■「もてた」「ふられた」

 これを、客の側からは、遊女が来た場合「もてた」といい、けっきょく遊女が来なかった場合「ふられた」といった。

 図1は、遊女を待ちわびている男。

 図2は、待ちくたびれた男が、

「さもさも、待ち遠なものじゃ。ちと畳算でもしてみようか」

 と、つぶやいている。

 畳算は、占いの一種。

 ふられた男を滑稽に描いた古典落語『五人まわし』などの影響もあって、廻しを面白おかしく解釈する向きもある。「もてない男は、どこに行ってももてないんだよ」と、笑ってしまうと言おうか。

写真を拡大 図1『穴可至子』(富久亭三笑著、享和2年)
写真を拡大 図2『いろは短歌二ツ巴』(志満山人著、文政7年)

 江戸の人々も図1と図2に描かれた「もてない」男を見て、ニヤニヤしていたはずである。

 しかし、廻しを現代のサービス業に置き換えて考えてみよう。

 たとえば、あなたが10時から12時まで、スポーツ○○の個人レッスンを申し込んだとしよう。ところが、○○の教師は同じ時間帯に5人の客を受け入れていた。

 教師は最初、あなたのところに来て20分くらい教えたが、すぐにほかの客のもとに行ってしいまい、いっこうに戻ってこない。そのまま12時になって終了だが、規定の金額は支払わなければならない。

 あなたの場合、20分は教えてもらったが、教師は美人の客のもとに1時間以上付いていて、ほかの客はせいぜい20分だった。気の毒なのは、最初に教師から挨拶を受けただけで、けっきょく何も教えてもらえなかった客もいたことだ。にもかかわらず、規定の金額を払わされる。

 あなたはもちろんのこと、とくに何も教えてもらえなかった客は激怒するであろう。激怒して当然である。

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