『a=b cos θ』を使いこなす。伊能忠敬は数学的センスに満ち溢れていた! |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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『a=b cos θ』を使いこなす。伊能忠敬は数学的センスに満ち溢れていた!

〝伊能図〞の 測量法を完全解説!

■杭間の直線距離を測り真北からの角度で線を描いた

 では、どんな方法で測量を進めていたのかを具体的に見ていこう。

「基本的な距離と方位を測るのは、導線法です。これは従来から行われていたもので、村内の道路や田畑、住宅地を測るのと同じ、簡単な方法です」と渡辺さん。

[HOW TO]①杖先方位盤の先にある曲がり角Bに梵天を立て、北からの右廻り方位aを測る。②Aに梵天を立てて高杖先方位盤でB→Aの南からの右廻り角度a'を測る。③鉄鎖や間縄などを使ってAとBの距離を計測する。④次の目標地点Cを定めて、①~③の手順を繰り返して行う。

 杭を打った2点間の距離を測るものだ。はじめは麻縄が使われたが、水分による収縮があるため誤差が出やすく、後に鉄鎖が考案されて、大いに使用された。

「鉄鎖は一尺の長さのものを60本つないで十間とました。それで梵天を付けた杭の直線距離を測り、この直線の真北からの右回りの角度を測定して記録していったのです。それが地図の基本的な線になったのです」。
 

側線と梵天
海岸線などは、波打ち際の30~40m内側に梵天を立てた。直線と直線を結んで、陸地の輪郭を測量して描いていった。

 よく、伊能隊は一定の歩幅で歩く〝歩測〞だけで測量したように言われるが、それは間違い。歩測を多用したのは、幕府の許可がなかなか下りず、準備時間が少なくなり、測量機材も減らされてしまった第一次蝦夷(えぞ)地測量のみ。その後は併用しながら、当時使われていた様々な機器を使い、合理的かつ機能的に測量を進めていったのだ。もっとも、GPSやレーザーで簡単に測定できる現代と比べれば、長く地道な作業だったのは言うまでもないが…。

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