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ため息が出るほどの美しさ…夢の国のパレード「花魁道中」

吉原の舞台裏を覗く 第20回

■牟田文之助が見た花魁道中

 牟田文之助はいわゆる「硬派」だったが、そんな彼も吉原見物をしたがった。

 江戸滞在中の安政元年(1854)三月三日、別な佐賀藩士に案内されて、文之助は吉原に出かけ、花魁道中を見物した。

『諸国廻歴日録』には花魁道中の様子が興奮した筆致で描写されているが、文之助は文人ではないため、文章は当て字や誤字が多く、奇妙な漢文表記もあるため、次に分かりやすく現代語訳した。

 花魁道中は華麗な行列だった。花魁は禿ふたりのほか、多数の下級遊女を引き連れていた。若い者が長柄の傘を高々とかかげて従っていた。花魁は三本歯の黒塗りの高い下駄をはき、ゆるやかに進む。髪には前後左右に髪飾りを挿し、その衣装は豪華絢爛。まさに天女のようだった。

 文之助が花魁道中に感激していたのがわかろう。それにしても、その描写は図1や図2とほぼ同じである。文之助がいかに熱心に観察していたかもわかる。

 なお、吉原では三月一日に植木屋が根付きの桜の木を多数持ち込み、仲の町に植えた。三月末までには、桜の木はすべて運び出す。

 つまり、吉原では三月、仲の町に桜が咲いていたのである。

 桜の下を進む花魁道中はもっともはなやかとされた。とくに、雪洞の明かりに照らされた夜桜の下を進む花魁道中は、ため息が出るほどの美しさと言われた。

 文之助が吉原を訪れたのは三月三日だから、まさに桜の下を行く花魁道中をながめたことになろう。ただし、昼間だった。

 図3は、桜が満開の仲の町を行く花魁道中である。

写真を拡大 図3①『古代江戸絵集』/国立国会図書館蔵

写真を拡大 図3②『古代江戸絵集』/国立国会図書館蔵

写真を拡大 図3③『古代江戸絵集』/国立国会図書館蔵

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永井 義男

ながい よしお

小説家、江戸文化評論家。1997年『算学奇人伝』で開高健賞受賞。時代小説のほか、江戸文化に関する評論も数多い。著書に『江戸の糞尿学』(作品社)、図説吉原事典(朝日新聞出版)、江戸の性語辞典(朝日新聞出版)など。


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