立川談志が弟子にしかけた激しい「無茶ぶり」、その真意 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

立川談志が弟子にしかけた激しい「無茶ぶり」、その真意

大事なことはすべて 立川談志に教わった第2回

   * * *

 入門した最初の頃は、兄弟子の「師匠への接し方」を学ぶ期間でした。サラリーマン時代とは違って、過酷な環境で金のない苦痛を、雲の上の存在の師匠と直に接するといううれしさと新鮮さとで緩和させることでバランスを取るような日々でした。

 ただ、偉大すぎる師匠です。彼我の差が歴然としすぎているゆえ、師匠から何か言われると、特に私の場合は極度の緊張、そして萎縮が走りました。極力「普通の55歳のおっさんだと思え」と自らに言い聞かせて振る舞うのですが、緊張の連続で、より師匠をイライラさせてしまうのです。

 まして「昨晩書斎の机に出しておいたメモを出せ」というような前座にもわかりやすい言い方は絶対にしません。

「おい、アレ、出せ!」

 そんな極端に簡略化した形で指示を出すのです。そのため話の前後が読めていないと、地獄が待っているのです。「アレ、出せ」と言われて、スコップやら殺虫剤を出し、何度、師匠を不快にさせたかわかりません。

次のページ「人から嫌われないための受け身」

KEYWORDS:

オススメ記事

立川 談慶

たてかわ だんけい

昭和40(1965)年長野県上田市(旧丸子町)出身。1988年慶応義塾大学経済学部を卒業後、㈱ワコールに入社。セールスマンとしての傍ら、福岡吉本一期生として活動。平成3(1991)年4月立川談志門下へ入門。前座名立川ワコール。平成12(2000)年12月、二つ目昇進、談志より「談慶」と命名。平成17(2005)年4月、真打ち昇進。平成22(2009)年から二年間、佐久市総合文化施設コスモホール館長に就任。平成25(2013)年、「大事なことはすべて立川談志(ししょう)に教わった」(KKベストセラーズ)出版、以来、「落語力」「いつも同じお題なのになぜ落語家の話は面白いのか」「めんどうくさい人の接し方、かわし方」「落語家直伝うまい!授業のつくり方」「なぜ与太郎は頭のいい人よりうまくいくのか」「人生を味わう古典落語の名文句」など「落語とビジネス」にちなんだ書籍の執筆。NHK総合「民謡魂」BS日テレ「鉄道唱歌の旅」テレ朝系「Qさま!」CX系「アウトデラックス」「テレビ寺子屋」などテレビ出演も多数。現在、東京新聞月一エッセイ「笑う門には福来る」絶賛好評連載中


この著者の記事一覧