消費増税と「エリートの反逆」〈前編〉 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

消費増税と「エリートの反逆」〈前編〉

「消費税10%」で心配される格差拡大

■景気悪化か社会保障かの二者択一

 論より証拠、わが国がデフレ不況に突入したのは、消費税が5%に引き上げられた1997年だったのです。むろんこれには、同年に発生したアジア通貨危機も影響していますが、税率引き上げが響かなかったはずはない。国民の平均所得も、この年を境に下降線をたどりはじめました。

 2014年に行われた8%の引き上げが、安倍内閣の経済政策、通称「アベノミクス」の勢いを削(そ)いでしまったこともしばしば指摘されます。おまけに2019年からは、働き方改革による残業規制の施行が始まるため、多くの勤労者の所得が減少する恐れが強い。

 あまつさえ2020年、オリンピック大会が終われば、関連の需要がなくなるため、景気はまず確実に悪化します。前回のオリンピック大会が終わったあとも、わが国は不況に見舞われ、政府が戦後初の赤字国債を発行したくらいなのです。

 

 これらの問題を上回るだけの巨大なメリットがなければ、現時点での消費増税は肯定できません。ならば、そのメリット(とされているもの)は何なのか?

 10%引き上げの決意表明にあたり、安倍総理が「社会保障を全世代型に転換するための財源を確保するため」という旨を述べたことを思えば、答えは明らかでしょう。現在のわが国では少子化や高齢化が進行していますし、政府の負債をこれ以上増やすべきではないとする風潮が支配的。そんな中、社会保障の財源を確保するには、消費税の強化以外にないというわけです。

 さしずめ、景気悪化か社会保障かの二者択一。これが正しければ、10%引き上げもやむをえないかも知れません。

 しかし、本当のところはどうでしょうか?

次のページ消費増税肯定の根底にあるもの

KEYWORDS:

オススメ記事

佐藤 健志

さとう けんじ

佐藤健志(さとう・けんじ)
 1966年、東京生まれ。評論家・作家。東京大学教養学部卒業。
 1989年、戯曲『ブロークン・ジャパニーズ』で、文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を当時の最年少で受賞。1990年、最初の単行本となる小説『チングー・韓国の友人』(新潮社)を刊行した。
 1992年の『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』(文藝春秋)より、作劇術の観点から時代や社会を分析する独自の評論活動を展開。これは21世紀に入り、政治、経済、歴史、思想、文化などの多角的な切り口を融合した、戦後日本、さらには近代日本の本質をめぐる体系的探求へと成熟する。
 主著に『平和主義は貧困への道』(KKベストセラーズ)、『右の売国、左の亡国 2020s ファイナルカット』(経営科学出版)、『僕たちは戦後史を知らない』(祥伝社)、『バラバラ殺人の文明論』(PHP研究所)、『夢見られた近代』(NTT出版)、『本格保守宣言』(新潮新書)など。共著に『対論「炎上」日本のメカニズム』(文春新書)、『国家のツジツマ』( VNC)、訳書に『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』( PHP研究所)、『コモン・センス 完全版』(同)がある。『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』は2020年12月、文庫版としてリニューアルされた(PHP文庫。解説=中野剛志氏)。
 2019年いらい、経営科学出版よりオンライン講座を配信。『痛快! 戦後ニッポンの正体』全3巻に続き、現在は『佐藤健志のニッポン崩壊の研究』全3巻が制作されている。

 

この著者の記事一覧

RELATED BOOKS -関連書籍-

平和主義は貧困への道 または対米従属の爽快な末路
平和主義は貧困への道 または対米従属の爽快な末路
  • 佐藤 健志
  • 2018.09.15