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消費増税と「エリートの反逆」〈後編〉

自殺を逃れようとして、別の形での自殺を選んでしまった!

 

■格差拡大を望む日本人

 
 

 前編でもお話ししたように、わが国では消費増税について「心情的にはイヤだが必要なこと」という受け止め方が一般的です。2017年、安倍総理は税率引き上げを公約に掲げて、解散・総選挙に打って出ましたが、自民党は大勝を収めました。

 ならば、なぜ消費増税は(経済を確実に冷え込ませるにもかかわらず)必要と見なされるのか? これにたいする答えは、「社会保障の財源確保のため」となるでしょう。

 とはいえ財源確保のための増税なら、所得税や法人税を上げる手もあります。他方、所得税には累進性、つまり高所得層ほど負担が重くなる特徴があるのにたいし(法人税も累進性こそありませんが、中小企業の所得の一部には軽減税率が適用されます)、消費税はあらゆる層にまんべんなく課税されるため、低所得層ほど負担の度合いが重くなる。

 そんな税が強化されれば、格差は当然、拡大します。すなわち所得税や法人税よりも、消費税を引き上げようとする姿勢には、「高所得層や企業の負担が増えるくらいなら、社会的格差が拡大したほうがマシ」という発想がひそんでいるのです。
 この発想、社会全体を不安定にしかねません。なのになぜ、消費増税必要論が広く受け入れられているのでしょう?

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佐藤 健志

さとう けんじ

佐藤健志(さとう・けんじ)
 1966年、東京生まれ。評論家・作家。東京大学教養学部卒業。
 1989年、戯曲『ブロークン・ジャパニーズ』で、文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を当時の最年少で受賞。1990年、最初の単行本となる小説『チングー・韓国の友人』(新潮社)を刊行した。
 1992年の『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』(文藝春秋)より、作劇術の観点から時代や社会を分析する独自の評論活動を展開。これは21世紀に入り、政治、経済、歴史、思想、文化などの多角的な切り口を融合した、戦後日本、さらには近代日本の本質をめぐる体系的探求へと成熟する。
 主著に『平和主義は貧困への道』(KKベストセラーズ)、『右の売国、左の亡国 2020s ファイナルカット』(経営科学出版)、『僕たちは戦後史を知らない』(祥伝社)、『バラバラ殺人の文明論』(PHP研究所)、『夢見られた近代』(NTT出版)、『本格保守宣言』(新潮新書)など。共著に『対論「炎上」日本のメカニズム』(文春新書)、『国家のツジツマ』( VNC)、訳書に『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』( PHP研究所)、『コモン・センス 完全版』(同)がある。『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』は2020年12月、文庫版としてリニューアルされた(PHP文庫。解説=中野剛志氏)。
 2019年いらい、経営科学出版よりオンライン講座を配信。『痛快! 戦後ニッポンの正体』全3巻に続き、現在は『佐藤健志のニッポン崩壊の研究』全3巻が制作されている。

 

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  • 2018.09.15