■日本語が生み出す階層制度

 戦前の日本社会を文化人類学の手法によって分析したルース・ベネディクト(1887~1948)の『菊と刀』(1946)では、日本社会は階級を重視する階層社会であり、日本人にとって階層制度を認める行動は呼吸をすることと同じくらい自然なことだと指摘されている。

 たしかに、戦前には明治維新以前の封建的な社会制度の名残があったし、家父長的、男尊女卑的な慣習が根強く残っていた。だが、戦後70年以上が過ぎた現代の感覚からすると、階層制度のことなど大昔の話であるように感じられる。ところが、『菊と刀』を読むと、日本における階層制度は現代も消えることなく存在していることに気付かされる。

 同書の中では、江戸時代以前の階級制度や戦前社会の家族制度、社会制度、道徳観などの分析が行われているが、その大半は現存するものではない。しかし、ある一点の階層制度は現在も消えることなく維持されていることがわかる。

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