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育成から這い上がった楽天・八百板卓丸。「同じチーム」だった兄との葛藤と絆

聖光学院OBがプロで示す人間力

■プロでも続く兄との絆

八百板卓丸(やおいた・たくまる)。1997年1月17日生まれ。外野手。2014年に育成ドラフト1位で楽天に入団。2017年7月に支配下登録。右投左打。

「兄貴から手紙をもらうとか、初めてのことだったんで。普段はケンカばっかりしていたんですけど、兄貴が想っていたことがその手紙に書かれていて。読んだときはちょっと感動しましたし、嬉しかったですよね」

 この夏、聖光学院は、1971年の磐城以来、福島県勢では43年ぶりに甲子園で3勝を挙げ、ベスト8に進出。卓丸は1番打者として4試合で打率5割3分3厘のハイアベレージをマークし、プロへの扉をこじ開けた。

「まさか、自分がこうなるとは思いませんでしたよ」と卓丸は言う。プロでのキャリアのスタートは育成選手だったが、昨季途中に支配下選手を勝ち取り、そして今季、念願の一軍デビューを果たした。

 アピールの日は続く。「チャンスはもらえると思うんで。うん、やるしかないっす」と、卓丸は力強く宣言する。言葉通り、18日のソフトバンク戦では初スタメンを飾り、29日西武戦ではセンター前にプロ初ヒットを放った。
「まだまだこれからですので、気を引き締めて次も打ちたいです」

 そんな弟を、兄はいつも見守っている。

「楽天の試合はずっとチェックしていますからね。今度、卓丸に会ったら『しっかりしろよ! 頑張れよ!!』って伝えてください」

 そう頼まれた翌日、約束通り飛馬からの伝言を告げようとした。すると卓丸は、こちらの言葉を遮るように教えてくれた。

「昨日、兄貴に会ったんですよね? 電話かかってきました」

 伝えるまでもなかった。八百板兄弟の絆。その深さは、今も変わらない。

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田口 元義

たぐち げんき

1977年福島県生まれ。元高校球児(3年間補欠)。ライフスタイル誌の編集を経て2003年にフリーとなる。Numberほか雑誌を中心に活動。試合やインタビューを通じてアスリートの魂(ソウル)を感じられる瞬間がたまらない。現在は福島県・聖光学院野球部に注目、取材を続ける。


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