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脳科学の分野から考える夫婦間コミュニケーション 男女の違いを受け入れることが鍵

京都大学 霊長類研究所の中村克樹先生インタビュー(前編)

◆昔から男女は役割分担をして上手に暮らしてきた

 男女は根本的に違うのだから、無理に同じことをしようとしなくていいのだとすれば、ちょっと気持ちがラクになる気がする。これは、何に関しても男女平等の一辺倒で進んで久しい現代社会において、薄々気がついていたとしても考えないようにフタをしてきたことのひとつかもしれない。
「太古の昔から男女の役割分担というのは必然的なことで、それが生きるか死ぬかの厳しい世界を生き抜く生活の知恵でもありました。子を産めるのも授乳できるのも女性だけなので、主に女性が子育てと家事をやっていたのです。その間男性は、家族の食料を得るために外に出て狩りをしていた。狩りを上手くやるためには、瞬発性も力も必要。無駄なおしゃべりをしていたら獲物に逃げられてしまうから、やっぱり寡黙になるしかない。狩りに成功すれば良質のタンパク質が採れる。獲物が捕れない時は女性が近場で木の実などを集めて食料にするというような分担で動いていたのでしょう。だから男性は狩りに必要な能力が長けた人が、女性は家事と子育てをうまくやりくりする能力に長けた人が、淘汰されて生き残ってきたのだろうと思います」

 そういう意味では、現代に多く見られる女性の役割をする男性や男性の役割をする女性というのは、役割分担がベースになっていた大昔の社会では生きづらかったのではないかと推測される。現代は役割分担も曖昧になり、マイノリティが淘汰されないから、あらゆるタイプの人が共存できているのかもしれない。
「今は男性も女性も同じようにパソコンを使って仕事をしています。そこのところで差はないですけれども、長年かけて培われ求められてきた男の脳、女の脳というのは、社会の変化のスピードと同時には変われないので、いろんな場面で噛み合わず、違和感を抱いている人も多いでしょう。一方で、女性に引っ張ってもらいたい男性っていますよね。女性が会社でバリバリ働いて戦闘モードでずっといると、ホルモンの状態も変化します。そういう男前な女性の姿に惚れる男性もいて当然です。そこは元来のものと逆のパターンでも、お互いの得意なことを生かした役割分担ができていれば、それでいいと思うのです」

 何に関心・注意を向けるかというところがそもそも男女で違うのだから、頓珍漢なことを言っているように聞こえても、相手にはそれなりの根拠があったりする。だから夫婦間コミュニケーションの基本は、男女の違いを理解してお互いが相手を受け入れ尊重することに尽きるわけだ。相手に自分と同じことを求めなくなれば、不要な期待をせずにすみ、お互いにラクになれそうだ。
「女性の気持ちはわかりますが、男の私からしたら、一般的に女性が男性に求めていることはやはり上級編なのです。お互いに得意なことを担当し、不得意はカバーし合う関係になれたらいいですよね。もちろん、話すことが苦手な男性側も、できるだけ頑張って話す努力をしたほうがいいでしょうけれど(笑)」

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