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吉原で常態化していた、遊女へのパワハラがむごい

吉原の舞台裏を覗く 第22回

江戸時代に遊郭が設置され繁栄した吉原。その舞台裏を覗きつつ、遊女の実像や当時の大衆文化に迫る連載。

■遊女の法要。背景にあった残忍さ

 文化七年(1810)十月末、浅草の慶印寺で、死亡した妓楼「中万字屋」の遊女の法要がおこなわれた。

 吉原では年季中の遊女が死亡した場合、死体は菰で包まれて三ノ輪の浄閑寺に運ばれる。そして、浄閑寺の墓地に掘られた穴に投げ込まれて終わりだった。このため、浄閑寺は投込寺といわれた。

 中万字屋の遊女は異例だったが、これにはわけがあった。

 この遊女は病気で体調が悪いと言い、客を取らずに引き込もっていた。

 楼主の女房が怒り、
「仮病を使い、怠けるんじゃないよ」
 と、きびしく折檻した。

 その後、薄暗い行灯部屋に放り込んで、ろくに食事もあたえなかった。

 空腹に耐えかねた遊女はこっそり客の食べ残しを集め、小鍋で煮て食べようとした。

 これを見た女房は激怒し、遊女を柱に縛りつけ、小鍋を首からつるした。

 ほかの遊女や奉公人への見せしめとしたのである。

 衰弱と飢えで、遊女は柱に縛られたまま死んだ。

 死体は浄閑寺に運ばれ、墓地の穴に投げ込まれた。

 その後、中万字屋に、首に小鍋をさげた遊女の幽霊が出るという噂がひろまった。そんな噂があれば客足が遠のき、妓楼にとって大打撃である。

 そこで、中万字屋はあわてて、死んだ遊女の法要をおこなったのだ。

 
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永井 義男

ながい よしお

小説家、江戸文化評論家。1997年『算学奇人伝』で開高健賞受賞。時代小説のほか、江戸文化に関する評論も数多い。著書に『江戸の糞尿学』(作品社)、図説吉原事典(朝日新聞出版)、江戸の性語辞典(朝日新聞出版)など。


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