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【一億総テレビマン時代到来!】あなたの動画を劇的に進化させる基本の「き」:五感を刺激《元テレ朝プロデューサー「動画制作プロの仕掛け」》


 この10年で誰もがSNSの道具を得て、「新聞記者」になり、この5年で誰もが「テレビマン」になり、あと1年で「ユーチューバー」の政権交代も起こりうるご時世。天下の大新聞、テレビと寡占事業の言論が、一人のカリスマ表現者に視聴者の「可処分時間」を奪い尽くされる下克上時代。
 そう一億総テレビマン時代到来! 今はもう、小学生でさえ動画を作って配信収入を得ることも珍しくありません。だからこそ、自分が作った動画の再生数を上げるには工夫が必要となり、根本的な企画・構成はもちろん、映像の撮り方や編集技術など、差別化ポイントは多岐にわたります。そこで、テレビ朝日のプロデューサーを経て、「ABEMA」の立ち上げや上智大学でのテレビ制作講師などを務める鎮目博道氏の著書『「動画制作」プロの仕掛け52』から「動画制作における差別化のポイント」を見ていきます。


◼︎人間は「音声」にとても敏感な生き物

 あなたが大好きな映画を思い出してみてください。真っ先に思い浮かぶのは何ですか? 人それぞれ、いろいろなものが頭に浮かんでくると思います。でも、結構多くの人が、その映画のテーマ曲や名ゼリフを思い浮かべているのではないでしょうか?

 大好きなワンシーンがもちろん思い浮かぶでしょう。でも、そのシーンが思い浮かぶ理由を少し考えてみてください。ひょっとして、印象に残る音がそこについていて、その音とともに浮かんできているのではないですか? たぶんそれが、自然なことなのです。

 あまり私は生物学的なことに詳しいわけではありませんが、人間は音声にとても敏感な生き物なのだと思います。きっと太古の昔から、生物として身を守るために聴力が発達してきたのではないでしょうか。おそらく聴力は視力よりも身を守るのに役立ったのでしょう。

 人間の眼は、顔の前面に2つついていますから、当然視界は限られています。前を見たままで真横のものは見えませんから、180度以下しかありません(どうやら両目で同時に見える範囲は120度と言われているようですね)。眼が顔の横についている動物よりもずいぶん視野は狭いようです。それに夜になって暗くなってしまえば、人間の眼はあまりよく見えないですもんね。

 だからきっと、危険をまず察知したのは「耳」だったんじゃないかな、と私は思うわけです。遠くから聞こえる動物の鳴き声や「ガサッ!」という物音で敵が近づいてきたことを知り、そして目を凝らす。「あ、ライオンだ!」とそんな感じで警戒態勢を整えていったのではないでしょうか。

 

 そして、同じように「鼻」もそうです。街角を歩いていると想像してみてください。「あれっ? 何か美味しそうな匂いがするぞ? この匂いは何の匂いだっけ?」とまず鼻が何かを感知して、それから私たちはキョロキョロと辺りを見回しますよね?

 

 そして気づきます。

「お! とんかつ屋さんかあ! 美味そうだなあ。食べて行こうかな」このように、視覚は、聴覚や嗅覚などのほかの感覚よりも少し反応が遅いような気がしてならないのです。

 いや、文系の私が勝手にそう思い込んでいるだけなので、正しいかどうかはわかりません。でも、何となくそんな感じで、きっちり耳を刺激してから目を刺激してあげないと「印象的な映像」にならないのではないかという気がします。

◼︎「視覚的要素」以外は忘れがち

 「動画」という名前や「動画を見る」などという言い方をするからか、私たちは動画を作る時に、視覚的要素以外のことを忘れがちです。でも実際は音声など、視覚的要素以外がかなり大切なのだということを常に頭に置いておかなければ、魅力的な動画作品は作ることができません。

 ここで、例として同じ動画から音声を抜いて無音にしたものと、音声つきのそのままのものをあげておきますので、2つの動画を見比べてみてください。同じシーンでも、音声があるのとないのではどれだけ魅力が違ってくるかがおわかりいただけると思います。

音声あり動画

●音声なし動画

◼︎映像で伝わらない“ニオイ”は音声で伝えろ

 上の項目で「視覚は、聴覚や嗅覚などのほかの感覚よりも少し反応が遅いような気が私はしてならない」と書きました。だからこそ「聴覚を意識して動画作品を作ろう」ということを書いているわけですが、では「嗅覚」はどのようにすれば良いでしょうか。

 多分、嗅覚は聴覚と並んで人間という生物にとって「身を守るため」の原始的に大切な感覚のひとつです。「変な臭い」は危険が身に迫りつつあることの重要なシグナルですし、「良い匂い」は何か好ましいものがそこにあると指し示す羅針盤です。となれば、その「原始的で大切な感覚」を刺激しないようなものは、あまり人間にとって魅力的なコンテンツとなりうるはずがない、と考えたほうが良いのではないでしょうか。

 私は著作で(『「動画制作」プロの仕掛け52』の「はじめに」)で、「実は動画は嗅覚や触覚や味覚も刺激しています。というか、刺激できるように動画を制作しないと、良い動画作品だとは言えないと思います。」と書いたのは、そういう理由からなのです。

 普通に考えれば映像ではニオイは伝わりません。ですが私たちは、動画作品で匂いを伝える工夫をいろいろとしなければならないのです。そのために大切な武器のひとつが「音声」なのです。

◼︎「嗅覚」を刺激するための工夫

 さて、先ほど「映像ではニオイは伝わらない」と書きましたが、実はそうでもありません。映像でもやり方によってはニオイはある程度伝わるのではないかと私は考えています。次にいくつか写真を並べました。それを見比べてもらえば、私の言いたいことがわかってもらえると思うので、まずはよくご覧になってください。

 ご覧のように、視覚で状況を判断するだけでも、我々の脳はある程度のニオイを感じることができます。過去に経験したニオイを映像からもある程度思い起こすことができるからです。しかし、実は映像だけではなくそこに「音声」が加わると、さらに一層ニオイがリアルに頭に浮かんできます。例えば上図の例で考えてみましょう。

 例えば下段【図1】の左側、焼き鳥の映像に「パチパチ」という炭の音や、脂が落ちた時の「ジュー」という音が入っていたら、かなりリアルに焼き鳥が焼ける香ばしい匂いがイメージできるのではないでしょうか?

【図1】

 

 下段【図2】のような花の映像に鳥のさえずる声や、葉っぱがカサカサと音を立てるような大草原を思わせる音声がついていたら、思わず深呼吸をしたくなるかもしれませんね。一方で右側の映像に、雨音に加えて足音や咳払い、車のクラクションなどの「街頭の雑音」が入っていたら、あの独特な「雨の街の臭い」がリアルに蘇りそうです。

【図2】

 

 さらに、こうしたSE(サウンド・エフェクト)に加えて、「雰囲気を盛り上げるBGM」を効果的に加えることによって、視聴者にニオイをさらに想起させることができます。どんなシーンにどんな音楽が合うのか、これはみなさんでいろいろと考えてみてください。

「映像で伝わらない“ニオイ”を音声で伝える方法」について、おわかりいただけたでしょうか?
 実はこれと全く同じ方法が、嗅覚だけではなくて、味覚についても使えます。「良い匂い」だけではなくて、「美味しそうな味」「気持ちいい食感」についても、映像に効果的な音声を加えることで伝わるのです。

「シズル」と業界でよく言われますが、あれは元々「ジュージューなどという美味しそうな音」のことです。それが転じて「美味しそうに見える表現」という意味で使われるようになりました。

 最近流行している「ASMR(Autonomous Sensory Meridian Response)」というのもまさにそれです。ASMRとは囁き声やパソコンのタイピング音など身体がゾクッとするような音のことです。

「心地良い音」は五感を刺激し、映像の表現をふくらませる強力な武器なのです。

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鎮目 博道

しずめ ひろみち

映像プロデューサー、ジャーナリスト、ライター。上智大学文学部新聞学科講師。92年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教関連の取材を手がけた後、「スーパーJチャンネル」「報道ステーション」などのニュース番組と、「スーパーモーニング」などのワイドショーのディレクターを経てプロデューサーに。他にもドキュメンタリー番組制作多数。中国・朝鮮半島取材やアメリカ同時多発テロなどを始め海外取材を多く手がける。また、ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」「Wの悲喜劇」「メシテロ」「蛭子能収の蛭子能収による蛭子能収のためのニュース」など、ニュース番組、トーク番組、グルメ番組、バラエティ番組などオールジャンルの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、放送番組・インターネット動画の制作のみならず、多メディアで活動。「Yahoo!ニュース」でメディアに関する記事を執筆するほか、「夕刊フジ」「東洋経済オンライン」でテレビについての連載を持ち、「週刊新潮」「プレジデントオンライン」「FRIDAYデジタル」などにも定期的に記事を執筆。PR・メディアコンサルタントとしても活動。放送局やPR会社などで講演多数。上智大学で講師としてテレビ制作に関する授業を担当。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルをライフワークとして研究、記事を執筆している。著作『「地域の人」になるための8つのゆるい方法 まちのメディアを使う・学ぶ』(共著、彩流社)。

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  • 鎮目 博道
  • 2021.01.29