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偉人「ピタゴラス」裏の顔がすごすぎる

天才の日常~ピタゴラス編

■転生を繰り返し、その記憶を保持し続ける能力?

 ピタゴラスの「奇跡」のエピソードは他にもいくつも残されている。
 同じ時刻に別々の街に姿を現した、川が「御機嫌ようピタゴラスさん」と大声で挨拶をした、劇場に集まった人々に対して黄金で出来ている足を見せびらかした、毒蛇に噛まれて逆に噛み殺した、熊を説得して他の動物を殺さないように言い聞かせた、未来予知をして数々の予言を言い当てた……。

 中でも有名なのは、前世の記憶を全て持って生まれ変わってきたというエピソードである。こんなふうである。
 ピタゴラスはかつてヘルメス神の息子として生まれ、生きている間も死んだ後も魂が全ての記憶を忘れることなく覚え続けることができるという特殊能力を授かった。様々な動物や植物に転生した後、何度か人間に生まれ変わったが、その度に前世の記憶を持ち続けていたという。ピタゴラスとして生まれる前には、漁師としての人生を生きていたそうだ。

 ある時には、街で犬が虐められているのを見て「やめてくれ、その犬はかつて私の親友だった者の生まれ変わりだ、犬の声を聞いてわかった」と泣き叫んだこともあった。

 数々の「奇跡」を人々に見せつけることで自らを神格化したピタゴラスだが、実際のところは、地下室のエピソードのように何らかのトリックを用いた詐術を行うことで人々の崇拝を集めていたのだろう。ただの目立ちたがり屋だったのか、よほど自己顕示欲が強かったのか、それとも本気で「奇跡」を起こそうとしていたのかはわからないが、いずれにしても、現代でも通用するほど先進的で合理的な幾何学の定理を発見したとされる人物とは思えないほどの奇行ぶりである(後篇「ピタゴラスが示したとんでもない戒律が自分の死を導いた」に続く)。

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大賀 祐樹

おおが ゆうき

1980年生まれ。博士(学術)。専門は思想史。

著書に『リチャード・ローティ 1931-2007 リベラル・アイロニストの思想』(藤原書店)、『希望の思想 プラグマティズム入門』 (筑摩選書) がある。


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