■ マンガと絵画では伝えられる情報量が違う

――キャラクターについてもお伺いしたいと思います。最初は冷めているキャラだった八虎が、絵にのめりこんでいくうち、かなりの頻度で涙をこぼすようになりますよね。

山口 ですね。2巻ではほぼ泣いてる(笑)。最初は斜に構えたヤツだったんで、それとは対照的に子供っぽさとか、感情的な部分を出すために泣きのシーンを多くしています。

――八虎を美術部に入るよう仕向けた女装男子のユカちゃんも印象的なキャラクターです。

写真を拡大 女装男子で人気者。ユカちゃんこと鮎川龍二。 ©山口つばさ/講談社

山口 八虎が好きなものを好きといえないキャラクターなので、反対のキャラクターを出したかったというのがあります。

――入学式に女装で現れたユカちゃんですが、特別扱いされたがっている訳ではなく、言いたいことはズバッと言い、周囲もそんなユカちゃんのことを受け入れていて。見ていて気持ちいいキャラクターですよね。

 

山口 狙いとしては変人キャラだけど、徐々にそうじゃない感じにもっていきたいと思っていて。次に発売の3巻ではその辺りが出てくるのでお楽しみに。

――天才タイプの世田介も印象に残りました。初めて描いた胸像のデッサンが死ぬほど上手くて、八虎に「無音の絶叫が俺の中に響いた」と言わしめる。ああいう天才って実際にいるものなんですか?

山口 デッサンがめちゃくちゃ上手い人ってたまにいるんですよ。あの絵を描いてくれたのは私の友達なんですが、高1のときのもので、デッサンも2枚目か3枚目という。凄いですよね。

――ひゃー! 大学は美術系の学校だったという話ですが、その頃描いていた絵とマンガはどういうところが違いますか?

山口 別物というか、そもそも伝えられる情報量が違うじゃないですか。それで、自分が言いたいことは絵画よりマンガという媒体の方があっているなと思ってマンガにいった、というのはあります。アートは社会への問題提起的なニュアンスが強いですが、マンガは読んで追体験するとか、もっと身近で愚痴っぽい話とかも伝えられるかなというのもありました。

――確かに“熱さ”を追体験している気がします!

(後編に続きます)

 

 

■著者プロフィール

山口つばさ

東京都出身。四季賞2014年夏のコンテスト佳作。現在、「アフタヌーン」にて『ブルーピリオド』連載中。その他の単行本に『彼女と彼女の猫』(原作:新海誠)