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【配布率は約98%】新学期から本格化するICT端末利用が教育現場に与える影響

第71回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

GIGAスクール構想
通信環境や端末管理、そして具体的な活用法…様々な領域で万全とはいえない環境の中、端末の配布が進んだ

■年度内の端末配布完了見込みは約98%

 4月から学校では新学期がスタートする。そして、文科省の「GIGAスクール構想」も本格的に動き出すことになる。
 その核となる小中学校の生徒への「1人1台ICT端末配布」は、新型コロナウイルス感染症(新型コロナ)で前倒しとなって、2020年度(21年3月末)までに実現されることになった。新型コロナがなければ、文科省が予定していた2023年度まで実現しなかったかもしれない。もしかすると、23年度でも完全に普及しなかった可能性すらある。
 それだけに、20年度末までに1人1台端末が実現するかどうかに文科省も神経を尖らせているようだ。

 文科省は3月17日、「GIGAスクール構想の実現に向けたICT環境整備の進捗状況について(速報値)」を公表している。そこには、「全自治体等のうち 1,769自治体等(97.6 %) が令和2年度内に納品を完了する見込み」と記されている。令和2年度(20年度)内に97.6%の自治体で1人1台ICT端末の納品が完了してICT端末を使った授業の準備が整うというわけなのだが、2.4%は4月の新学期に間に合わないということでもある。未整備の自治体は、数にすると43自治体になる。

 3月23日の定例記者会見で、この未整備について訊かれた萩生田光一文科相は、「おおむね小学校・中学校において、本年度内での整備完了の目途がついたことは、学校設置者はもちろん民間企業も含め、関係者が一丸となって取り組んだご努力の結果と受け止めております」と前置きしながらも、次のように続けている。
「夏ぐらいからこういうことがあってはいけないなということで、かなりプッシュ型で色んなご提案をしてきたつもりでございます」

 今年3月末までに間に合わせるために、文科省としては各自治体の尻を叩いていたのだ。未整備の自治体について、文科省は自治体に任せておくつもりはないようだ。萩生田文科省は、こうも語っている。

「残る43自治体の整備完了に向けた支援が必要と考えており、文科省としては、43自治体の担当部署と個別に連絡をとって状況把握などを行うとともに、必要に応じて、学校ICT環境整備等に関する知見を持って助言等が行える『ICT活用教育アドバイザー』を派遣するなど取組を通じ、引き続き早期の整備完了に向けて支援を行ってまいります」

 自治体としても怠けていたわけではない。
 1人1台ICT端末が前倒しに、それも一気に実現することになったために、端末の供給そのものが大変な状況にあった。小中学校に在籍する児童・生徒数は約930万人で、1人1台ICT端末実現のために必要な端末は1,000万台にも達するといわれている。
 メーカーにしてみれば大変な需要であり、まさに特需である。嬉しいことには違いないだろうが、それほどの需要に応えるのは簡単なことではない。
 物を揃えればいいということでもない。機種の選定、どの業者から仕入れるのかなどなど、納品までには様々な問題をクリアしなければならない。

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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