平地なのになぜスイッチバック?聖地鉄道“謎解き”の旅 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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平地なのになぜスイッチバック?聖地鉄道“謎解き”の旅

鉄分多めの寺社めぐり 「聖地鉄道」の旅②

 

|JR桜井線はなぜ直角に曲がるのか?

 最後に謎そのものはささやかだが、飛鳥・奈良時代の息吹が感じられる古社寺めぐりができるJR桜井線(万葉まほろば線)を紹介したい。なお、この路線と沿線の社寺については、拙著新刊『聖地鉄道めぐり』(G.B.刊)も併せて読んでいただけるとありがたい。
 さて、桜井線の謎だが、これは桜井線が走る奈良県中部の地図を見るとすぐにわかる。奈良駅からほぼまっすぐに南下してきた桜井線は、桜井駅の手前で90度向きを変え、真西に向かうのである。車体が長く、複数の車両を連結して走る鉄道は、できるだけカーブをゆるくするものなのにどうしたことだろうか?

万葉まほろば線の愛称で知られるJR桜井線

 その理由は桜井線の成り立ちと関係がある。桜井線の桜井駅から西に行く部分が大阪鉄道、北に行く部分が奈良鉄道によって造られたもので、もともとは別会社の路線だったのである。これを接続して乗り入れできるようにしたため、直角に曲がることになったのだ。
 謎は期待はずれだったかもしれないが、桜井線沿線の聖地(寺社や遺跡など)は見応え十分だ。とくに旧奈良鉄道の部分がおすすめ。この部分は日本最古の道ともいわれる山辺の道に沿っているので由緒ある寺社が多い。

日本最古の道ともいわれる山辺の道

 奈良から南下していくと、2駅目の帯解(おびとけ)駅の駅前に帯解寺がある。帯解といっても色っぽい意味ではなく、腹帯がとれるということで安産・子育ての御利益を示している。帯解寺の地蔵菩薩には文徳天皇の皇后も祈願をして、無事男子(清和天皇)を出産したと伝えられている。

帯解寺

 4駅目の天理駅からは、日本最古の神社の一つとされる石上神宮に行ける。地上を平定した霊剣を祀っており、この境内の裏から山辺の道にも入れる。

石上神宮

 桜井駅の一つ手前の三輪駅は、『古事記』『日本書紀』にその神話が語られる大神神社の門前にある。健脚であれば、石上神宮から山辺の道を通って大神神社まで歩くのも楽しい。

大神神社

 なお、桜井線は難読駅名が多いことでも知られる。
京終・櫟本・巻向・畝傍…さて、みなさん、いくつ読めただろうか?

次回は「分断された参道」をお届けする予定です。

 

 

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渋谷 申博

しぶや のぶひろ

日本宗教史研究家

1960年東京都生まれ。早稲田大学卒業。
神道・仏教など日本の宗教史に関わる執筆活動をするかたわら、全国の社寺・聖地・聖地鉄道などのフィールドワークを続けている。
著書は『聖地鉄道めぐり』、『秘境神社めぐり』、『歴史さんぽ 東京の神社・お寺めぐり』、『一生に一度は参拝したい全国の神社』、『全国 天皇家ゆかりの神社・お寺めぐり』(G.B.)、『神社に秘められた日本書紀の謎』(宝島社)、『諸国神社 一宮・二宮・三宮』(山川出版社)、『眠れなくなるほど面白い 図解 仏教』(日本文芸社)ほか多数。

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