『a=b cos θ』を使いこなす。伊能忠敬は数学的センスに満ち溢れていた! |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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『a=b cos θ』を使いこなす。伊能忠敬は数学的センスに満ち溢れていた!

〝伊能図〞の 測量法を完全解説!

■斜面の平面距離を測るために三角関数を使った

 平坦な場所であれば前ページの方法で簡単に距離が測れる。しかし傾斜地だと斜辺を測ることになるので、平面よりも距離が長くなってしまう。

[HOW TO]①勾配の下の地点に小象限儀を三脚と支持柱で垂直に立てる。②梵天持ちの目を狙って、小象限儀をのぞいて角度を読み取る。③この時の角度が傾斜地の勾配と同じで、梵天の地中への延長線が実際の距離。④実際の平面距離を「三角関数」を利用した対数表で割り出して記入する。

「はじめのうちは目測で距離を測って距離を減じていました。しかし、亨和2年(1802)の羽越測量からは、携帯用の小象限儀を用いて勾配を測り、割円(かつえん)八線対数表という、今で言う三角関数の対数表に当たる表を使って、平面距離に変換していたのです」。

 斜辺の勾配から、平面距離を求めるのだ。中学か高校の数学で習った『a=b cos θ』の公式である。対数表を使ったのは、掛け算を足し算に変換することで、算そろ盤ばんでの計算作業を簡単にするためだったと推測されるのだという。

「杖先小象限儀を使っても狙う目標の位置によって、角度は変わってしまいます。本来なら指標板を設けるべきなのですが、梵天持ちの目に合わせて傾斜角を測ったと言われます」。

 これも伊能らの工夫によって導き出された、正確さを極めるためのアイディアだったのだろう。しかし、そこに行き着くまでは、様々な試行錯誤があったろう。きっと大変な苦労だったはずだ。

〈雑誌『一個人』2018年6月号より構成〉

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