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「夫婦喧嘩の時がコミュニケーションのチャンス」と思ってはいけない

精神科医・水島広子先生に聞く、夫婦間のズレを解消するための効果的なコミュニケーション方法

育児を通した夫婦関係について、「夫」目線で考える本特集「『イクメン』って結局なに?」。最終章は「どうすれば夫婦はわかりあえるのか」と題し、様々な視点からその方法を考えてきた。最後に、一度悪くなった夫婦関係はどのように改善していけば良いのかについて、書籍『対人関係療法で改善する夫婦・パートナー関係』(創元社)の著者であり、多くの夫婦面接を経験されてきた精神神経科医師の水島広子先生にお話を伺った。

■第三者の力を借りて、久々の会話の突破口を開ける

 

 うまくいっていない夫婦の共通点はどんなところにあるのだろうか。水島先生は次のように話す。
「それは、圧倒的にコミュニケーションの量の少なさです。例えば10年前のどこかでズレた関係性がそのままになっていて、時間の経過とともにどんどん悪い方向にいってしまい、今更どうコミュニケーションを取っていいかわからない、というようなパターン。でも、夫婦のどちらかがその関係を大切に思って持続させようと意欲を持っている場合は、なかなか離婚には至りません。両方でどうでも良くなって放棄し始めると、一気にダメになりますが。だから、どちらか一方でも結婚の継続を望んで諦めないでもがいている限り、可能性はあるんです」

 しかし久しくまともな会話をしていない夫婦にとって、コミュニケーションのきっかけを作るのは至難の業。
「そういう夫婦は、今に至った原因は“相手が悪い”と思っていることが多いのです。いきなり“仲良くしましょう”と言われても、恨みがどこかに残っていたりする。そういう時は、みんなで遊びに行ったりすれば一対一の緊張感は簡単に通り過ぎることができます。沈黙型反抗期で私と全く口を聞かなかったうちの息子ですら、他の子と一緒だと場の雰囲気を壊さないために私とも普通に会話をしていました。そういう風に第三者の力を借りてコミュニケーションをはかるのもいい方法。子供を連れて旅行に行くとか、久々のコミュニケーションのきっかけには丁度いいんじゃないでしょうか。旅行は強制的に時間を共有しないといけないので、会話を再開するにはもってこいだと思います」

 うまくいかない夫婦の間には、コミュニケーションの量の少なさと同時に、質の問題も横たわっている。同じ空間で暮らし、最低限の会話があったとしても、お互いの思いを受け止めることができていなかったら、それは夫婦としてのコミュニケーションが取れているとは言えない。
「確かに、質の問題もすごく大きいです。女性の中には、ガチャガチャ音を立ててお皿を洗って“家事を代わってほしいんだけど”と、自分が怒っていることを知らせようとする人もいます。夫は残念ながらそれに気づくようなデリケートな感性の人ではなかったりして、妻のイライラはさらに大きくなる(笑)。たとえその行動で妻の気持ちに気づいたとしても、印象は良くないですよね。それよりは“この間一緒にお皿を洗ったのが楽しかったから、今日も一緒にやりたい”と、可愛げのある言葉や何かユーモアを含んだ言葉で伝えたほうが何倍もいいです。“この人はどうせ何もしてくれない”と自分で勝手に判断する前に、相手に言葉で伝えるという最低限の努力は必要だと思います」

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水島 広子

みずしま ひろこ

精神科医、対人関係療法専門クリニック院長。慶應義塾大学医学部卒業、同大学院修了。慶應義塾大学医学部精神神経科勤務を経て、二〇〇〇~〇五年衆議院議員を務め、児童虐待防止法の抜本的改正などに取り組む。著書に『トラウマの現実に向き合う』『女子の人間関係』など多数。


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  • 広子, 水島
  • 2011.12.22