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III号戦車の背景。近代ドイツ戦車事始め

精強ドイツ装甲部隊を支えた傑作戦車①

■秘匿名称の下に開発が進められたIII号戦車

 そして第一弾となったのが、機銃装備のI号戦車を主力に据えて、炸裂して弾片効果を発揮する榴弾と装甲を貫く徹甲弾の両方が撃てる20mm機関砲を搭載したII号戦車が、I号戦車を支援するという組み合わせだった。同時に、I号戦車は第一次大戦後初の国産戦車を生産するという意味での習作であり、運用面では、戦車に慣れ親しむための訓練用という意味も課せられていた。

 実は後年、I号戦車を評する際に、この「主力戦車」ながら「習作で訓練用」という二面性のうち、後者のみがクローズアップされてしまったことで、「I号戦車=訓練用戦車」として広く誤解されてしまった。しかし、I号戦車とII号戦車が登場した当時は、主力戦車は防御陣地にこもる歩兵をなぎ倒せればそれでよいという観点から機銃装備で十分であり、敵の戦車や堅固なトーチカなどを叩かねばならなくなったら、II号戦車の20mm機関砲程度で間に合うというのが世界水準だった。とはいえ、戦車技術は日進月歩であり、この組み合わせが早々に陳腐化することはドイツ陸軍も理解していた。

 そこでI号戦車とII号戦車の組み合わせに代わる、新しい主力戦車と支援戦車の組み合わせが発案された。それが、III号戦車を主力戦車とし、IV号戦車を支援戦車とする計画である。

 このうち、次期主力戦車たるIII号戦車の開発計画は1935年にはすでにオファーされ、「小隊長車(Zugführerwagen:略号ZW))」の秘匿名称の下に開発が進められた。

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白石 光

しらいし ひかる

戦史研究家。1969年、東京都生まれ。戦車、航空機、艦船などの兵器をはじめ、戦術、作戦に関する造詣も深い。主な著書に『図解マスター・戦車』(学研パブリック)、『真珠湾奇襲1941.12.8』(大日本絵画)など。


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