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新幹線のぞみ殺傷と八王子書店通り魔の共通点

「通り魔」はどこからやって来るのか。〈価値観を揺さぶる1WEEK〉第6回

■「精神遅滞」がトリガーになることもある

--犯人はサイコパスだったのでしょうか。

岩波 精神鑑定のために入院しましたが、態度は穏やかで医療スタッフを困らせるような反抗的な態度は見られませんでした。自己のコントロールはできていて、「中野テレビ騒音殺人事件」の犯人に見られた統合失調症特有の暴力的な症状は見られませんでした。

--では、何がトリガーとなったのでしょう。

岩波 精神鑑定の結果、犯人が軽度から中程度の精神遅滞に相当していることが分かりました。IQ100を平均として53という数値が犯人のものです。

--IQが低いと犯罪に走りやすいのでしょうか。

岩波 もちろん、すべてはあてはまりません。ただ、精神遅滞においては善悪の判断ができなかったり、衝動性の制御が難しかったりする場合があり、加害者になることもまれではないのです。

--どうすれば犯罪を防げたと思いますか。

岩波 家庭において愛情を持って育てることが大切かと思います。中学の教師は知的障害に気づき、特別支援学校へ移ることを薦めましたが、両親が拒否しました。これでは、障害の程度によって受けられる就労援助などの社会的なサポートの網からこぼれ落ちてしまいます。中学1年からてんかんの発作もあったのですが、精神科を受診させていません。つまり、両親の徹底した無関心、ネグレクトが原因のひとつになったことは確かですね。

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岩波 明

いわなみ あきら

1959(昭和34)年、神奈川県生まれ。東京大学医学部医学科卒。医学博士。精神保健指定医。都立松沢病院、東大病院などで精神科の臨床や精神鑑定にたずさわる。2012年より昭和大学医学部精神医学講座主任教授。昭和大学附属烏山病院院長。

近著に『殺人に至る「病」-精神科医の臨床報告-』(KKベストセラーズ)、『発達障害』(文藝春秋)などがある。

 


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