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【深刻な教員不足】文科省は子どもたちの「学ぶ権利」を守れるのか

第73回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

子どもたちの「学ぶ権利」を担保する教員の数が全国的に足りていない

 

■全国で顕在化する教員不足の実態

 4月6日、萩生田光一文科省は閣議後の記者会見で、教員不足の実態を把握するための全国的な調査を行う考えを明らかにした。歓迎すべき動きであることは言うまでもないが、これが初めての調査となる。つまり、これまで文科省としては、教員不足の実態について調査をしてこなかったのである。

 教員不足は、いまに始まったことではない。たとえば2019年4月23日の『朝日新聞』には「富山市、臨時講師27人不足 担任を発表できない学校も」という見出しの記事が掲載されている。富山市の小中学校で、育休や産休を取得した教員の代わりを務める臨時的任用講師(臨任講師)が不足していて担任の手当ができないというのだ。
 臨任講師は採用試験の不合格者や退職した教員、いわゆる正規教員ではなく、非正規の教員である。そういった教員に担任を任せることも問題と言わざるをえないのだが、正規教員だけでなく、非正規教員も不足していることがこの記事から分かる。

 今年3月には、高知県の安芸郡芸西村、土佐郡土佐町、幡多郡大月町の議会で、専門外指導の解消を高知県に求める意見書が可決されている。
 理科教員が技術を教え、音楽教員が美術を教えるという事態が専門外指導である。本来ならば、技術は技術の免許を持った教員が教えるべきである。それができないのは、教員が不足しているからに他ならない。
 その割合も深刻な数字だ。高知県だけでも公立中学校の7割、同じ四国地方の徳島県は82校中63校、香川県でも67校中12校で専門外指導が行われているという。

 しかも、これらは四国に限ったことではない。全国の中学校で起きていることである。専門外の授業を担当して教えなければならないのだから、十分な授業になっていないことも想像できる。専門外指導の授業を受けなければならない子どもたちにとって「学ぶ権利」が満たされているとは言い難いのではないだろうか。

 状況は高校でも同様である。今年3月24日付の『毎日新聞』には、「高校で必修の『情報』 正規の教員不足 地域格差も深刻」との記事が載せられている。
 2022年度の新入生から、プログラミングやデータ分析を学ぶ「情報」が必修となるが、47都道府県と相模原市を除く19政令市のうち73%に当たる48道府県・市で、正規の免許を持たない教員が授業を担当する公立高校があるという。科目は増えるのに、それを教える体制が追いついていないことになる。

 

次のページ必要なのは「調査」ではなく「対策」と「改善」

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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