痩せたい、でも楽したい。平成ダイエット狂騒史 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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痩せたい、でも楽したい。平成ダイエット狂騒史

キーワードで振り返る平成30年史 第20回

■「燃やせばいい系」ダイエット

 さて今度は運動系のダイエット、食べた分だけ燃やせばいい系のダイエットを振り返ろう。ここでも楽して痩せたいという大きな矛盾がダイエッター達に立ちはだかる。人類とカロリーの戦いは如何に。

 平成に入ると深夜を中心にテレビショッピングの枠が大きく拡大。そもそも深夜にそんなテレビを見ている人は生活が不摂生なもの。生活が不摂生な人は太りやすい。そんなことを踏まえてか、テレビショッピングでは様々な減量器具が紹介され人気を博した。皆さんの家の押し入れや物置にはいくつあるだろうか。まずはサウナスーツ、着用することで発汗を促し自然に痩せられるというスグレモノ。だが洗うのが大変そうだし夏場なんかは汗疹に悩まされそう。お次はロデオマシン。三角木馬のような形状だが、台座が三角ではないので座っても痛くない。スイッチをいれると上に下に右に左に前に後ろに動くわ動くわ。こうしてカウボーイのロデオの動きを体験することで腹筋を鍛え痩せようと。これはむしろダイエット目的より純粋にバランス感覚を楽しんだほうが正解なのかも。続いてバランスボール。巨大なゴムマリのようなボールに身を任せゆらゆらと。体幹を鍛え骨盤の歪みを矯正するとか。難点は場所が必要なことと退屈なことか。ゆらゆらと言えば金魚運動マシーンというのもあった。なんてったって楽ちん。寝っ転がってマシンに足を乗っけとけば勝手にゆらゆら。骨盤矯正に関しては骨盤枕なんてのもありました。

 主婦による正規の大発明と言われたのが初恋ダイエットスリッパ。かかとを乗せる部分が無い。これによって常に背伸びをするような姿勢を維持できるとか。まあ続くのならいいのかも。ネーミングだけなら平成初頭に流行ったトカちゃんクニちゃんベルトなんてのもすごかった。

 平成七年、エクセサイズ系の器具とは発想を異にしたダイエット商品がヒット。その名もズバリ痩せる石鹸。石鹸自体は使えば使うほど痩せていくのだからまあ嘘ではない。

 これまでよりちょっと自主性と効果がありそうな商品が平成九年に登場したデジタル小型万歩計。なんてったって歩くことは体に良い。面倒ではあるけれどしんどくはない。この面倒であることを乗り越えるために励みになるものをと工夫されたのが歩数に応じて成長しイベントが発生する擬似ペット。この少し前には「たまごっち」が大ブレイクし育てゲーが大ブームになっている。この影響で「ポケットピカチュウ」や「てくてくエンジェル」が売れに売れた。

 スカイTVとパーフェクTVとディレクTVが一緒になってスカパーが生まれると、ワールドカップ効果もあってCSの普及率が一気に高まる。地上波にプラスしてそんなCSのCMでも頻繁に放送され話題になったのが「アブフレックス」や「アブトロニクス」。今度のターゲットは腹筋。ベルトでお腹に縛り付けスイッチオン。するとブルブルブルブル。ううむ、あえてカテゴライズするなら金魚運動系列か。

次のページだんだんガチ寄りになってきた

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後藤 武士

ごとう たけし

平成研究家、エッセイスト。1967年岐阜県生まれ。135万部突破のロングセラー『読むだけですっきりわかる日本史』(宝島社文庫)ほか、教養・教育に関する著書多数。


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