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性的に早熟にならざるを得なかった「禿」の過酷

吉原の舞台裏を覗く 第12回

■「訓練」をほどこされていた

 さらに、具体的なことを記した文献はないが、妓楼は禿の段階から訓練をほどこしていたと思われる。

 訓練とは、陰部を名器にするための鍛錬や、入浴時の陰部の洗い方などである。

 手ほどきをしたのは、先輩格の遊女や、監督係の遣手であろう。

 禿は十四歳前後で、下級遊女である新造となったが、まだ客を取らない。妓楼は新造の初潮を待ったのである。

 さすがに初潮があるまで性交渉はさせなかったわけで、吉原の妓楼は最低限の人道は守っていたことになろうか。

 そのかわり、初潮があったと見るや、すぐに遊女デビューである。

 それに先立ち、水揚という儀式がある。水揚は、女の性の初体験である。

 ただし、吉原では楼主や、妓楼に奉公する男である若い者と遊女の性的関係は厳禁されていた。そこで、水揚は、妓楼の馴染み客のなかで女あつかいの上手な初老の男に依頼した。

 つまり、性のベテランに水揚を頼んだのである。

 

 水揚を頼まれた男にしてみれば、まさに男冥利に尽きる思いであったろう。

 いったん水揚をすませると、新造はどんどん客を取らされた。

 楼主としては、

「これまでさんざんただ飯を食わせてきたのだ。さあ、稼いでもらいまっせ」

 ということだろうか。

 新造として人気が出ると、昇進して花魁となった。幕下の力士が晴れて関取となるのと同じである。

 もちろん、幕下のままで終わる力士が多いのと同様、新造のままで終わる遊女も多かった。

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永井 義男

ながい よしお

小説家、江戸文化評論家。1997年『算学奇人伝』で開高健賞受賞。時代小説のほか、江戸文化に関する評論も数多い。著書に『江戸の糞尿学』(作品社)、図説吉原事典(朝日新聞出版)、江戸の性語辞典(朝日新聞出版)など。


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