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入るのは自由でも…吉原から逃げられない遊女たちの悲惨

吉原の舞台裏を覗く 第16回

 遊女の暮らしがもういやになった、客の男を好きになり、一緒になりたいが、年季明けまで待ちきれない、などなどの理由から、逃亡を図る遊女はあとを絶たなかった。

写真を拡大 図1『帯屋於蝶三世談』(林家正蔵著、文政8年)/国立国会図書館蔵

 図1は、梯子などをかけて板塀を乗り越え、板を敷いて御歯黒どぶを渡り、あとは駕籠に乗ってすみやかに逃亡しようとしている。

 周到な計画と準備がうかがえる。

 しかし、逃亡はほとんど失敗したと見られている。

 遊女がひとりで脱出するのは無理なので、どうしても手助けをする男が必要になった。図1でも、男がふたりがかりで遊女の体を受け止めている。

 となると、遊女の馴染み客がかかわっているに違いない。

 日ごろから遊女と客の動きを監視している遣手は、

「○○さんが怪しいよ」

 と、ピンとくる。

 妓楼はすぐに追っ手を派遣する。馴染み客さえわかれば、だいたいふたりの行先は見当がつくからだ。

 その結果が、図2である。男も女も、あえなく追っ手に捕らえられてしまった。 

写真を拡大 図2『風俗金魚伝』(曲亭馬琴著、文政12年)/国立国会図書館 

 逃亡しようとした遊女への折檻は苛烈だった。

 ただし、妓楼にとって遊女は大事な商品だけに、折檻はしても決して殺しはしないし、大きなけがもさせない。だが、とことん責めさいなんだ。

 折檻については、稿を改めて述べよう。

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永井 義男

ながい よしお

小説家、江戸文化評論家。1997年『算学奇人伝』で開高健賞受賞。時代小説のほか、江戸文化に関する評論も数多い。著書に『江戸の糞尿学』(作品社)、図説吉原事典(朝日新聞出版)、江戸の性語辞典(朝日新聞出版)など。


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