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【校則だからOK?】学校の「常識」が世間の「非常識」になっていないか

第70回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

校則

■時代に合わない学校のルールがズレはじめている

「学校の常識は世間の非常識」ということを教員たちは考えたことがあるだろうか。
 神奈川県川崎市立の一部の小学校で、体操服の下に肌着を着用することが禁じられていたことがテレビで取り上げられ、ちょっとした騒ぎとなった。
 SNS上では非難のコメントが飛び交い、ワイドショーのコメンテーターたちは「とんでもない」と眉をしかめた。つまり、学校外の人たちにとっては、「体操服の下に肌着の着用は禁止」というのは非常識そのものだったのだ。しかし、それが学校では常識、つまり校則になっていたことになる。

 問題が発覚したのは3月9日の川崎市議会予算審査特別委員会で、山田瑛理議員(自民)が「気持ち悪い」「嫌だ」という児童の声を聞いたとして「体操服の下はすぐ肌ということ。そういう指導があるのか」とただしたことからだった。
 この質問に、川崎市教育委員会(市教委)は「一部の学校で、主に低学年の児童に対して肌着を着用しないよう指導している」と認めた。ただし、「市教委としての指導はしていない」と自らの責任を逃れることは忘れていない。
 市教委はその理由を、「運動後の汗で体を冷やさないなど健康・衛生管理面の配慮だった」と説明したそうだが、その説明に納得する声はまったくといっていほど聞こえてこない。

 小学生でも成長の早い子は、それなりの肌着を着用するのは「常識」の範疇であろう。その世間の常識とは真逆の校則をつくり、守らせてきたのが「学校の常識」というわけだ。
 この件について、SNS上では「生徒の胸のふくらみを教員は楽しんでいた」などの過剰なコメントもあったという。まるで、自分たちが楽しむために世間の非常識を教員が生徒に押し付けていたような表現のため、これに傷ついた教員も少なからずいたはずである。 しかし、肌着着用禁止という世間の非常識を受け入れ、生徒に指導していたのも教員である。

 下着に関する学校の非常識は、この川崎市の小学校以外にも存在する。
 昨年12月23日付の『読売新聞』は、福岡県弁護士会が福岡市立中学校全69校を調査した結果、生徒が着用する下着の色を指定していた学校が8割にのぼっていたことを報じている。あわせて、弁護士会は指導の実態も聞き取り調査をしている。
 それによれば、「違反した下着を学校で脱がせる」「廊下で一列に並ばされ、シャツの胸を開けて下着をチェックされる」「体育館で男子がいるのに下着の色をチェックされる」といった指導も行われていたという。

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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