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北ミサイル。政府は“意図的に”脅威を煽っている

古賀茂明×望月衣塑子が「独裁者」を斬る!②

■アメリカは日本にトリガーを引かせようとしている

 北朝鮮から日本に向けたミサイルはずっと前から数百基設置されているといわれていて、ICBMが開発されても直接の脅威が増すわけではありません。また核弾頭がなくても日本の原発をミサイルで破壊すれば核爆弾と同じ効果が得られるので、核の脅威もずっと前から存在しているのです。

 

撮影/佐々木芳郎

古賀 異次元の脅威というのは、アメリカにとっての脅威です。

 これまでアメリカは、北朝鮮のミサイルは米本土まで届かないから自国がやられる心配はないとおもってきたが、今後は直接自分たちが核の脅威にさらされることになる。だから、アメリカにとっては異次元の脅威になるわけですよね。

 我々はいま、北朝鮮危機は、アメリカにとっての危機だということに気付かなければなりません。少なくとも北朝鮮には、日本を占領しようという意図はありません。なぜ、いま北朝鮮との関係で日本が危ないかといえば、アメリカが自国の脅威に対応するためにに北朝鮮を攻撃するかもしれない、そして、それに日本が協力すれば、北朝鮮の報復攻撃を受けるかもしれないという意味での危機なのです。ところが、日本人は錯覚に陥っています。いつも、何か北朝鮮が日本を攻めようとしている、というところから話が始まっています。だから、アメリカに守ってもらう必要がある。したがって、アメリカの言うことを聞かなければならない。そう考えているのではないでしょうか。この考えに支配されていると、日本は本当に危ないと思いますよ。 

 ちなみに、日本は、アメリカに見捨てられるかもしれないという意味での新たな脅威があるという見方があります。北朝鮮が日本を攻撃するときに、アメリカが日本を援けると、北朝鮮にはアメリカを攻撃する理由ができます。アメリカは自らへの攻撃を回避するために、「日本を見捨てる」という選択肢が出てきたという脅威です。しかし、これも、その始まりである「北朝鮮が、日本を攻撃してくる」という想定の段階で先ほど言った錯覚に支配されている考え方ですよね。

望月 昨年9月16日に北朝鮮が北海道の東側の太平洋に向け、ミサイルの発射を行ったとき、報道された政府発表が、「日本の領域を通過しました」という表現でした。「領域」というのは、領土、領海、領空のこと。つまりこの場合、領空を通過したという意味になります。しかし、弾道ミサイルが通過するのは大気圏外、宇宙空間で領空とは認められていないところなのです。

 このことは、一度、石破 茂氏が抗議して、自民党内の会議で政府は謝罪したことがあります。北朝鮮のミサイルは、たぶん、これまで一度も日本の領土、領海、領空には入っていないはずです。 

 そういうところに私は、政府が意図的に日本に対する脅威を煽っていると感じるのです。北朝鮮は日本を攻撃してくるぞという錯覚を与えているわけです。
 
 いま北朝鮮から見れば、彼らが本当に威嚇しているアメリカと日本は一体化しているように見えるでしょう。グアム周辺にミサイルを飛ばす計画を発表したときも、「山口、広島」などの地名が挙がっていました。これはつまり、日本は〝トランプのお尻をなめている〞と、そのぐらいに北朝鮮に見られているということなのです。
  
古賀 日本がミサイルを迎撃すれば、北朝鮮から見れば、日本が先に軍事行動を行った、つまり攻撃を加えたということになるわけですよ。北朝鮮が「これで戦争状態だ」と宣言をしたら、アメリカは、同盟国の日本がやられるから俺たちは守りに行くと、軍事行動の正当な理由を得ることができます。
もちろん、日本を守るための戦争だということになれば、「まずは自衛隊が最前線に立て」、「米軍の戦争費用はすべて日本が持て」ということになるわ
けです。本当はアメリカのための戦争なのに。
   
 2017年の秋、トランプ大統領が、北朝鮮のミサイルが日本上空を通過したのに日本が迎撃しなかったことに不満を漏らしたというニュースが流れました。「"サムライの国”なのに腰抜けだな」ということではないかと、面白おかしく取り上げる向きもありました。しかし私は、何とか日本に戦争の引き金を引かせて、北朝鮮と日本の間に戦争が起きたという形を作りたいという、トランプ大統領の願望が現れたものだと思いました。

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古賀 茂明(こが しげあき)

1980年東京大学法学部を卒業、通商産業省(現・経済産業省)に入省し、大臣官房会計課法令審査委員、経済産業政策局課長、中小企業庁経営支援部長などを歴任。2008年国家公務員制度改革推進本部事務局審議官に就任し、急進的な改革を次々と提議。2011年3月の東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故を受け、日本で初めて東京電力の破綻処理策を提起。その後、経産省から退職を勧告され辞職。著書に『日本中枢の狂謀』(講談社)『国家の共謀』(角川新書)他多数。



望月 衣塑子(もちづき いそこ)

慶應義塾大学法学部卒業、東京新聞に入社。2004年日本歯科医師連盟のヤミ献金疑惑をスクープし、自民党と医療業界の利権構造の闇を暴く。2009年足利事件の再審開始決定をスクープ。東京地裁・高裁担当、経済部記者などを経て、現在は社会部遊軍記者。防衛省の武器輸出政策、軍学共同などを取材。森友・ 加計疑惑で菅官房長官に斬り込み、これを契機に追及が加速し話題を集める。二児の母。趣味は子どもと遊ぶこと。著書に『武器輸出と日本企業』『新聞記者』(角川新書)など。


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