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「100万円の布団押し売り」よりひどいぼくの「学費詐欺」

【隔週木曜日更新】連載「母への詫び状」第二十八回

■もっとひどい詐欺とは?

 親不孝息子の学費である。

 ぼくは東京の私立大学に入学させてもらったが、卒業はしていない。まともに大学に通ったのは1年ちょっと。あとはドロップアウトして中退してしまった。正確には「抹籍」扱いと思われ、何年間、大学に籍があったのかも知らない。
 ひどい詐欺である。

 私立大学の入学金や学費がどのくらい掛かるのか、ざっと計算してみれば、授業料を年間120万円とすると、4年間で500万円近く。その前の高校や義務教育の時代も入れたら、金額はもっと膨らむ。「ポーランド産の95%ダウン高級羽毛布団」を親戚じゅうに配っても、余るくらいのお金だ。 

 なのにバカ息子は大学に通わず、それでいて親に申し訳ないとか、もったいないとか、罪の意識さえ持たなかった。羽毛布団を100万円で売りつけた業者を攻撃する資格など、おまえにはない。大量の羽毛布団を燃やして灰にしたようなもので、羽毛をくれたガチョウにも申し訳ない。いや、そこはガチョウじゃなくて、親に謝るところだ。

 おとうちゃん、おかあちゃん。学費を無駄にしてごめんなさい。

 一式50万円の羽毛布団、父の分は当分、ぼくが使うことにします。使い込んで半分くたびれているけど、毎晩この布団に潜り込むたびに、我が身を反省する気持ちが少しは芽生えるから。

※本連載は隔週木曜日「夕暮時」に更新します。本連載に関するご意見・ご要望は「besttimes■bestsellers.co.jp」までお送りください(■を@に変えてください)。連載第1~10回はnoteで公開中!

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夕暮 二郎

ゆうぐれ じろう

昭和37年生まれ。花火で有名な新潟県長岡市に育つ。フリーの編集者兼ライターとして活動し、両親の病気を受けて帰郷。6年間の介護生活を経験する。



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