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ルパン三世の愛銃「ワルサーP38」は、連合国側の監視の目が緩かったからこそ生まれた

無敵ドイツ軍を支えた傑作小火器 ~ワルサーP38、シュマイザー短機関銃、モーゼル小銃etc.世界に誇るドイツの名銃に迫る~ 第1回

 さて、この9mmパラベラム弾、第一次大戦でのドイツ軍の主要拳銃ルガーP08に用いられて好評を博した。だがドイツは同大戦に敗れ、戦勝国が定めた懲罰的なヴェルサイユ条約で、軍備を厳しく制限されてしまった。その結果、軍用拳銃の新規開発すらも制限が課せられていたが、不屈のゲルマン魂は、未来の再軍備化に備えて、極秘で新型軍用拳銃の開発に着手。それを請け負ったのが、ドイツの主要銃器メーカーのひとつではあるが、第一次大戦中の軍用銃の生産にはほとんどかかわらなかったため、連合国側の監視の目が緩かったワルサー社であった。

 

 弾薬には第一次大戦で好評を得た9mmパラベラム弾を採用。当時の新技術のダブルアクション機構を組み込んで新型銃は完成した。ダブルアクションとは、薬室に弾薬を装填した状態で、安全装置を解除して指で撃鉄を起こして撃発状態にできることに加えて、引き金を強く引けば撃鉄が起きてからまた落ちて撃発できる機構のことで、各種の安全装置にプラスアルファで銃の安全な携行を可能とするものだった。
 この銃は、ワルサーHP(ヒーレス(陸軍の意)・ピストーレの略)と命名されて当初は輸出に回された。しかし1938年、同年の下二桁を付与したP38の制式番号でドイツ軍が採用。ワルサーP38の誕生である。約123万5000挺が第二次大戦中に生産されたが、軍用拳銃として優れていたため旧西ドイツの再軍備化に際し、部分改良を加えた型式の生産が1958年に再開。改めてP-1の制式番号で同連邦軍に制式採用され、さらに市販モデルや近代化改修型のP4も生産されている。

【要目】
使用弾薬:9mmパラベラム弾
全長:214mm 
銃身長:126mm
重量:945g
ライフリング:6条右回り 
装弾数:弾倉8発+薬室1発
撃発方式:ダブルアクション
作動方式:ショートリコイル・ブローバック

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白石 光

しらいし ひかる

戦史研究家。1969年、東京都生まれ。戦車、航空機、艦船などの兵器をはじめ、戦術、作戦に関する造詣も深い。主な著書に『図解マスター・戦車』(学研パブリック)、『真珠湾奇襲1941.12.8』(大日本絵画)など。


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