることで担当任務の習熟性が向上し、操作する機器の保守管理や整備に深く精通できるだけでなく、全車的な整備保守点検時に必要とされる「頭数・目数・手数・足数」や、野営時の交代制歩哨任務といった「ヒューマン・ファクター(主に人数が多いこと)の利点」も、5名という乗員数が良好な結果を生むことになった。

 さて、かような次第だが、では、実戦におけるIII号戦車はどうだったのだろうか?

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白石 光

しらいし ひかる

戦史研究家。1969年、東京都生まれ。戦車、航空機、艦船などの兵器をはじめ、戦術、作戦に関する造詣も深い。主な著書に『図解マスター・戦車』(学研パブリック)、『真珠湾奇襲1941.12.8』(大日本絵画)など。


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