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数字で見る、平成初期と末期の「恋愛観・結婚観」の違い

数字で見る!平成ニッポン。〈恋愛・結婚〉

(図1-3)年齢グループ別の恋愛経験者の割合(%) 出典:2015年社会階層とライフコース全国調査(対象者10,039人)

 とくに、「恋人が1人でもいたことのある人の割合」を求めてみた(図1-3)。恋愛結婚が主流の社会では、恋人が1度もできなければ、結婚という競争にエントリーすることすらできないのである。グラフから、男性は50代がピークで、40代、30代と若い世代になるにつれ、恋人がいたことのない人が増えている。女性はどうか。対照的に、若い世代ほど恋人がいることが分かるだろう。

 このように、平成を通して女性は恋愛に積極的になった、男性がその動きに応えていない。恋愛も結婚も、(通常は)男女の間で行われるため、このアンバランスさが未婚化を引き起こしてきたといえそうだ。「近頃の男性は草食化して、恋愛に消極的なのでは」と言われることがあるが、こうしてデータで裏付けられたようだ。
 ただし、すべての男性が草食的になったり、結婚しなくなったりしたわけではない。むしろ、恋人ができ結婚するグループと、恋人ができず結婚もできないグループに、二極化しているのかもしれない。私の研究でも、中学時代に恋人がいた人ほどその後恋人が多く、そして結婚しやすいことが、統計的に分かっている。いわば、早めに恋愛という列車に乗った人は、結婚という駅まで辿りつくが、乗り遅れると「結婚しない」という駅に向かってしまうといえる。

 

 平成を通して、日本社会はますます豊かになり、多様なライフスタイルが可能となった。その影で、「恋愛したいのにできない」「結婚したいのにできない」人が増えたのなら、かえってライフタイルにおける格差が拡がったのかもしれない 若い世代にインタビュー調査すると、「恋愛はたまにする贅沢」と言いながら、「結婚はぜったいにしたい」という人が多い。平成末期の現在、実はこれが簡単でないことを、データは示している。

雑誌『一個人』2018年5月号より構成〉

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小林 盾

こばやし じゅん

成蹊大学文学部教授

1968年東京生まれ。東京大学文学部を卒業後、東京大学教養学部などで教鞭をとる。専門は社会心理学、文化、家族。主著に『ライフスタイルの社会学:データからみる日本社会の多様な格差』(東京大学出版会刊)等。


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