アニメの舞台だけが「聖地」ではない! 小説の「聖地巡礼」のすすめ |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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アニメの舞台だけが「聖地」ではない! 小説の「聖地巡礼」のすすめ

アニメだけではない! 日本各地に点在する「聖地」へGO!

夏目漱石の小説の舞台となった温泉地へ

 

 たとえば、夏目漱石の『坊っちゃん』の舞台は、愛媛県松山市。ここに登場する「住田の温泉」は、道後温泉本館がモデルだといわれている。東京から赴任した教師が「ほかの所は何を見ても東京の足元にも及およばないが温泉だけは立派なものだ」というほどの湯とは、どのような場所なのか。泳げるほどなのだから、かなり広いのだろう。学生時代に同作を読み、そんなことを考えた。
 大人になってから松山を訪れる機会があり、ふと『坊っちゃん』のことを思い出して道後温泉へも足を運んだ。実際に入ってみると、思ったよりもこぢんまりとしていた。そして、意外と深いことに驚いた。座ると顔まで湯につかってしまうし、だからといって、立っていればゆっくりできない。筆者の想像とは違う光景に、やや戸惑った。
 しかし、「行って損した」とは決して思わず、むしろ「行ってよかった」と感じたのである。イメージとは異なっていたけれど、自分の目で確かめることによって、「漱石と同じ湯につかった」という満足感を得られたからだ。漱石に対してはとくに強い思いはないが、やはり文豪と同じ体験をしているということがなぜかありがたく感じたのである。

 こうした体験を気軽にできるのが、文豪がよく利用したという宿や飲食店ではないだろうか。ここであの名作が生まれたのかと思いを馳せることで、その作品に対する愛着や見方が変わるかもしれない。
 雑誌『一個人』4月号の大特集「文士と画家が愛した宿」でも、名作が生まれた老舗宿や、文豪たちが愛した料理を紹介している。この企画を通して、旅先はもちろん、身近なところにも"聖地"がたくさんあることに気付いた。とくに東京は文豪が愛した料理店がたくさんあるので、気軽に聖地巡礼を楽しめそうだ。

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