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「が丘」「台」が付く新興住宅地は要注意 古地名が物語る災害の歴史

【地名の謎と歴史】あぶない古地名は先人からのメッセージ


地名には、先人からの知恵やメッセージが込められている。
何度も災害にあった土地の名にも、必ず手がかりが残るはずだ。
その真の意味を知れば、危険を回避できるかもしれない。
(一個人増刊『47都道府県 地名の謎と歴史』)


地図から消えた〝幻の暴れ川〟明治時代の地図には、目黒村の西から東へと蛇のように激しく流れる蛇崩川や蛇崩という字名が見られる。「荏原郡目黒村全図」明治44年

■いにしえより地名に思いを込め警鐘を鳴らしてきた

 災害大国といわれる日本で、最も頻繁に起きるのが水害。豪雨による川の氾濫など、昔から大規模な水害が全国各地で繰り返されてきたが、特に昨今は、地球温暖化による異常気象が問題視されるようになった。

「昔は数十年に一度だった水害が、今では毎年のように起きています」

 長年地名に関する研究を続けてきた楠原佑介さんによると、「繰り返される水害を防ぐべく、古より人は地名に思いを込め、警鐘を鳴らしてきた」という。にもかかわらず、「祖先からの『ここはあぶない』という貴重なメッセージである古い地名は、市町村合併や開発による地名変更でどんどん失われてしまいました」と、楠原さんは嘆く。著書『地名でわかる水害大国・日本』(祥伝社)の中でも、「過去に地表を襲った災害の痕跡は、地形に刻まれて残るし、その痕跡は地名として記録されている」と指摘する。

 平成30年(2018)7月の西日本豪雨で、大きな被害を受けた岡山県倉敷市真備町には、上二万、下二万という地名があるが、この「二万(にま)」とは「沼」に通じる。町内を流れる小田川の川岸にはかつて沼があり、幾つかの支流が瀬戸内海に流れ出ていたと考えられる。それが、明治44年(1911)に小田川を高梁川に直結する工事が施工され、沼や支流がなくなった。以後、真備町の各地区は、「小田川が本流である高梁川の流れに堰き止められて逆流するバックウォーター現象」にしばしば悩まされてきた。国土交通省は、改修計画を進めていたが、それが着工に至る前に大災害が発生してしまったのだ。

 昨年も、熊本県球磨川の氾濫という豪雨による被害があった。正しい地名復興運動の世話人としても活動してきた楠原さんは、かつての湿地帯が商・工業地帯や住宅地として転用され、無秩序に都市化が進んできたことが要因だと分析する。

「水田地帯を数十㎝ほどかさ上げし、◯◯が丘、◯◯台などと称して新興住宅地として売り出す例は多いのですが、古い地名を調べていくと、だいたい災害に関わっていたことがわかります。その結果、建てたばかりの家が水没してしまう例をたくさん見てきました」

 古地名には、過去の地形や水害、津波の痕跡を示す語が隠されている。

次のページ地名の意味を知ることで災害の予測につながる!?

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  • 2021.03.16